030_強制修行
行商人との旅が始まって2日目。
俺は両手をドラ○もんの手のように、包帯でぐるぐる巻きにされていた。
理由は「小僧、おまえとっても弱いネ」との事。
このインド人、見かけに反してかなり強い。
素手であらゆるモンスターを一撃で屠る。
申し訳無さなのか、この7日間みっちり鍛えてやると言われたので、俺は「ハイ!」としか答えなかった。
「あの念の為聞くんですけど、これでどうやって敵を倒すんですか?」
「殴る」
「他には」
「蹴る」
「他は?」
「んー、頭突きっていうのはいいアルヨ」
つまり武器を使うなと・・・。
「小僧、来たヨ、ゴブリン」
「まじかよ、武器使えないんだぞ!」
とは言うものの、体は今まで染みこんできたもので素直に動く。
敵の攻撃を
躱す。
躱す。
躱す。
躱すしか出来ない・・・。
「小僧殴るネ!」
殴るってこのドラ○もんみたいな手でか・・・。
「はぁっ!」
ゴッ
ゴブリンはちょっとだけふっ飛ぶが、すぐ体制を立てなおしてこちらへ向かってくる。
「どうすりゃいいんだよ・・・」
「もっと自分の体を信じるネ。言い換えれば体も武器ってことアル」
「はぁ・・・」
「アチョー!」
インド人の回し蹴りがゴブリンに炸裂する。
ゴブリンは胴体が上下に別れる。
「いやいや、普通は蹴りでモンスターを真っ二つにする事なんか出来ないですよ」
「私は出来たネ」
「どんな理屈だよ・・・」
「うぅーん、ちょっとモンスター弱かったネ。小僧、本気にさせないと覚えないみたいネ」
「すごく嫌な予感がするんですが、、、」
その後、『ちょっと待つネ』と言われ、俺は元気よく『ハイ!』と返事をして待っていた。
「お待たせネ。連れてきたヨ」
インド人は何かから逃げながらこちらへ向かってくる。
その何かはオークよりも一際大きく、手にはハルバードを持っていた。
「オークジェネラル!」
「よりによって、トラウマを作られそうになった相手を連れてくるなんて!」
「さぁ、小僧、本気でやらないと死ぬヨ!」
オークジェネラルは容赦なくハルバードを振り回す。
躱しながら隙を見て、殴る。
ポヨンッ
だが、オークジェネラルの肥え太った腹には俺の拙い拳ではダメージすら与えられない。
「小僧、打撃は当てるだけじゃ駄目ヨ。拳を伝える、重心を持って拳を相手に伝えるネ!」
「くそ、、、、こんな強敵相手にそんな事出来るか!」
ハルバードの一撃が俺を捉え、振るわれる。
俺は魔力を足に込めて加速し、半身で躱す。
すかさず拳を構えて、オークジェネラルを見据える。
「ちっ・・・やるしかないって事か」
頭の中でイメージする。
拳で殴るのに最適な理論を考える。
「やってみるか・・・」
俺はインド人に言われた通り、重心を意識しながら殴る。
ブワンッ
さっきより、腹が揺れた気がする。
「グォォォォ!」
もう一度殴りに行く。
さっきよりも、拳を伝えるようイメージして。
ドゴッ
「グォォォォ!」
ピロン
格闘術Ⅲを習得しました。
「あ、ちょっとは効いたみたいだ」
格闘術を習得したおかげか、さっきよりはまともに戦えるようになった。
ドラ○モンパンチでオークジェネラルを殴る・蹴る。
着実にダメージを与えていってるが、オークジェネラルを倒すには至らない。
「小僧、格闘術を覚えたくらいじゃ、こいつは倒せないネ」
「なら、いつまで戦わせるんですか!?」
ハルバードを避けながら返事をする。
「格闘術しかり、スキルとは覚えるだけネ。ただ使い方が分かるだけで真の意味で拳を理解した訳じゃないヨ」
まるで師匠が剣についての理解と言ったように、このインド人も同じような事を言う。
「よくある話ヨ。同じレベル、同じスキルの者同士で戦わせた場合、どっちかが倒れるネ。何でか分かるネ?」
「分かんないっす!」
くそう、こいつ相手に問答しながら戦えねぇ!
「勝った方がスキルを…いや拳を理解してたってだけネ」
つまり、、、、スキル以上にダメージを与えられるって事なのだろうか。
オークジェネラルと距離を取り、心を落ち着かせる。
「っ!!やってやるよ!!」
そして腰を軽く落とし、片腕を前に突き出し構える。
オークジェネラルはハルバードを振り回しながら俺へと向かってくる。
間合いに入るとハルバードを頭上にかかげ、一気に振り下ろす。
俺はその一撃を半身になり躱す。
そして、拳に魔力を込めて、拳をまっすぐに伸ばす。
イメージは貫くように。
ブシュッ
「グォォォ!」
オークジェネラルの醜い腹に小さいながら穴を穿つ事が出来た。
「で、出来た!」
俺が技の成功に安堵したのを見計らって、オークジェネラルはハルバードが振り回す。
カキンッ
インド人が片足でハルバードの柄を蹴り上げる。
そして回転して蹴りを腹に当てる。
ザシュッ
オークジェネラルの背中が裂け、血しぶきが上がる。
「まぁ、及第点ネ」
「ハァ、ハァ、本当にあんた何者なんだ・・・」
来る日も来る日も呪いが解けるまで、インド人の鬼畜な修行な旅が続いた。
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「小僧、よく頑張ったネ。ここまで荷物持ってもらって助かったアル」
このインド人、日に日に荷物を増やし、シュガーの街に着く頃には荷物はかなりの重さになっていた。
「はぁ、はぁ、ここ最近であんたに出会ったのは最大の不幸だ」
「さて、そろそろ頃合いネ。呪いは解けたはずアル」
「ほんとかよ・・・」
「待て!」
インド人の命令は虚しく響くだけだ。
やった・・・、呪いが解けてる!
「いやだ!誰が二度とお前の命令なぞ聞くものか!」
俺はドラ○もんテープを剥がし、両手を自由にしてやる。
「はぁ、やっと解放された」
「小僧、ワタシとの修行はここまでアル。けど、出来る限り毎日、型は毎日やるネ」
「分かったよ。無理やりとは言え、あんたのおかげで強くはなれたんだ感謝する」
「じゃあ、またどこかで!勇者殿」
そう言うとインド人は重いリュックサックを片手で持ち上げ、街へと消えていく。
「あいつ、、、俺のこと、知ってたのか」
勇者と呼ばれ、俺は驚くがインド人はそれだけ告げただけだった。
今までの対応を見るに連れ戻しに来たわけじゃないんだろうと納得するしかなかった。
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