067_怒りに塗れる第2勇者
「くそっ、くそがぁっ!!」
この世界に来てからというもの、無性にイライラする事が多い。
正義面した一歩の顔を見ていると、余計にイライラする。
いやイライラするのはあいつのせいだと、俺が思い込んでしまっているんだろう。
「討伐任務に当たらせてくれ!」
城での修行はもう飽きていた。
俺はこの世界に来たのだから、早くモンスターを討伐したかった。
一歩はすでに討伐任務に参加していた。
俺はまた一歩が先かという思いから、イライラしてしまう。
皆からは順番だからと、流されてしまう。
しかし結局、俺がモンスター討伐に当たれたのはかなり後の方だった。
「くそっ、俺は皆からも城からも当てにされてねぇのか!」
それに比べ、一歩は皆から信頼されている。
俺はその事に、また腹をたてる。
そんな時だった、夜寝ていると警鐘がなる。
「て、敵襲~~!!!」
兵士たちの慌てふためく声が聞こえる。
俺は一気に目が覚める。
「ははっ、こうでなくちゃな・・・!」
俺は待ち望んでいた。
このイライラを吹き飛ばせる程に、満足できる敵を。
兵士達からの報告では魔王軍が攻めてきているという事だ。
ついに魔王と戦えるという逸る気持ちを抑えながら防衛に当たる。
「早くっ!早く出てこいよ、魔王!!」
俺はモンスターを倒しながら吠える。
勇者である俺にとっては雑魚モンスターでは役不足だ。
魔族も出てきたが、苦戦する程ではなかった。
どこからか閃光弾が上がる。
その灯に照らされ、一人の男が俺らへと向かってくる。
『聞けぇーーー!我は第1魔王 間壱 壱成!人間共、我に跪け!』
ついに来た。
俺はこの時をどんなに待ち望んだ事か。
俺が魔王を殺し、勇者としてこの国も世界にも名を轟かせてやる。
だが。
「ちっくしょー・・・、体が動かねぇ・・!」
不思議な事に、魔王の声を聞いた瞬間から体に力が入らなくなる。
どういう事だ。
一歩から声をかけられるが、あいつだけは平気なようだった。
何で、あいつなんだ。
いつもあいつだけが選ばれる。
体に力は入らないが、心の奥底ではどす黒いものが渦巻いていく。
結局、俺は魔王相手に何の役にも立たなかった。
今回の襲撃で一歩は魔王を相手に負け、しかも五十嵐のおっさんまでも殺されてしまった。
魔王は強い、俺なんかよりも、一歩なんかよりも。
その事実がまた悔しくて俺はまたしてもどす黒いものを溜めてしまう。
「二神くん、最近調子悪そうだね?」
三上だ。
魔王襲撃のちょっと後から、やたらと俺に絡んでくるようになった。
「何の用だよ?」
「いや、最近思い詰めているようだったからね」
すると三上は手を伸ばしてくる。
「何をしやがる!」
「ごめんごめん、何か悪いものでもないか、【鑑定】しようと思ったんだよ。けど、、、なるほどなるほど」
三上は手を払いのけようと触れた瞬間に【鑑定】を発動していたようだ。
「一人で納得してんじゃねぇよ!」
「いや、悪いね。君のその渦巻く感情。それに従うといいと思う。うまく説明できないけど、君の力になると思うよ」
「くっ、、、いいか、二度と俺の許可無く、勝手に【鑑定】するんじゃねぇぞ!」
俺はその場を去り、日課の狩りに行く。
王たちがどこぞでの会議でいなくなってから、俺は勝手に城を抜け出し森で狩りをするようになった。
大臣では俺を止めることが出来なかったのか、特にお咎めをされることはない。
「この感情に従うだと・・・」
俺は一歩や魔王の事を思い出し、その黒い感情を広げる。
「くそっ、、、、イライラしすぎて変になりそうだ!」
俺はその感情に任せるのは辞めようと思った、その時だ。
最初は手が痺れている感覚に近かった。
「なんだ、こりゃっ・・・」
手が雷をまとっていた、それも黒い雷を。
「これがあいつの言っていた力か・・・!」
俺はその力を使いたくて、森で見つけるモンスターを片っ端から殺して回った。
「やぁ、二神くん。あれからどうだい?」
「てめぇに言われたのは癪だが、確かに新しい力を手に入れられた」
「それは良かったよ、僕も君に教えた甲斐があったって訳だね」
「ふんっ、てめぇのおかげって訳じゃねぇよ」
「うん、その力は君が努力して手に入れたものだ。けど、、、君のその努力は誰も見ていないと思うと悲しいよね」
俺は三上を睨みつける。
「そんなに怒らないでくれ。だから僕は君に手を貸そうと思ったんだ。みんな一歩くんの言うとおりに行動している。本来、僕らは別々の勇者なのに、彼だけはみんなからも城からも優遇される」
「そんなのは今に始まったことじゃねーだろ。だから俺に力を貸すっていうのか?」
「まぁ、君と僕の目的は一緒だと思うんだよね。君も僕ももっと自由に行動し、己の力で成長をしたいんだ。しかし、みんな彼が決めた行動の通りにしか動かない。そのせいで僕らは自由を遮られてるんじゃないかな」
「ああ、あいつがいなければ・・・俺はもっと活躍出来たんだ。なのに、あいつは正義面でみんなをまとめたがる」
「ふふふ、余程彼が気に入らないみたいだね。ところでこんな話を聞いたんだ・・・」
何でも王たちが今やってる会議では勇者を好きな国に行かせるとの事だった。
これであいつのいない国へ行ける。
「けど、それでは君の求める自由は手に入らないよ」
「何!?」
「他の国へ行っても、その国の王達は上手く君をコントロールしようとするだろうね」
「そんな事させる訳ないだろ!!」
「勇者なんて得体のしれない存在、国は僕らを都合の良いように利用する事しか考えないだろうね。現にに王国がいい例じゃないか。今回の会議でどうして、僕らは好きな国に行く事になったか分かるかい?それは王国が僕らを利用して他国へ行かせないように仕向けていた。結果、魔王の襲撃を受け五十嵐さんが死んでしまった。その事がバレ、王国は勇者を手放さなくちゃならなくなったんだ。」
「俺が利用されていた・・・!」
「君だけじゃなく、みんなだけどね。王国は制御しやすい一歩くんを筆頭に他の勇者を丸め込んでいた。思い当たる伏があると思うんだけど」
俺は拳を地面に叩きつける。
「くそっ!!」
「まぁ、でも事を荒立てるのは良くないよ?だって一歩くんはみんなを味方につけているんだ。例え二神くんが強くても他の勇者全員相手とはいかないだろう」
「あ、ああ、そうだな。一歩だけならまだしも・・・」
三上は話しながら笑い始める。
「てめぇ、何が可笑しいんだ!!」
「いや、、、やっと理解者がいてくれたなって。僕は一歩くんの言うとおりサポートに周り、彼の指示に従い【鑑定】したりといいように使われてたからね。二神くんが僕の理解者になってくれる事が嬉しかったんだよ」
「別にてめぇの仲間になった訳じゃない。だが、、、お前の話はそう信じる根拠がある」
「そうだね、仲間っていう程、互いの事を知らないからね。だから、そう、これは一時的な協力関係かな」
「協力か・・・、いいだろう。お前が俺を騙していない限りは手を貸してやる」
「じゃあ、協力者としてどうしたらいいか教えてあげるよ。君は帝国に行くべきだ」
「帝国?」
「ああ、力こそが全ての帝国だよ。君はそこで皇帝になるんだ!」
「俺が皇帝だと!巫山戯てるのか!?」
「皇帝になれば、君は国という成約から解き放たれる。決して夢物語でこんな事を言ってるんじゃないよ?君の固有スキルなら可能だ」
「俺の固有スキルだと?」
「ああ、【鑑定】してるからね、その力の使い方が僕には分かるんだよ。その力はね・・・」
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