058_ガルシア
「いい姿じゃねぇか、レイルーシア」
シルクのネグリジェ姿のレイルーシアはガルシア皇帝を睨みつける。
「おうおう、いい目つきだ」
「何をするのですか!?」
「ははっ、さすがは箱入り娘だ。何も知らねえとはな。あのレスカが大事にしてた訳だ」
「ケダモノ!」
ガルシアはレイルーシアの手を掴み引き寄せる。
「いや、離して!」
ガルシアは無理やり、顔を引き寄せ口付けをしようとする。
しかしレイルーシアはガルシアの唇を噛む。
「くっ、この女!」
ガルシアはレイルーシアの頬を叩く。
「きゃっ」
叩かれた頬をさすりながらガルシアを睨む。
「ははっ、しかも気が強いと来たか。いいねぇ、ますます魅力を感じる」
「あなたは最低です!」
「あぁ、俺は最低だ。しかも非道で外道だ。そうでなけりゃ帝国の皇帝を務められねぇからな」
レイルーシアは枕元にあった護身用のナイフを見つけ、素早く手にする。
「それでどうするんだ?この帝国は力の国だ。皇帝たる俺は象徴。か弱い女がナイフ一本で俺を殺せるわけはないよなぁ!」
レイルーシアは手が震えながらも、すがるような思いでナイフを手離さない。
「まぁ、聞け。俺はお前が気に入った。このまま俺の思い描く女になるなら、、、そうだなぁ妻にしてもいいぞ?」
「誰があんたなんか外道と!」
「皇帝の妻だぞ?俺にひれ伏す国民は俺とお前を祝福するだろうな。手に入れたい物も全て手に入れられるぞ」
「いりません!私が欲しいのはお父様とお兄様です、あなたのせいで二度と手に入りません!」
涙ながらにレイルーシアは精いっぱい喋る。
「ははっ、いいねぇいいねぇ!俺が憎いか?」
「殺したいほど憎いですわ!」
それを聞いたガルシアは心底嬉しそうにすると、机から何かを取り出す。
そして取り出した物をレイルーシアの前へと投げる。
「いいだろうチャンスをやる!そのナイフ一本で再び俺のところまで来な。か弱い女が復讐のためにどこまで登り詰めるか見ものだ。その時は、俺はお前の為に殺されてやるよ」
「そんな馬鹿げた事!?」
「馬鹿げた?ははっ、言ったろうチャンスだと。俺は皇帝だ。何でも叶えられる。お家を失ったお前のような弱い牝一匹にチャンスをくれてやるんだ。・・・どうだ憎いか?」
「憎い・・・!」
「そうだ!それを糧にここまで来い!! おいっ、衛兵」
突然ガルシアは衛兵を呼び付ける。
「はっ、お呼びでしょうか」
「この女を放り出せ」
「しかし宜しいのですか?この者はレスカ家のものですよ」
「構わねぇよ、今さらこいつ一人で何か出来る訳はねぇ。仮に出来たとしたら、俺を殺すチャンスをくれてやる」
衛兵はレイルーシアの両脇を押さえる。
「おっとぉ、そこのナイフを持たせてやれ。ふふっ、それとそのままの格好で放り出すんだ」
衛兵はレイルーシアを連行していく。
着いた先はスラム街だった。
レイルーシアはネグリジェ姿、ほぼ裸に近い格好で放り出される。
「しかし、ホントにいいのか?」
「皇帝陛下のご命令だ、俺らが背く訳には行かないだろ?」
「ああ、そうなんだけど。この女、こんなところで放置してたら一晩も立たず殺されるのが関の山だ」
「それでも陛下は、この女に何かを期待してるんだろうよ」
「ちっ、いい女だったのに」
衛兵は城へと戻っていく。
レイルーシアは初めて来たスラム街に脅える。
「帝国内にこのような場所があるなんて、、、寒い・・・」
ガルシアの命令により、先ほどのネグリジェ姿のまま放り出されている。
両肩を抱えたまま、人に見つからないように歩く。
だがこの場に似つかわしくないその姿は人の目をどうしても引いてしまう。
「よぉ、姉ちゃん。娼婦か?」
スラムの住人である小汚い男が声をかける。
「ち、違います。どうか私に構わないで下さい」
「へっへっへ、んな事言ってもよ、そんな格好じゃ寒いだろ?」
男はいやらしい目つきで、レイルーシアをジロジロと見る。
「こっちへ来い!」
無理やり手を掴まれる。
「い、いや!」
「そんな格好で歩いてるのが悪いんだぜ?犯して下さいって言ってるようなもんだ!」
「やめて!」
諦めかけた時だった。
「手を離せ!」
何者かがレイルーシアを掴んでいる男を殴り飛ばした。
「何しやがる!」
男は振り返ると殴り飛ばしたものを見て慌てる。
「てめぇは!?くそっ覚えてろよ!」
捨て台詞を吐きながら男はどこかへ走り去った。
「大丈夫ですか?お嬢様?」
覚えのある声だった。
「だ、誰です?私を助けてくださり、ありがとうございます」
レイルーシアは相手の顔も見ずに頭を伏せ、礼を述べる
「お嬢様!」
肩を揺さぶられ、その者の姿を見る。
顔に包帯をぐるぐると巻いており、顔では誰かはわからない。
だけど、その声に覚えはあった。
「私です、ギルバートです」
「あああ、ギル・・・、私は」
助かった、そう思うと同時にずっと堪えていた涙が溢れ出る。
私はギルバートの胸で疲れ果てるまで泣き腫らした。
私は何があったかをギルバートへ話した。
「くっ、、、そのような事が。ガルシアめっ!」
「ギル・・・、助けて頂きありがとうございます」
「いえ、私はレスカ家に仕える身。例えこのような事になろうとも私の忠誠は変わりませぬ」
私はギルバートに助けられた事で落ち着きを取り戻す。
そしてある一つの決意を胸にする。
「私は、、、皇帝を、ガルシアを殺したい!」
「・・・気持ちは分かりますが、難しいです」
「ええ、分かっています。今すぐにとは言いません。何年も機会を待ちます」
「お嬢様、復讐は何も生み出せません。私は、いえレスカ家のものならば、お嬢様には今回の事を忘れどこかで平和に暮らして頂きたいと!」
「私は復讐します!お父様やお兄様ならきっと、そのように思ってくれるのでしょう。ですが、、、私の中に芽生えた憎しみは消せません。例え、あなたやもし死んだお父様やお兄様に説得されても変わりません」
「・・・・分かりました。私も協力致しましょう。ですが、道のりは厳しいとお思い下さい」
「ええ、覚悟はしているわ。ギルバート、私にナイフの使い方を教えて下さい」
私はガルシアにより渡されたナイフを見せる。
「それは皇帝家の紋章!?一体どこでそれを」
「このナイフは復讐の証。私はこのナイフで必ずレスカ家を貶めた連中に裁きを降します」
「・・・・いいでしょう。短剣術をお教え致します」
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