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073_気を感じ取る

ゴチンッ


「痛ってぇ・・・」

「こっちだ!」

俺は何かにぶつけた額を擦りながら、声のする方へ向かう。

そして、躓く。


ゴチンッ


「っ痛ぅーー」

「立てるか?」

「はい、何とか」

今、俺は目が見えない。

別にモンスターにやられたわけでも、ステータス異常という訳でもない。

師匠に目隠しをされているのだ。

気を理解するには見えないほうがいいのだと。

この日から俺はモンスターと戦う昼間は暗闇を常に見ている。


「何か来てます?」

「お、分かるか。何匹だと思う」

「3匹・・・ですか?」

「外れだ、4匹。ロックゴーレム2匹、ジャイアントタートル1匹、ハーピー1匹だ。お前さん、足音を聞いてちゃ駄目だ」

「すいません・・・」

敵が来る度に、師匠は敵の数を聞いてくる。


「キィーーーッ!」

「グオオオオッ!」

「オオオオオッ!」

目が見えずおろおろしている間に、師匠は敵を片付ける。

すると突然、背後から押される。


「ちょっと、頑張ってみろ」

「え?」

俺は押された衝撃で転んでしまった。

何が何だか分からない状況で俺は立ち上がろうとする。


ブンッ


何かが俺の頭を掠めるっ。

思わず目隠しを外そうと手をかける。


「京、駄目だっ!外すな!」

「そんな、俺の目の前に何かいるんですよ!」

「ああ、敵がいる。がんばって攻撃を避けてみろ」


くそーーー、何が剣の修行だ!根性鍛えてるの間違えじゃないのか!

俺は心の中で思い切り悪態をつく。


ブンッ


敵が何かを振り回す風圧を察知し、とっさに後方へと飛ぶ。


「京、音や風とかじゃない、相手そのものを感じるんだ」

「そんな事言ったって・・・」

振動だろうか、何かが俺に迫ってくるのが分かる。


ブンッ


避ける。


どこへ行った・・・、何も感じないぞ

敵を見失った、そんな感覚に陥る。


ブンッ


「うわっ」

背後から突然風圧を感じ、避ける。


「耳に頼るからだ!」

「分かってますよ!」

師匠の願いも虚しく、俺は敵の気を掴むことなくモンスターは師匠が退治してくれた。

こうした事が何度あっただろうか、俺はまだ上手く行かずにいた。


「そう落ち込むな」

「ですけど、、、何で分からないんだろう」

「まぁ、本来こういった修行は瞑想により感覚を掴んでから実戦に赴くんだが、お前さんなら実戦で感覚を掴むと思ったんだが」

「俺もそう思ったんですけどね」

俺は固有スキル【深理解】のおかげで物事を理解するはずなんだが、上手く感覚を覚えられずにいた。

その事に、少なからず焦ってしまう。


「何で実戦なのに、感覚を掴めないんだろう」

俺はため息をつきながら、愚痴をこぼす。


「もしかすると帝国での経験のせいかも知れないな」

「え?」

「いや、もしかするとの話だ。お前は帝国では常に緊張状態だったんじゃないか?」

「えぇ、まぁそうですね。暗殺者として動いていましたから昼間に冒険者やってる時も寝る時も、常に気を張っていましたね」

「もしそうなると、今の状況は俺がお前さんを助けてくれるっていう思いが、実戦での緊張を失わせてるのかも知れんなぁ」

確かに師匠の言うとおりだ。

俺は師匠と一緒にいることで安心感を覚えていた。


「確かにそうかも知れません・・・」

安心感が俺の固有スキル【深理解】の発動を阻害していたのかもしれない。

【深理解】によるスキルの習得は常に緊張感のある戦いの中でだった。



次の日になり、俺はいつも通り目隠しをする。

しかも耳栓付で。

何も見えない聞こえない状態ではかなり転んでしまう。

視覚と聴覚を失うだけでこんなにも足場が安定しないとは思わなかった。

師匠の姿はもちろん、声も聞こえない。

いつモンスターに会うかも分からない状況だ。

突然、後ろから肩を掴まれ、90度向き直させる。

崖でもあったのだろうか。

何度も転んだり壁にぶつかりながら進む。

すると今度は押される。

何かモンスターに出くわしたのだろう。

全身で敵を探る。

また押される。

どうやら敵の攻撃が来てたみたいだ。

俺はナイフを取り出し、前方へと構える。

何かが来るような気がした。

俺は半身になりナイフでそれを捌く。


ガキンッ


手応えがあった。

また来る、そう感じるとナイフを構える。


ガキンッ


僅かながら何かを感じる。

俺はいつ直撃を受けてもおかしくない中、何度もそれを捌き続ける。

すると今度は別の何かが来る。

これは分かりやすかった、今にも俺を殺したくてたまらないそんな気配だ。

これが殺気なのだろう。

俺が中々、殺られない事に腹を立てて掴もうとしたんだろう。

俺はそれを躱す。

なるほど、一回感覚を掴むとあとは簡単だった。

何回か敵を交わしていくうちに敵を感じる。

体躯は3m程だろうか、2足歩行で手に武器を持っている。

俺は敵の攻撃を交わし、ナイフで腹あたりを刺す。

気?が乱れているような感じがした。

同じことを繰り返し行う。

気づけば敵は倒れていた。

俺は倒れた敵に触れる。

敵を殺せば、気は消えるのかと思ったが違った。

今まで感じていたものは消え、別の感じがする。

それはこの世界に在る物だ。

石や土みたく無機物なもの。

こうして感覚を広げていくうちに俺の世界は広がっていく。

先ほどまで転んでいた石の気配にも気づき始める。


「おいっ!」

「え?」

突然、目隠しと耳栓を取られる。


「師匠、分かりました!」

「ああ、そうみたいだな」

目の前にはミノタウロスの死体が転がっている。


「明日から剣を持て」

「いいんですか?」

「ああ、土台は作られたからな」

師匠から剣を持つことの許しが出た。

明日からは本格的な剣の修業だ。

お読み頂き、ありがとうございます。

毎日22時に更新を予定しております。


感想・レビューお待ちしております。

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