029_拉致
ここ3日程前から、謎の商人が俺の出る門の先に必ずいる。
俺は出くわさないように、一昨日は南門、昨日は西門、本日は北門と場所を変えて外に出ているのにだ。
「ちょっと、待つアルヨ!」
偶然出くわすなんて事は、いくらでもあることだ。
だが、3日も連続でこんな中国語っぽい喋り方をするインド人みたいな風貌な商人に出くわすのは不自然だ。
気味が悪いが・・・、ここは一つちゃんと話をつけておくべきだろうと意を決してインド人の露天へと向かう。
「お兄さん、コレ見るネ!」
「あぁー、はいはい。あんたの商品見たら、付きまとわないでくれるか?」
「つきまとってないヨ。たまたまネ。それより、商品見てヨ!」
適当に話を合わせて、あしらえば去ってくれるのか。
「はぁ、見るだけだ」
「この花、すごいヨ」
そういうとインド人商人は赤色のチューリップに似た花を取り出すと花びらの部分を手で隠す。
「ほら、すごいヨ!」
チューリップの花びらが黄色になっていた。
「手品かよ!」
「手品?違うヨ、ハンドパワーネ!」
マジで何がしたいんだ、こいつは…。
「今度はこっちネ」
ティーカップを取り出す。
どこかの貴族が使っててもおかしくない、そこそこ綺麗なカップだ。
「お兄さん、1sz貸すネ。ちゃんと返すヨ」
「分かったよ」
俺も人が甘いな・・・と思いつつ、手持ちの袋から1szを取り出すとティーカップの上に乗せる。
「アナタの1szはカップの上ネ」
インド人はティーカップと1szを手で覆い隠すとカランっと音がなる。
「はぁ、俺の1szはティーカップの中にあるって事だろ?」
「すごいネ、お兄さん!ほら!」
ティーカップを上げると1bzがティーカップの中にある。
「おい、俺の金を返せ」
「これがハンドパワーの力アルヨ!」
ニコニコしながらハンドパワーの力を説明する。
消えた金に関しては答える気はないらしい。
こ、、、こいつは・・・!
さすがにいい加減、憲兵の人に訴えようかと思っていたらこれが最後だと口をひらく。
「じゃあ、お兄さん、これが最後ネ!これ終わったらお金返すヨ」
「早く返して、二度と表れないでくれ・・・」
「まあまあ、いいから」
すると奇妙な文様が書かれた一枚の紙を出す。
直感だが、とても嫌な感じがする。
「これをどうするんだ・・・?」
インド人は紙をねじるとコヨリみたいにする。
「ほら、思いっきり引っ張っても千切れないネ!」
「本当に何がしたいんだ・・・」
「お兄さんもやってみるネ!」
「はぁ、、、こうか?」
軽く力を入れ、コヨリを引っ張る。
ブチッ
あ、千切れた。
「おい、これ、ちぎれちゃったぞ」
「フフフ、ついにやったネ」
え、どうしちゃったの、こいつ?
突然のインド人の変化に、俺は怖くなりその場を去ろうとする。
「おい、もう金はいいから俺はいくぞ」
『待て!』
「ハイ!」
その瞬間、体が動かなくなり、無意識で返事をしてしまった。
「小僧・・・、この紙が何だか分からないみたいネ」
「な、、、何なんだよ、それ」
俺はダガーに手を伸ばそうとする。
『動くな!』
「ハイ!」
「効果てきめんアル」
やばい、、、何だか分からんがやばいぞ。
「これは呪いの紙ネ。私が旅してきた中で手に入れた失われた魔道具の一種ネ。この紙を渡された相手が紙を傷つけた場合、渡した相手の質問には「ハイ!」としか答えられなくなり、その通りにしか行動出来ないネ」
「まじかよ、、、なんて物を俺に渡したんだ!」
「まぁ、焦らず聞くネ!この呪いの効果は一週間だけネ。それが解ければ解放アル。それに普段の行動まで制限しないヨ」
「それで、結局、何がしたいんだよ?」
「荷物持ちネ。私、行商人ヨ。ちょっと腰痛めちゃって、手伝ってくれる人探してたネ」
「は?」
「場所はシュガーの街ネ。ここから北に7日程ネ」
「は?」
「じゃあ、『行くヨ』」
「ハイ!」
俺は謎の行商人に7日間こき使われる事になった・・・・。
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