035_Cランク昇格
第5勇者が討たれました。
討伐した第1魔王と第3魔王にステータスが分配されます。
固有スキルは抽選になります。
俺は倒れる直前のシステムメッセージを思い出す。
メッセージの内容から、第1魔王と第3魔王によって五十嵐さんは殺されたんだと思う。
俺は他の勇者とは出会って1日で城から抜けだしてしまった。
たった1日しか一緒にいなかったのもあり、顔見知り程度の人が死んだってだけなのに、リアルな夢のせいか、悲しさを感じてしまう。
それに第1魔王と第3魔王?
勇者は8人いたが、魔王も複数人いるとは知らなかった。
もし仮に勇者として活動していくのならば、何人いるか分からない魔王を倒さなければならないのか。
勇者が魔王を討伐し、魔王が勇者を討伐する。
それはどちらかが相手を殺すという事だ。
俺は前の昇格試験の時に、商隊の人がモンスターに殺されるのを見た。
その時に現実感が増してはいたが、他の勇者つまり同じ前の世界の人間が殺されたのだ。
前の世界、日本では殺人などあり得ない事だ。
だが異世界に生きてる今、それはあり得る事だ。
やる事をやる。
それはいつか俺が人を殺すという事だ。
俺はそんな考えを冷静に受け止めてしまう。
初めてモンスターを殺した時から、今に至るまで違和感はあった。
その違和感のせいで、現実感が薄れてしまってたのは事実だ。
初めてモンスターを殺した時も、前の昇格試験の際に自分が殺されになったことも、その時に商隊の人が殺されたのも。
頭では恐ろしい事だと考えるが、俺はそれらを冷静に受け止めてしまう。
まるでゲームをやってる感覚だ。
ピエールさんはそんな俺を見透かしてたのかもしれない。
このままでは大事なものを失い、自分が壊れるのではないかと。
俺は異世界に転生させられた影響かと思っていたが、他の勇者を思い出してみるが素直に感情を吐き出せる勇者はいた。
きっと俺が特別なんだろう。
これがいいのか悪いのか分からないが、事実として受け止めて注意するしかない。
翌日になり、ヒッグさんから正式にCランク昇格を告げられる。
ティナさんからCランクの説明を受けたが、前の時よりも説明は長くならなかった。
単に受けられるクエストの幅が広がるとの事だ。
ちなみに次の昇格試験を受けるようになるまでには10,000p必要だそうで、しばらくは昇格するまでのに時間がかかりそうだと思った。
「んで、いつ発つんだ?」
「まぁ、こいつも回復したみたいだし、明日にでも出るかな」
「それは早いな・・・。ちなみにどこへ行く?」
「あぁ、帝国だ」
「帝国か・・・、この国とは真反対な国の気質だからなぁ」
「そうなんですか?まぁ、前に師匠が擦れてる国だとは言ってましたが」
冒険者ギルドは各国とは別に独自の連絡網を持っており、そこから情報が入ってくるそうだ。
帝国があまり良くないという話は聞いていたが、ヒッグさんから聞かされると余計に心配になってしまう。
「それには違いねぇな。前の帝国もひどいもんだったが、今は良くねぇ噂しか聞かない」
「この国よりは、色々とひどいのは間違いねぇな」
「ああ、帝国はこの公国や他の国と比べると歴史が浅いんだ。大昔は小国が並んでいたんだが、初代皇帝が戦争で無理やり併合して帝国が生まれた」
「力こそ主義みたいなやつって事ですかね」
「その通りなんだが、力ってのは何も腕だけじゃねぇ。権力も力って扱いさ。軍人や武人は力で弱いやつを虐げ、貴族は権力で平民や奴隷を虐げる」
「奴隷・・・」
「ああ、この国は貴族階級がない。商人が興した国だからな、だが他の歴史ある国では貴族階級があり理不尽を押し付けられる。また各国から奴隷が流れたり、騙されたり、力でねじ伏せられ奴隷に落とされたりもある」
「なんか、それを聞いてると国というよりかは無法地帯な気もしますねぇ」
「ハハハ、ヒッグは多少大げさに話してるところはあるな」
「ん、まぁ、ちょっと心配でよぉ」
「ヒッグさんはかなり京さんのことを心配していらっしゃいますよ。普段は試験の結果であそこまで厳しく言わないですよ」
ティナさんに言われ、ヒッグさんは照れながらもじゃもじゃに伸びたヒゲを撫でる。
「まぁ、有望な新人だ。すぐに死なれちゃ困るんだよ。ともかく大げさに言ったが注意するに越したことはない。特に新皇帝になってからは軍備に相当力を入れてる」
「なるほど・・・」
「王国の一件もあるしな」
「王国?」
「ああ、何でも魔王軍のモンスターが大量に城へ押し寄せたらしい。何とか退けたってぇ話だが、あそこまでの大群だ各国が気付いてもおかしくないはずなんだ」
「王国は無事だったんですか?」
「ああ、どうやら勇者が退けたみたいだが、、、腑に落ちねぇ」
勇者が退けたか・・・、その時に五十嵐さんは命を落としたって事か。
「モンスターの大群を移動させるには、地理的に帝国を横断するしかないんだ。それで帝国が気付いていないというのは、何か裏があるように思える」
「色々と気をつけた方がいいのは間違いなさそうですね・・・。その王国の件ですが魔王がいたとかは?」
「さすがにそこまでの情報は王国は与えてくれなかったなぁ。ただ勇者が退けたと。もしかしたら何かあったのかも知れないが、そこは伏せてプロパガンダとして発表したのかもしれんが」
「まぁ、そこは国に有利にするのが普通ですよね」
「そうなるな」
「勇者や魔王ってそこまで強いもんなんですか?」
「あー、お前は記憶がないんだったな。大体だが、勇者と魔王は100年周期にやってくる。その強さは人間が大軍を率いても勝ち目はないと言われている」
「そんなに・・・」
俺はそこまで強くなれる気がしないな・・・
「まぁ、100年事にそんな奇跡みたいな事が起きるんだ。ほぼほぼ事実だろう。よく本にもなってるし、見てみるといい」
この国を出る前に、その本とやらを手に入れよう。
「それよりハルエルと新人の門出だ!飲みに行くぞ!」
「え!?」
俺はがっちりとヒゲのおっさんにホールドされて酒場へと連行される。
酒場へ着くなり、大量のエールが並べられる。
「ハハハ、飲めっ!飲めっ!」
「ガハハ、いいじゃないか、京!」
おっさん二人に無理やりと飲まされる。
軽く千鳥足になった頃には、大勢の人が宴会に参加していた。
どうやら冒険者ギルドで俺が飲んでいると聞いたらしく、顔見知り達が集まってきているようだ。。
「う゛う゛う゛、私を置いてかないでー、京」
「ほら、パショネ、泣かないの」
「だっでぇーーー、寂しいんだもん」
「ハハハ、お前さん思ったよりモテるじゃないか!」
「はぁ、茶化さないでくださいよ。パショネは俺の初めての仲間です」
「な゛が ま゛ーーー、嬉し゛いけど寂し゛いよ゛ぉぉぉー」
「ちょっと、飲み過ぎじゃないのか・・・?」
「まぁ、みんな京がいなくなるのは寂しがってるからね」
「僕だって寂しいよぉ」
ピエールさんがやってくる。
「ピエールさん!?傷は平気ですか?」
「京くん、おめでとう。これで同じランクになれたねぇ」
「ええ、おかげさまで」
「傷なんかへっちゃらだよ。本当に最後の一撃は堪えたねぇ」
「ははは、それはどうも」
苦笑いをする。
かなり精神的に追い詰められた人だ、ついつい苦手意識が働いてしまう。
「まあ、それよりも試験では君を追い詰めてしまってすまないねぇ。ついつい、君が気になってしまって」
「気゛に゛な゛る゛ってなんですかぁー」
パショネがピエールさんに抱きついて訴える。
「京くんはモテるからねぇ、僕も気になってしまうのさぁ」
「そんな禁断の恋許しません…!」
だんまりだったキュウルが反論する。
「おいおい、杖なんか取り出してあぶねぇぞ」
「ヒック、京は魔法の徒です…。そんな女々しい殿方に渡しませんよ、ヒック」
「あぁー駄目だこりゃ」
「ハハハ、愉快じゃねぇか!」
「おうおう、取り合いか、こりゃティナがいなくて残念がるなぁ!」
おっさん二人はビールをがばがばと飲んでいる。
さっきからおかわりを連呼していて、何杯飲んだかも分からない。
「何で・・・、みんなで京くんを取り合ってるんですか?」
そこには張り付いた笑顔が怖いティナさんが立っていた。
「いや、これは酔っぱらいの戯言というか」
「しかも、ピエールさんまで京くんの腕にしがみついているじゃないですか」
うやむやの中でみんなが俺に抱きつく形になっていた。
「京くん、私に言いましたよねぇ・・・。今は修行中の身だから恋愛に割く余裕はないと?」
「ええ、そんな事言いましたねぇ」
前にティナさんとデート?(結局、パーティメンバーも合流したが)の時に約束したのだ。
酔っぱらいの席で責任を取れというコールが始まったせいで俺はそう言わざるを得なかったのだが・・・。
「ははは・・・そうですよ」
「京くんはこれから異国へと旅立ちますので、今日は朝までその辺しっかりとお話しをさせて頂きます、悪い虫がつかないように」
宴は朝まで続き、解放されたのは日が登った後だった。
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