060_暗殺ギルド最終作戦
俺は勇者の件ではないかと、ビクビクしながらタスラさんに案内された部屋に入る。
「まぁ、座れ」
「あ、はい」
「すまないな、急に。ちょっと気になることがあって呼んだんだ」
「気になることですか?」
「ああ、個人的な事だ」
タスラさんは不器用にお茶の準備をする。
お茶が用意出来ると俺の前に置かれ、タスラさんも席に座る。
「さて、早速だが。レスカという言葉に心当たりはあるか?」
「レスカ、、、噂程度ですが、かつての騎士団を率いていた貴族だという位には」
「ああ、そうだ。それでは暗殺ギルドについては?」
タスラさんの質問は、勇者の件ではなかったが絶賛足を突っ込んでる暗殺ギルドについてだった。
俺は内心、冒険者でいる事も諦めなければならないかと考えていた。
「これも噂程度ですね。悪事を働く貴族を捌いていると・・・」
「ああ、そうだ。お前が耳にしてる噂とは本当の事だ。レスカ家の事も暗殺ギルドの事も」
タスラさんは遠い目をしながら話を続ける。
「ラッセル・・・。ラッセル・レスカは当時の騎士団団長で正義に厚い男だった。そして俺の友だった」
「タスラさんは、ラッセル・レスカをご存知だったんですね」
「ああ、小さい頃からの友だった。5年前だ、現皇帝ガルシアが即位する時の事だが、その時にクーデターが起こされ・・・」
まさしく、昨日聞いた話だ。
「ああ、箝口令が敷かれていてな。当時を知るものは皆口を噤んでいる」
「何故、それを俺に?」
「俺がラッセルを助けられなかったからだ・・・。俺はギルド長だ、そんな立場の人間が帝国の件には手を出すことは許されない。俺はそんな自分が悔しくてな」
「そう・・・ですよね。でも、それはしょうがない事じゃ?」
「ああ、そうだ。でも後悔をしている。お前が昨日連れてきた女性、あれは誰だ?」
「・・・・レイラです」
「レイラか。彼女を見て、思い出したんだよ。ラッセルが死ぬ時の事を」
俺は黙ってタスラさんを見るしかなかった。
「俺はお前がどんな人間で何をしてるのか分からん。だがレイルーシアの近くにいるなら、助けてやってくれ」
またか、、、、また助けてやれって。
「俺はそんな出来た人間じゃないですよ。タスラさんならどうするんですか?」
俺の質問にタスラさんは深く考える。
一息つき話す。
「分からん。俺はこのギルドを守らないといけないし、リディアも守らなきゃならない。その時にならない答えられないな」
「立場ですか・・・」
「ああ、理不尽なことを言ってるのは分かる。仮にお前がレイルーシアの側にいるというなら間違いなく危険な目、危険な事になってるだろう。けど俺にはどうすればいいか分からないとしか言えないのだからな」
俺はタスラさんが、あくまでも普通に悩んでいる事に共感する。
「なら、個人的には助けたいと?」
「ああ、いくらでも助力するさ」
俺は深く考えた後に、決心する。
「タスラさん、、、実は・・・」
俺は帝国に来てからの事を、タスラさんに話した。
ただ俺が憲兵を殺した事については伏せてしまった。
さすがに憲兵を殺した事で帝国の目が暗殺ギルドへ向いてしまった。
犯人探しをギルドに依頼しててもおかしくはないからだ。
「お前、そんな事に巻き込まれていたのか・・・」
「ええ、犯罪者とはいえ、俺は人を殺してきました。それも数多く」
「うぅむ」
「レイラはさらに手を血で染めています」
「・・・お前は帝国の、レイルーシアの事情を聞いて止めようと思ってるんだな?」
「ええ・・・、ですがレイラは辞めないでしょう」
「・・・そうか。ところで勇者がこの国に来たのは知ってるか?」
「はい、先ほどリディアさんに聞きました」
「なら話は早いな。勇者が来たことで帝国はいつもよりピリピリしている。スラム街での見回りを強化していると聞いた。分からんが勇者が来たことで暗殺ギルドは不要と思われ始めたんだろう」
「やはり、、、俺も先ほどスラムで憲兵を目撃しました」
「もし暗殺ギルドを公に犯罪者にしてしまえば、レイルーシアは二度と復讐を遂げる事も帝国で暮らす事も出来ないだろう」
「どちらにしろ、レイラはもう詰みです。どうするかは選ばせなければならないと思っています」
「ああ、、、そうだな」
「タスラさん、神国行きの馬車をお願いできますか?」
「レイルーシアを逃がすのか?」
「はい、、、ケジメを着けた後に」
暗殺ギルドの集会の日。
普段なら人気のないスラムだが憲兵が見回りをしている。
うまく見つからないように集会所へと向かう。
「ギー、一人か?」
「一人だ。レイラは・・・来ると思う」
「そうか、、、都合が良い。聞いてくれ」
俺はレイラに話そうと思ってた事をギーに伝える。
「本気か?」
「ああ、これでケジメとさせてもらう」
「しかし、それでお嬢様が納得するかは・・・」
集会所にレイラがやってきた。
「すまない、遅くなった」
「レイラ、話がある」
レイラは俺が声をかけるとビクッと肩が震える。
「なんだ?」
「この間も言ったが、暗殺ギルドはもう終わらなくてはならない」
「その話か・・・、私は復讐するまで辞めない!」
「憲兵の数を見たか?」
「・・・ああ」
「いつかは見つかる。それに何故憲兵が必死に俺らを探しているのかを知った」
「仲間を殺したからか?」
「違う、、、それは口実だ。ガルシアは、、、帝国は暗殺ギルドを必要としなくなったからだ」
「何だと!」
「知っているか、勇者が帝国に来たという話は?勇者はかなり強いと聞く、、、勇者を上手く懐柔できれば地道な国力増加などしなくても戦争を起こすには充分なんだろう」
「勇者などお伽話だ!私は・・・勇者が相手でも引けをとらない」
「俺に負けたのにか・・・。少なくとも事実はどうあれ、帝国はそう思っているという事だ」
「それでも!」
「レイラ、お前は復讐を遂げられればいいんだろ?」
「ああ、そうだ!」
「次のターゲットは決まってる。アディーラだ」
「・・・・」
「これで、、、暗殺ギルドは最後にしなければならない」
「しかし、、、ガルシアには!」
「いつか、、、チャンスをやる!俺が必ず機会を生む。だからレイラ、現騎士団長で最後にするんだ」
俺は腹をくくった。
これで最後にし、レイラを逃がす。
そして俺が勇者として名乗りを上げた際に、レイラにガルシアに会わせるチャンスを生むと。
「チャンス・・・?そんな事出来るわけは!」
「レイラ。いやレイルーシア・・・。俺に出来るのはここまでだ。もうこれ以上は信じてくれとしか言えない」
レイラは俺の目を見つめた後、集会所の扉に手をかける。
「分かったわ・・・。京の言う通りにする」
そのまま集会所を飛び出す。
「京、、、色々すまない」
「気にするな、、、とは言えないか、俺もかなり無理をしたよ。だから最後までは協力する」
「私はお嬢様が幸せになってくれれば良いと思っている。例え、目標が達成できなくてもな」
「そう・・・だな」
その後は、ギーと二人で騎士団の騎士舎にどう進入するか、脱出はどうするかなど細かい作戦を詰めていく。
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