055_七乃花
レイラは憲兵と遭遇してから、全く反応しなくなった。
俺は一人で憲兵の死体を森に隠した。
俺は咄嗟の事とはいえ、罪もない憲兵を二人も殺害してしまった。
決して許される事ではない。
だが、俺は彼女を守る為仕方なくと自らの行いを肯定するしかなかった。
日が落ちるのを待ち、帝都へと戻る。
人に見つからないように、レイラを連れ宿屋を連れて行く。
「おい!大丈夫か!」
さっきも何度か声をかけたが反応はない。
今日は集会がある日ではない。
ギーの居所も分からないし、レイラが普段どこで身を潜めているのかも分からない。
「困ったな・・・」
するとレイラに手を掴まれる。
「おい、返事できるか?」
「は、はい・・・」
「大丈夫か?」
優しく声をかける。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
人が変わったように謝罪の言葉を呟く。
俺はレイラを抱きしめる。
「もう大丈夫だから。安心しろ」
レイラは俺の胸の中で泣き始める。
堰を切ったように赤子のように泣き続ける。
女性に泣かれた事がない俺はただ頭を撫でながら、泣き止むのを待つしかなかった。
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寒い。
もうかれこれ10分は待っている。
何かが頭に触れる。
空を見上げると雪が降り始めていた。
どうりで寒い訳だ。
「お待たせ!」
「やっと来た」
「ごめんね、ちょっと遅れちゃったね」
「まぁ、そんなに気にしてないよ」
「バイト、大変?」
「んー始めてみたらそうでもなかったかな。
うちのコンビニはそんなに人来ないし、最初いろいろと覚えたら後は楽だよ」
「ちゃんとやれてて良かったよ、義兄さん」
「でも時給がな、、、まぁ、掛け持ちで何か探すとは思う」
話しながら自分の手を揉む。
寒さなのか、これからの事でなのか、手が小刻みに震えていたからだ。
「そう、ならいいんだけどね。もしかして緊張してる?」
「あー、まぁそうかも・・・」
「そうだよね。でもきっと楽しくなるよ!」
「あぁ」
「義兄さん、ほら?」
俺は手を握る。
手を握るのは昔交わした約束からだ。
手を握ったまま、二人して家を目指す。
「ただいま!」
「おかえり」
扉を開けると父さんが待っていた。
「寒かっただろう?よく来たな、京。大きくなった」
「それ前も言ってたよ」
「ははは、そうか」
父さんは俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。
父さんの後ろから女性が顔を覗かせる。
「すいません、お邪魔します」
「いえ」
女性はそれだけ言うと奥へと引っ込む。
「ごめんね」
そう彼女は小声で一言伝えてくる。
「さぁ、中に入れ、お前たち」
「あぁ」
中に入ると豪華な食事が並んでいる。
「京はそこに座ってくれ」
俺は言われた通りに座る。
俺が座ると彼女はちょこちょこと俺の隣に座る。
「お前たちは仲がいいな」
父さんは嬉しそうにこちらを見ている。
「七弥も座りなさい」
「はい」
「クリスマスだというのに、プレゼントは用意出来なかった。ご馳走はあるから好きなだけ食べてってくれ」
「はい、いただきます!」
俺はチキンに手を伸ばす。
「うまそう・・・、こんなの久しぶりに食べる」
「ローストチキンはクリスマスくらいしか出さないから、そりゃそうだよ義兄さん」
父さん達に笑われる。
「あぁ、まぁそうだよね」
遠慮なくチキンにかぶりつく。
「義兄さん、ケーキも食べてみてよ」
まだ口にチキンが入ってるのにケーキを催促される。
「ん、ん、ちょっと待って」
急いで飲み込む。
「ブッシュドノエル。ちょっと失敗したけど私が作ってみたんだ」
「よく出来てるじゃないか」
「ありがとう、父さん」
渡されたブッシュドノエルを口にする。
「うまいよ!」
「良かったぁー、義兄さんの口に合うか心配で」
突然、七弥さんが席を立ち、別室へ向かう。
「おい」
父さんが追いかける。
俺はその様子が気になり、目で追ってしまう。
「やっぱ、、、俺がいちゃまずかったかなぁ」
「そんな事ないよ!私も父さんも嬉しかったもん!」
「ありがとう」
俺は精いっぱいの笑顔で何とか答える。
しかし消えていった二人が気になり、そっちへと首を向ける。
「ねぇ、あなた、こういうのは二度と辞めましょうよ」
「突然な事だったのは、悪かった。しかしあの娘も見ろ。嬉しそうじゃないか」
「・・・私の娘ながら、まさかこうなるなんて」
「おい!自分の娘じゃないか!・・・そうまでして本家の言う事を聞かなきゃならないのか!」
「分かっていないのは、あなたよ。私がどれだけ庇って上げてるのか」
父さんと七弥さんは激しく揉めてる。
「ごめん、俺のせいだな」
「大丈夫だから!」
「いや俺の方こそ気にしてないし、今日はもう帰るよ」
「そんな、、、平気だよ?」
彼女は涙を滲ませる。
俺はそれに気づかない振りをして、部屋を出る。
「あら」
「どうした、京?」
「あぁ、自分の家の事も気になりますし、バイト上がりで疲れちゃったので帰ろうと思います」
「遠慮するなって言っただろう?」
「そうなんだけどね、疲れたのは本当だから」
「そうか、、、気をつけて帰れよ?」
「父さん、また会えるよね?」
「・・・あぁ、会える。仕事が中々忙しいが時間は取るようにする」
「分かった。お邪魔しました」
俺はそそくさと家を出る。
七弥さんがずっと俺を睨んでるような気がしたからだ。
後ろから傘!と呼ばれたが聞こえない振りをして、そのまま駅まで向かう。
「義兄さん!」
「何だ、来ちゃったの?」
「来ちゃったのじゃなくて、傘!」
「あぁ、ありがとう」
傘を受け取るが一本しかない。
俺が傘を広げると、彼女は俺の傘に入ってくる。
「駅まで行こう」
「傘一つしかないから、帰り濡れちゃうよ?」
「大丈夫!折りたたみ傘があるから」
「何だもう一本あるんじゃないか」
「駄目だよ、駅まではこの傘だけで行くのです」
「了解です、お姫様」
俺はこのやり取りがくだらなくて少し笑う。
「本当にごめんね」
ふと彼女は歩みを止めて、そう呟く。
「私が義兄さんとクリスマスを過ごしたいって言ったからこんな事に」
「楽しかったよ。最後はちょっと残念だったけど。俺はまた父さんに会えたから」
「またこうやってみんなで楽しく集まれるかな?」
彼女は目に涙をためて、そう聞いてくる。
「あぁ、出来るさ。ありがとう、七乃花」
感謝の言葉を述べ、俺は七乃花の頭を撫でた。
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