048_呪い解放依頼
昼間、俺は冒険者ギルドへ目指して歩く。
俺は冒険者だ。
その事を忘れない為にも、冒険者稼業は続けるべきだと考えていた。
「お待ちを!」
突然、声をかけられ振り向く。
老紳士が俺を呼び止めたようだ。
「あの、何か?」
「いえ、人を探してまして。少し失礼します」
そう言うなり老紳士は俺の首元に手を伸ばす。
「ちょ、何をする!」
咄嗟に体が反応し、老紳士から距離を取る。
「ああ、これは失礼。そのマフラーに用があったのです」
「マフラー?」
「少し確認させて頂いても宜しいでしょうか」
この呪われたマフラーに一体、何の用があるというのだ。
渡そうにも、また勝手に首を締められたら堪らない。
「これは、、、その呪われてるマフラーなんだ。あんたが不用意に触れば、呪いの対象となってしまうぞ」
「おお!!!」
忠告のつもりで言ったはずだが、何故か老紳士は感動している。
「まさか、件の僧侶様でしたか!」
「僧侶?」
俺はポカンとしていると老紳士はこちらへと近づき、誘導を開始する。
「いやいや、だから何ですか?」
「これは失礼しました。私はフルソン家に仕えるものです」
「フルソン?」
このマフラーを武器屋に押し付けようとしていたオークみたいな男を思い出す。
「ああ、あいつか」
「先日は我が主、ピュレル・フルソン様がご迷惑をお掛けしました」
老紳士は深々と頭を下げ、謝罪をする。
「はぁ・・・、きっと謝りに来ただけじゃないんだろう?」
「えぇ・・・今一度お力をお貸し願えないでしょうか!」
「はぁ」
きっと断れば良かったのだろうが、老紳士に流されるまま俺はフルソン邸へと来てしまった。
「今、お茶をお持ちしますので少々お待ち下さい」
そう言うなり老紳士は俺を客室に一人残し、去ってしまう。
俺は大人しく待とうとするが、貴族の邸宅へ上がる事など滅多にないだろうと思い客室内を拝見させてもらう。
「貴族って、本当にすごいな・・・」
この邸宅には客室が何室かあると思われるが、この客室だけでもかなりこだわりがある。
ミニシャンデリアに、絵画、壺に皿。
審美眼があれば、俺はこれらをさらに愉しむ事が出来ただろうが素人目にもかなりの物だというのは分かった。
「お待たせしました」
メイドの一人が給仕台と共に客室へと入ってくる。
俺はその顔に見覚えがあった。
「あんたはあの時の」
「お久しぶりです。えーっと僧侶様?」
「違う、俺の名前は京だ」
「これは失礼しました、京様」
メイドは軽く会釈すると給仕台からお茶と茶菓子を机へと並べる。
俺はその様子を見ながら、彼女の首を見ていた。
それに気付くとメイドは首輪を隠すようにこちらへと頭を下げる。
「これはお見苦しい所をお見せしました」
「その首輪の下に奴隷紋が入っているのか?」
「えぇ・・・。ですがピュレル様に拾われ、良くされております」
メイドは悲しそうに俺へとそう答える。
「あんた、名前は?」
「セーレと申します」
俺は人を呼び寄せる力でもあるのだろうか、先日あったアミーの姉がそこにいる。
彼女を解放してやりたいが、奴隷とは物だ。
先ほどのピュレルという豚が買い取った奴隷なのだ。
それを奪う事は難しい。
「お待たせした!」
扉がバタンと開かれると見たことある豚・・・フルソン男爵が入ってきた。
「改めて名乗ろう、フルソン家の長男にしてピュレル・フルソン男爵だ」
不遜な態度で挨拶をする。
「あーっと・・、岡崎 京。冒険者だ」
「変わった名だな。にしても僧侶殿は冒険者だったか」
俺を僧侶と言ったのはこいつが元凶なのだろう。
「それにしても用事とは何だ?」
貴族相手とはいえ、俺は態度を崩さずそう話す。
「うむ、用とは僧侶殿にしか頼めない事だ。おい!」
フルソン男爵はそう呼ぶと、中からメイドたちが給仕台に乗せ何かを運んでくる。
絵画に短剣、人形その他もろもろ。
にしてもこの運ばれた物達は異様な雰囲気を発している。
「これは?」
俺はその運ばれたもの達を指して聞く。
「私が集めた、呪いの品だ!」
「呪いの品!?」
「ああ、私の趣味は呪いの品を集める事なのだが、呪いの品が集まりすぎて屋敷に負の念が篭ってしまってな」
笑いながら俺にそう話すが、笑い事ではない。
運んできたメイド達はフルソン男爵に同調して笑っているが笑顔が引きつっている。
「父上にさすがに怒られてしまって、そこで僧侶殿のお力を借りようと呼んだのだ」
とても嫌な予感しかしない。
はっきりと伝えよう。
「俺は僧侶じゃない。だから呪いの品の解呪など出来ない」
「ははは、まさか。現に私が武器屋に持って行ったマフラーを身に着けているではないか?」
「これは、、、たまたまだ」
全く引こうとはしなかった。
「解呪が出来ないとは・・・、ではこの品を買い取るというのはどうだろう?」
どうやらこのフルソン男爵は懲りてないどころか開き直っているように見える。
「俺にそんな金はない。悪いが、帰らせてもらう」
俺はそう言うなり席を立つ。
「待ってくれ!今日中に呪いをどうにかせねば父上にまた怒られてしまう!!」
切羽詰まってるようで、ここで断れば逆恨みを買うかも知れない。
どうにかこの話の着地点を見出そうと再び、席に座る。
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