062_騎士団の襲撃
「分かった、明日の夜明けに馬車を用意すればいいんだな?」
「ええ、お願いします」
俺はギルドでタスラさんに神国行きの馬車の手配を頼む。
ギーと作戦を練った結果、今日の夜に決行する事になった。
「今日でお前と会うのは最後になるかもしれない、リディアに挨拶をしていけ」
「いいんですか?もしかしたら今度こそ犯罪者になっちゃうかも知れないのに」
「犯罪者だろうとなかろうと、リディアはやらん!ただ、、、あいつはお前のこと気にかけてるからな」
「分かりました、ギルドを出る時に挨拶をして出ますよ。邪魔しないで下さい」
「・・・邪魔はせん」
「後ろから睨むのも禁止ですよ」
「善処する」
「ところで、俺の師匠の事なんですがもし行き違いになったら、神国へ向かったと伝えてもらっていいですか?」
「ああ、構わん。名前は何という?」
「ハルエルです」
「本当か!?」
「え、ええ・・・」
「お前がその弟子だというのか・・・」
「俺、師匠から師匠の正体を聞かされてないんですよ。一体何者なんです?Sランクの冒険者っていうのは知ってるんですけど」
「そうか、、、あいつは聖騎士だ」
「聖騎士?」
俺は聞き慣れない単語に反応する。
「ああ、神国には四聖と呼ばれる、四人の極めし物がいる。聖騎士・聖拳士・賢者・教皇。その一人がハルエルだ」
「そんな偉大な人物なんですか!タスラさんは会ったことあるんですか?」
「ああ、若い時に一度だけな。ラッセルと共に挑んだが返り討ちにあったよ。まぁそれが縁でラッセルとハルエルは友になったと聞いたが」
「なるほど、公国じゃハルエルさんの正体を知ってる人はいなかったから。あまり騒がれなかったんですが、帝国に入ってからは何度か師匠の名前を出すと驚く人がいて」
「公国の方でも四聖の話は有名だけどな、神国以外じゃ人前に出ないから誰が四聖かは分からないもんだ」
「なるほど」
「しかし、、、そうなるとお前の師匠は何故レイルーシアの元に行かせたのか。弟子ならば聖騎士候補かと思ったが、そんな外道に落とすのは考えられん」
「俺もあの人の考えは分かりません。ただこの世界の闇を知れっていうのは言ってましたけど」
「そうか、何か考えが会ったんだろうな」
「さて、そろそろ行きます」
「ああ、馬車の件は任せてくれ」
「ええ・・・お願いします」
帰りにリディアさんに挨拶をする。
明日で帝国を出る事を伝えたら寂しそうにして、手を握ってくれた。
やはり後ろからタスラさんは睨みつけていた。
俺は宿屋に戻り、荷支度をする。
宿屋の主人に別れの挨拶を告げ、集会所を目指す。
「何だ、焦げ臭いぞ」
焦げ臭い匂いが鼻孔を突く。
そしてスラムの方から人が何人か慌てて逃げてくる。
「おい、こっちは危ないぞ!」
「何があった?」
「火事だ!」
スラムの方へ駆けつけると火の手が見えた。
あちらこちらから火の手が上がっている。
「くそっ、一体何が起きたんだ!」
俺は焦るも集会所を目指し走る。
スラムから人々が逃げ惑う姿を目撃するが様子がおかしい。
「逃げろぉーー!」
「いやあーーー」
「辞めてくれ!」
物陰から逃げ惑う人が出てくると後を追うように帝国の兵士が出てくる。
そして追いつかれたその人は兵士によって殺される。
殺した人より先に逃げた人達を追いかけようとその場から去る。
「くそ!どういう事だ!?」
追いかけるべきか迷う。
だがレイラが心配になり、俺は集会所を目指す事を優先する。
集会所にたどり着き、扉を開ける。
そこにはレイラとギーはいなかった。
集会所は争った形式があり、壁には僅かながら血がこびり着いている。
「くそっ、どこに行ったんだよ・・・」
背後から気配を感じる。
「くっくっく、まだいたのか」
後ろを振り向くと兵士が立っていた。
兵士の姿を見ると、一介の兵士が着る鎧にしては分厚いプレートアーマーを装備している。
道中見かけた、虐殺をしている兵士も同じ格好をしていた。
「騎士団・・・なのか?」
「ああ、そうだ。俺は栄えある騎士団の一員さ」
「一体、これは何だ?」
「分かんねぇのか、お前ら暗殺ギルドに抹殺命令が下ったんだよ!城の兵士みたく一々探すのは面倒だからスラムを燃やし尽くせってな」
「正気か・・・?さすがにこれは貴族がやってるような人身売買に比べると露骨すぎるぞ」
「ははは、分かってないのはお前の方だよ!スラムなんかゴミの掃き溜めだ、そこを掃除してやってるんだから感謝するのが筋じゃないか」
「俺も外道に落ちたとは思ったが、、、お前らのほうがよほど外道で安心したよ」
「何を言ってやがる。まぁいい、ここにいるって事はお前も暗殺ギルドだろ?殺されたくなかったら大人しく捕まれ!」
騎士は剣を振り回すが、出鱈目な剣筋では俺に当たるはずもなく難なく躱す。
躱された剣はそのまま壁に当たる。
すると当たった壁はいとも簡単に崩れてしまう。
「・・・!なんて力だ!お前、、、本当にただの騎士か!?」
「ああ、そうだ。俺ら騎士団は生まれ変わったのさ」
よく見れば騎士の表情は何か様子が可笑しい。
それにあの物凄い力。
狭い建物だ、追いつめられたら終わる。
敵との間合いを図りながらゆっくりと移動する。
「レイラは・・・どこだ?それともう一人も」
「やっぱり暗殺ギルドじゃねえか。とっくに捕まえたよ。今頃団長に嬲られてるのかもな!」
騎士は下卑た笑いをする。
「くそっ、、、外道め」
俺は武器を取り出さず、素手で構える。
「お前、格闘家か?俺の剣を止められるのか?」
男はもう一度剣を振りかぶる。
力は強いが、、、動きは普通の剣士と変わらない。
充分に避けられる。
剣を躱し、魔力を溜めた拳でプレートアーマー事穿つ。
「がはぁっ」
厚みのある鎧には穴が空き、兵士にダメージを与える。
「何の影響かは分からないが、上がっているのは力のみだな。そんなんで俺を仕留められるか」
男はうずくまり、こちらを恨めしそうに睨む。
「団長はどこにいる?騎士舎か」
「さぁな、行ってみれば分かるぜ」
男からそれを聞く、顔面を蹴り上げ、卒倒させる。
隅に倒れている椅子を持ち上げ起こすと俺はその椅子に座る。
大きくため息を吐きながら、レイラをどう助けるか考える。
それよりも俺は溜まっていたフラストレーションを押さえられずにいた。
「ほんとに・・・帝国に来てからついていない!」
そして決意する。
「くそっ、こうなったら最後までとことんやってやるよ!!」
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騎士舎の見張りは普段は無駄口を話さないが、今日ばかりは異常な事態に口を開いてしまう。
「なぁ、、、あいつら、やばいよな?」
「ああ、、、けど滅多な事を言わないほうがいいぞ。あの力・・・人間技じゃない。絡まれたりでもしたらって思うと」
「そうだよな、、、しかし、陛下に忠誠を誓ったくらいであんな感じになるもんなのか。何ていうか、、、理性が少し抜けてるみたいな」
「魔族の呪い・・・。いや勇者がいるのにそんな事はないよな」
「でも暗殺ギルドを捕らえてから、何だか街の方が騒がしいのは俺の気のせいか?」
「いや、気のせいじゃない。けど持ち場を離れる訳にはいかないだろう」
見張りの騎士たちは尋常じゃない雰囲気の中、与えられた命令を続けるしかなかった。
その時、何かが飛来する音が聞こえた。
「ぐああっ」
また次々と何かが飛来してくる。
「痛ぇ」
「何だ!?」
「矢だ!狙われてるぞ!」
「賊だ!!」
騎士たちはぞろぞろと騎士舎の庭に集まる。
敵の姿は見えないが矢は飛来する。
何本かの矢が放たれた後、騎士の一人が口にする。
「あそこだ!」
矢を放った人物は騎士の騎士舎の正面からゆっくりと歩いてきていた。
「気配遮断スキルか!通りで見つからない訳だ!」
「もう見つけた以上、弓を使わせない!」
「騎士を舐めるな!」
騎士達の何人かが襲撃者の元へと駆けつける。
襲撃者は黒い頭巾を被り、手には剣とダガーを携えていた。
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