046_人間族会議
「よぉ、集まってくれたのぉ各国の代表者よ」
ヴァナヘイム神国の会議室、そこには各国の代表者が集まっている。
「この度は我が国に起きた事件と、今後の対策を各国で講じられたらと思い…」
「ははっ、事件!?対策!?なんて事はねぇ、魔王軍が王国に攻め、その結果大事な勇者を一人殺されたって事だろう」
アスガルド王が第5勇者の事件について話そうとするが、それを帝国主導者ガルシア皇帝が口を挟む。
「そうは言うがのぉ、帝国内を魔王軍が通り抜けたという噂が流れておる」
ガルシア皇帝に水をかけるように告げたのは、ヴァナヘイム神国の巫女だ。
「帝国はそんなもん、発見出来なかった。いや正確には事件の時にはな。帝国の隙を着いて、うまく通ったんだろうよ」
「ふむ、とはいえのぉ。それは帝国が魔王軍に加担したと見られても不思議ではなかろう?」
「言うじゃねぇか、婆さん。我が帝国は、俺が帝位を継いでからまだ体制を立て直してる最中だ、帝国内の隅々まで見て回れるほど余裕はねぇ」
帝国は5年前にガルシアが即位し、新体制へと改革中だ。
また帝国は大国ゆえ、帝国内部が落ち着かないと隣国である王国・公国・神国にも影響は出る。
「まぁ、そうですな。ここはアスガルド王の言う通り、起きた事よりもこれからの事を話す方が建設的かと思います」
ミズガルズ公国の大公が、今後についての話を促す。
「ははっ、分かってるじゃねぇか大公さんよ」
「いえ、我が国もそうですが、帝国に何かあれば困るのは我らです」
「まぁ、そうじゃのぉ」
「その通りだぜ。これからの事の方が大事だ。王国と魔国、大陸の端と端だ。にも関わらず王国は襲われ勇者を失った」
ガルシア皇帝は火に油を注ぐかのように言う。
「そ、それは、仕方なかろう、帝国から来るとは!」
「まぁ、落ち着けよ王様。俺が言いたいのはこの大陸、どこにいようが勇者は魔王に狙われるって事だ」
「ほぉ、つまりどういう事かのぉ」
何か言いたげなガルシアに対し、巫女は話を急かす。
「話は簡単だ!どこにいようが狙われるなら守らなくちゃならねぇ。なら誰が守るか?この俺の帝国が守ってやる。帝国は力の象徴だ。魔王軍にも負ける気はしねぇよ」
「それは・・・さすがに!」
「ふむ、帝国の主張はもっともじゃが、今さきほど疑いをかけられた帝国に全ての勇者を集めるのは、皆納得出来んじゃろう」
「言うぜ、婆さん」
「事実じゃ。だが、このまま王国だけに集めておくのも無理があるとは思うのぉ」
「で、ですが、巫女様!これまで王国が勇者を育てていたのは事実です!それをたった一人失っただけでこのような結果は・・・」
「まぁ、待て。誰もお主を責めとらん。王国が勇者を育てていたのは、各国周知の事実じゃ。それに歴史からも王国は始まりとされ、今までも王国で鍛えた勇者は旅立つとされておる」
「ははっ、いいねぇ。そろそろ王国は卒業じゃねぇか?」
「しかし、、、先ほどの事件からもお分かりの通り、勇者はまだレベルが低いと」
「勇者と魔王。大昔から存在し、およそ100年ほどの周期で世界に現れると言われておる。それは物語にも絵本にも歴史にも記されておる通りじゃ。それに勇者と魔王の実力は我ら、ただの人とは比べ物にならない。ここの皇帝もしかりそんな強大な力を秘めた者を各国が欲しがるのは当たり前のことじゃ」
「まぁ、そうでしょう。そんな力があれば他国を侵略するのは不可能ではないでしょうね」
大公はちらりと皇帝を見る。
「そんなすげー力があるなら欲しいと思うのは人の性だな。だが、さっきも言ったようにまだ勇者もひよこちゃんだ。守ってやらねぇと!」
「人間とは争う事しか知らぬのか!」
会議室の端の席に座っていた男が口を開く。
その男は人間と比べると、背は低いが体格はがっしりとして口の周りに蓄えられた髭が特徴的だ。
人間族と唯一、国交を結んでいる異種族ドワーフの王、ニダヴェリール共和国のボルンハルト王だ。
「勇者は力であるともされているが、知恵や知識もこの世界の者より優れておる。帝国に有る魔導機関。それも勇者と我らドワーフが作ったのを忘れたのか?」
「しかし、あれは未だ現役の遺物に過ぎない。お前らならまた作れるんじゃねぇのか?」
「あれはすでにロストテクノロジーだ。再現するのは無理だろうよ。だが勇者がいれば、また世界の発展に助力はできる!」
「ふむ、、、生活を便利にするのも勇者の恩恵と言う事だのぉ」
「ああ、そうだ。何も力だけじゃないという事だ」
「のぉ、アスガルド王よ。そろそろ勇者を旅立たせても良いのではないか?」
「しかし・・・!」
巫女は一息着くと、アスガルド王にこう切り出した。
「ふむ、、、アンナちゃんから聞いたのじゃが」
「アンナ!?一体、何を・・・」
「勇者どのが旅立ちたいという要望を無視し続けとるらしいじゃないか」
「そ、、、そんなことは・・・」
巫女は個人的にアスガルド王の一人娘であるアンナ姫から王国の実情を伺っていた。
巫女は神国の主導者にして、この世界に広まるヴァル神教の巫女でもある。
それゆえに、世界の多くの人は巫女を信奉している。
「なに、無理やり、お主から取り上げようという訳ではない。これから勇者に話を聞き、どの国へ行きたいか決めさせれば良い」
「それが良さそうですな」
「王国に残るもよしじゃ」
巫女の発言に、他の国も同調していく。。
勇者全てを帝国に呼び寄せたかったガルシア皇帝は苦々しい顔をしている。
アスガルド王は、アンナ姫の話を出されてから顔を俯いてしまっている。
「異論はない・・・という事で良いかのぉ?」
「・・・・・」
「宜しい。ではアスガルド王、この者を連れて行け」
「こちらは?」
「初めまして、アスガルド王。四聖の一人、賢者ナツと申します」
「勇者たちに話を聞き、要望があった国は受け入れ準備をするのじゃ」
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「三上様、ここには遺物はありませんね」
「そう、、、ですか、分かりました」
僕は石碑を見つけた翌日、城へと報告をした。
魔王の残した遺物があり、それを破壊したと。
もちろん虚偽の報告だ。
その為に、全く関係ないところを破壊しダミーとした。
そしてそれを見つけられたのは、僕の固有スキルのおかげであるとも説明をする。
僕はそれを口実に、王国内で魔王の遺物を探すという名目を得て、王国内の各地を探索している。
遺物を探す・・・そんなのは嘘だ。
僕が探すのは、僕が残したであろう石碑。
幾度か探しまわったが、あれ以来見つけることは出来なかった。
「すみませんが、少し一人にさせて頂けませんか」
「大丈夫でしょうか?」
「ええ、問題ありません。この辺のモンスターならば僕の魔法があれば遅れを取りませんので。それまでは捜索隊の方は休ませて下さい」
「はっ、了解であります」
僕はぼんやりと考える。
あれ以来見つけることは出来ない石碑。
そこに書かれていた内容、勇者を殺せ・・・。
この世界に転生してから、僕は魔法の研鑽を重ねた。
モンスターも倒し、レベルもかなり上がった。
だが、魔王には程遠い。
それに届くためには、他の勇者を殺しステータスを奪うしかない。
いつもここで考えが詰まれる。
一歩や二神は僕とは比べて圧倒的に強い。
前衛職である彼らでは、僕が戦おうにも武が悪すぎる。
なら他のものは?
殺せるかもしれない・・・、だが城では常に誰かに見られておりチャンスはない。
殺れたとしても、すぐに他の勇者に殺されるのが見えている。
「ふっ、悩んでいるな。三上賢三」
「誰だ?」
影から男が現れる。
「お前は・・・?」
五十嵐さんが死んだ時、遠巻きではあったがこの者の持つ雰囲気は忘れる訳はない。
「魔王・・・!」
「ああ、そうとも。第3魔王 参賀参珠」
「何の用だ?」
「用か・・・。逆に問おう、用があるのは貴様ではないのか?だから姿を現したのだが」
「君に用など!」
僕は考える、つい先ほどまでの考えを。
この者は五十嵐さんの時もそうだが、誰にも気づかれず姿を表せた。
「なるほど、、、そういう事か。君は去っていった魔王とは別に、王国に残っていた訳か」
「そうだ。私は常に勇者と共にいた。貴様らの素性・能力、それらを知る為にな」
「そして、君は僕の前にいる。僕となら、話が出来るからと思ったわけだ」
「その通りだ、三上賢三」
「今度は僕が聞こうか。協力してくれるという事か?」
「協力か、それは互いの利益が一致してる事をさすのだろう?」
僕は口元が緩む。
「君が勇者を殺すのを手伝い」
「貴様が魔王を殺すのを手伝う」
第3勇者である僕は、第3魔王と手を組むことになった。
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本日も12時と22時に更新を予定しております。
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