066_ある日の第1勇者
部屋の中に朝日が差し込み、俺は目が覚める。
ベッドに潜ったまま大きく伸びをして、眠気を飛ばす。
そしてため息を一つ。
「はぁ」
ため息を着いた理由は一つ。
皆と上手くいっていないからだ。
鬱屈な気持ちになるが、それを吹き飛ばす為声を上げる。
「よし!」
顔を洗い、身支度をする。
服に袖を通す。
服の上から脱着式の鎧を装着する。
その上からマントを羽織、立てかけてある剣を背中に担ぐ。
そして城の外へと向かう。
「おはよう」
「おはようございます、勇者様!」
「今日も夜勤だったのかい?」
「はい、もうそろそろ交代の時間ですね。さすがにこの時間帯は眠気が来ますね。」
「お勤めご苦労様」
「いえ!勇者様はいつもの日課ですか?」
「ああ。交代の門番にもそう伝えてくれると助かるよ」
「分かりました!」
見張りの兵士は俺に敬礼をしてくれるのを見届けると城を抜け、森へ入っていく。
そして森の中でジョギングを開始する。
森など整えられていない地形でのジョギングは足腰を鍛えるのにちょうどいい。
またモンスターも出現するから、ちょうどいい運動にもなるし経験値も得られる。
見張りの兵士が言っていた日課とはこの事だ。
時間にして一時間くらいだろう。
先ほどの森の入口へ戻ってくる。
「さて戻るか」
交代した見張りの兵士に挨拶をして城へと戻る。
中庭で二神が拳の型の素振りをしている。
真剣にやっているその様子をみて、昔は空手でもやっていたのかと考える。
「二神、おはよう」
「・・・ああ」
これが二神なりの挨拶だ。
気にしない。
「三上、四恩さん、おはよう」
二人を見つけたので挨拶をする。
四恩さんは驚いた顔をするがすぐにいつもの顔に戻す。
「おはよう・・・、一歩くん」
「おはよ」
三上は含みを持たせたようなイントネーションで四恩さんは素っ気なく返してくれる。
挨拶を交わし、廊下をすれ違う。
その時に笑われたような気がするが気にしない。
「おはよーございます、一歩さん!」
「おはよう、一歩くん」
六花と七乃花ちゃんだ。
元気に挨拶され、嬉しくて笑顔が綻ぶ。
「おはよう、六花ちゃん・七乃花ちゃん」
「もう、七乃花ちゃんって、、、私そんなにお子様に見えますか?」
「ごめん、ついちゃんづけで言ったよ。そっちの方が似合うかなと思ってね」
「まぁ一歩さんがそう言うなら構いませんけど」
「二人はこれから朝食?」
「いえ、もう食べ終わったんですよ」
「そう・・・俺はこれから行く所だよ。じゃあ、また後でね」
二人と別れ、食堂に入る。
食堂には誰もいない。
一人きりの食事だ。
考えにふけりながら、食事を頬張る。
五十嵐さんが亡くなってから、徐々にみんなとの関係がギクシャクし始めた。
魔王襲撃。
僕はやれることをやったつもりだ。
だが、五十嵐さんを守ることは出来なかった。
僕は自分の未熟さを恥じた。
戦いの後、王や姫、他の勇者の前で己の弱さ、未熟さ、後悔を正直に話した。
その時は皆同じような想いだったのか、気持ちを分かち合えた気がしていた。
少なくとも僕がそう感じてただけなのかもしれない。
気付けば徐々に周りとの距離を感じていた。
いや始めからそうだったのかもしれない。
たまたま同じ転生者として、やってきただけで知り合いでもなければ友達でもない。
僕が勝手に親近感を感じてたのだ。
それを押し付けてたのかもしれないと反省をする。
「しかし・・・最近は」
距離感だけならまだしも、弱冠だが僕への悪意すらも感じている。
その正体が分からない。
魔王の罠なのかも知れないし、心の甘さがそうさせているのかも知れない。
王と姫が王国を出てからだろうか。
魔王襲撃を受け、世界の各国で話し合う会議がヴァナヘイム神国で開かれる事になった。
王と姫が今は不在で大臣が色々と執り行っている。
ある日、三上は大臣に何かを報告するとその日からよく城を空ける事が多くなった。
二神は忽然と消え、何日かすると戻ってくる。
二人にどうしたと聞いてもマトモに答えてはくれなかった。
四恩さんも、最近三上とよくいる。
それからだろうか、四恩さんの僕を見る目が変わってきた気がする。
「ああ、こちらにおられましたか勇者様」
「ええ、朝食を食べてまして」
「王が先ほど戻られました。大事な話があるとの事でお集まり頂けますか?」
「はい、分かりました」
食事を中断し、王のもとへ向かう。
王の横には見慣れぬローブを来た男がいた。
「初めまして、勇者殿。僕は賢者ナツです」
賢者様からの説明を聞いた。
先日の魔王襲撃を受け、勇者はもっと強くならねばならないと。
そしてどこの国でも受け入れ体制はあるから、好きな国を選択してくれと。
みんなそれぞれ悩み、行き先を選んでいた。
僕は聞かれる前から決まっていた。
「俺はアスガルド王国に残ります」
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土日は12時と22時に更新を予定しております。
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