053_デート
デートの待ち合わせとはこんなだったなと思う。
正確には恋人または恋人未満の男女が、待ち合わせる事をデートと差すなら違う事になる。
それでも俺はレイラが来るのを今か今かとそわそわしながら待ち侘びているのだった。
レイラの素顔は、贔屓目なしに見ても美人だ。
「しかし、遅いな・・・」
暗殺ギルドでは時間に遅れる事は許されないという事になってるが、この待ち合わせには10分程遅れている。
教会の影からちらりちらりとこちらを見てる者がいる。
レイラだ。
「おい、何をやってる早く来い」
「敵は、、、いないか?」
レイラが周囲を警戒してしまうのは癖を通り越して習性になってしまっている。
「大丈夫だ」
「ホントか?」
「本当だ!早く来い!」
我慢ならなかった俺は、レイラを引っ張りだす。
レイラの姿を見た俺はまたもや魅入ってしまった。
「くっ、、、見るな!」
俺は思い切り頬を打たれる。
「ああ、すまない。思わず・・・」
レイラは反射的にしてしまった事とはいえ、一方的な敵意を向けた事を素直に詫びる。
「いや、ジロジロ見たのは悪かった。だが俺はお前を攻撃も襲ったりもしないから必要以上に警戒しないでくれるか?」
「あ、ああ」
「それにお前の奇妙な動きは余計に目を引く。見つかったらまずい連中もいるだろ?」
「ああ、その通りだ」
暗殺者としての顔のレイラと打って変わり、こうして昼間のレイラは警戒心剥き出しの小動物のように思える。
彼女の服装を見る。
精一杯オシャレしたのだろう。
レイラの服装は使い古したドレスを綺麗に補修して見せれるように手直ししてある。
「それで何をさせるのだ?」
「いや、何もさせねぇよ。だが、何も考えてはいなかったな・・・」
普段と違う環境に連れ出せば、気分転換になると思い込んでた俺は何をするかまで考えていなかった。
「そうだな!あそこに行こう。ついて来い」
「お、おい!」
俺はスラム街を抜け、大通りへと向かう。
「こ、こんな人が多い所!」
人が多くなる程、レイラはどんどん態度が小さくなっていく。
しまいには俺の片腕を掴んで、隠れようとする程だ。
レイラは美人だ。
大通りに出ると、すれ違う人が皆、レイラを魅入ってしまっている。
複雑だ、、、これを羨ましいと思われるのだろうが・・・
「着いたぞ」
「ここは・・・、こんな所あったのか」
俺はリディアさんと一緒に行ったカフェにレイラを連れて行った。
女性が喜びそうな所はここしか分からないしな・・・。
キョロキョロしながら、レイラは案内された席に座る。
その姿を見た俺は思わず少し笑ってしまった。
「何故笑う?」
「ああ、すまない。警戒する動物と同じように見えてな」
「動物だと?」
「いやその例えも嬉しくないよな、すまない。事情は知らんがお前が大変なのは分かった。だが安心しろ、俺しかいないんだから」
席に座る際にウェイターに出来る範囲でいいので人払いを頼んでおいた。
ウェイターは事情を察してくれたのか、了承してもらえた。
レイラは何故か笑ってる俺をぼーっと見ると返事をした。
「あ、ああ、分かってる。お前も笑うのだな」
「ん、ああ、そうだな。何だか久しぶりに笑った気がする」
「そうか」
レイラは少しだけ微笑んだ気がしたが、すぐにメニューで顔を伏せてしまいどうだったかは分からずじまいだ。
手を上げ、ウェイターを呼ぶ。
「あー、これってどんな飲み物です?」
「コッフィーですね、豆を行ったものドリップした飲み物です。苦味がありますが香りが素晴らしいドリンクですよ。苦味が苦手な方はミルクや砂糖で味を中和できますね」
コーヒーか・・・。
あまり出歩かなかったのもあるが、この異世界の食文化についても良く分かっていなかった。
「じゃあ、それを。レイラは?」
「私はこちらをこうして頂けますか?」
レイラの口調に違和感を覚える。
普段は無愛想な喋り方だが、綺麗な言葉遣いだ。
それに注文もかなりこだわりを入れていた。
やはり良い所の出なのかもしれない・・・。
「ふぅ、落ち着くな」
「あ、ああ。こんな物を飲んだのは久しぶりだ」
何を話すでもなく、しばらく互いにボーッとしてしまった。
これがデートならば0点だろう。
だが、それが心地よく感じた。
しかし、店内には徐々に人が増えてくる。
人が増えると、レイラはまた周りを気にし始める。
「出るか」
「あ、ああ」
支払いを済ませ、店を出る。
「おい、金は?」
「いい、俺が誘ったから出す」
「しかし、貴様に借りは」
「はぁ、じゃあ今度でいい」
暗殺ギルドの懐事情はかなり寒い。
暗殺し、証拠となるものは取っていくが、金品は奪わない。
それを取ると盗賊になってしまうからだ。
基本的には協力者による、施ししか受けない。
協力者の大半は平民である以上、大金が暗殺ギルドに来ることはない。
だから必要最低限の暮らしぶりになっている。
またレイラが人を恐がってしまうので出来るだけ人気がない所を探そうと歩く。
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