020_迎撃準備
モンスターの出現頻度の多さから、何か異常事態を察知し、護衛の商隊達は馬車を止める事にした。
すぐに商隊のハムルさんとピエールさんの話し合いが行われる。
俺らのパーティはその間も、モンスターや盗賊の襲来がないかを警戒を続ける。
「京くん、すまないんだけど偵察隊を出す事に決めたよ。本来なら君達は試験の最中なんだけど、誰か一人を偵察隊に加えられないか?僕が行くべきなんだけどねぇ、不測の事態に備えて残った方が良いとハムルさんが言っててねぇ」
この先に何があるのか、偵察隊を組む事になりピエールさんに相談される。
偵察隊と言っても、商隊の馬を二頭に騎手と観測者をそれぞれ乗せての偵察だ。
俺はすぐにパーティのメンバーと相談し、一人を選抜した。
最初は俺が行こうとしたが、パーティ指揮がいないとまずいとみんなから却下される。
どうするかなと思ったら、パショネは乗馬の経験もあるし、目が良いとの理由でパショネに行かせる事になった。
「まぁ、見てくるだけだから大丈夫だとは思うけどねぇ、何か見つけたらすぐにこっちへ戻ってくるんだよ」
「はいっ!」
「気をつけてね、パショネ」
「無理…しないで」
「偵察だけだ、だから絶対に手を出さないように!」
パショネはお茶目を通り越してるところがあるから、少しキツ目に言う。
「わかってるよ、りーだー。無事依頼が終わったらデートだからねっ!」
ご飯の約束がいつの間にかデートになっている。
パショネを乗せた、馬は街道の先へと駆けていく。
「リーダー、顔が赤いよ」
「そんな事になってるなんて」
エルクとキュウルが驚く。
俺は恥ずかしくなり、辺りを警戒するフリをする。
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小一時間が経過しただろうか、まだパショネは戻ってきていない。
俺らは護衛を続けながら、パショネを待っていた。
さすがに皆、心配になり口を開き始める。
「遅いね、パショネ。無事ならいいんだけど」
「パショネは大丈夫。自分が欲しいものの為なら這ってでもやってくる」
エルクもキュウルもパショネの事が心配なようだった。
と、その時、遠くから馬の足音が聞こえてくる。
「パショネが戻ってきた!」
エルクが大声でパショネの無事を告げる。
それを聞いて、俺とパーティの皆は安心する。
「た、大変!」
「どうでしたか!」
「ピエールさんっ、オークが50頭近く、群れをなしてこっちへ向かってきているよ!」
「なんと!!それで群れを率いるボスはいましたか!?」
「いましたっ!見たことないから分からないんですが、、、オークジェネラルっていうのかも」
「まずいですねぇ・・・」
「オークジェネラル・・・どうしましょうピエールさん?」
オークジェネラル・・・この単語を聞いただけでピエールさんは深く考え込み、ハムルさんは慌てている。
「ハムルさん。荷物だけ捨てて、逃げるのは可能ですか?出来れば、それを選択して頂ければ死人が出ることはないかと思うのですが」
「荷物を捨てる・・・。いや、それは難しいです。出来れば人死は誰も出したくはないのですが、、、この荷物は次の商売の為の荷物です。これを捨てたとなるとハロルド商会は経営がかなり傾いてしまいます!」
「まぁ、そうですよねぇ・・・」
「そ、その例えば引き返したとしてミズガルズ首都まで逃げ切れれば、荷物も我々も無事に済むのではないでしょうか」
「パショネ。向こうはどのくらいの速度ですか?」
「結構な行軍速度でしたっ!」
「感覚でいいよぉ、引き返したら追いつかれると思うかい?」
「えっと、何ともいえないですけど、、、追いつかれると思います!」
「だ、そうですよぉ。荷物か人か、選ばないといけませんねぇ」
「そ、、、そんな」
それを聞いたハムルさんは項垂れてしまう。
「ピエールさん、すいません」
「どうしました、エルク?」
「僕は商会の人間だからこう思うのですが、商会にとっての荷物は命と同程度のものです。この荷物があるから次の商売が出来、家族を養う事が出来るんです。それを捨てるっていう事は、家族の未来を捨てるように思えるんですよ」
「なるほど・・・、ですが命あっての物種とも言いませんかねぇ?」
「それはそうなんですが!?・・・でも命を賭してでも守りたいものが、商人にとっては商売道具なのです!」
「エルク・・・」
エルクは商会の跡取り息子なだけに、この商隊の人達の気持ちが分かってしまうのだろう。
商隊にとっての荷物は自分たちが食べていくのに必要な大事なものだと、俺はエルクの意気込みに感動する。
「あの、試験中の俺が言うのもなんですが、やれるだけやりませんか」
どうしたらいいかなんて分からない。
けれど、俺は良くしてくれた商会の人の為にも何かをしないといけないような気になり発言する。
「はぁ、京くんも同意見なんですねぇ。みんなも言ってないけど同じ考えのよぉです」
パショネもキュウルも眼でピエールさんに訴えていたようだ。
「分かりました、やれるだけやりましょう。ただし、これはもう既に護衛の依頼も試験もすでにその範疇を超えています。それを理解した上で、各自で責任をとってください」
「「「はい!」」」
俺らは勢いよく返事をする。
「ではぁ、ハムルさん。あなた方商会の人間も戦える人間は少しでもいいから残って下さい。戦えない人間は馬車を反転させて、出来る限りの速度で街道を戻って下さい」
おっとりとした雰囲気から一転、ピエールさんは的確に指示を出す。
「京くん」
「はい!」
「あなた、弓を持ってましたよねぇ」
「えぇ、持ってますよ。護衛に出る前に買いました」
「使ってみましたか?この弓を使ってオークと戦う事は可能ですかねぇ?」
「いや、、、試し打ちはしましたが、実戦でとなると、まだ無理です」
「では、私が実戦を想定して教えた場合、すぐに使えるようになりますかねぇ?」
俺の固有スキルの事を理解しているのかとちょっと焦る。
だがそれに気付いている様子はなく、物覚えが良い天才として認識しているように思えた。
これから死線をくぐり抜けるのに嘘はいけないなと思い、固有スキルの事は伏せて回答する。
「確実には答えられませんが、、、ピエールさんが弓の実力者でそれをちゃんと教えてもらえるのであれば[弓術]を取得出来るかと思います」
俺の話を聞くとピエールさんは少し考えた後、俺への話を続ける。
「結構!それではオークが来るまでに私が仕込みます」
「エルク」
「はい!」
「あなたは、商隊の戦える人間をまとめて、指揮を出しなさい」
「僕がですか?」
「えぇ、そうです。無理とは言わせませんよ。これは実戦です、やらなければ死にます」
「わ、、、分かりました!」
ピエールさんはエルクに商隊の人をまとめて、一時的なパーティリーダーをやらせるつもりだ。
俺が教えていた[指揮術]が役に立てばいいのだが。
「パショネ」
「はい!」
「あなたは、遊撃隊としてエルクの部隊をサポートしなさい。いいですか、必ず一撃離脱の教えを忘れずに」
「はい!」
「キュウル」
「あなたは後方から魔法で支援をしなさい」
「了解!」
「間違っても人には当てないように。あなたの実力ならば、周りを見ながらタイミングを図れるはずです」
エルクと商隊のパーティを中心に、パショネとピエールさんが遊撃として動く。
俺とキュウルは後方から、オーク達の数を少しでも減らせるよう支援をする。
俺は前線で戦えない事が少し不満だったが、矢がなくなればすぐに合流してくれと言われ納得する。
このような事態を想定していたのだろうか、ピエールさんは的確に指示を出して皆はその通りに動く。
「これがCランクパーティのリーダーの実力なのか・・・」
俺はその様子を見て、思わず感心してしまう。
「すみません、ピエールさん!我々は引き返しますが、もし助けてくれそうな方をお見かけしたら応援に来てもらえるよう頼みます!」
「いえ、我々もどこまで持つかは分かりません。出来る限り遠くへ逃げてくださいねぇ」
ハムルさんはピエールさんと俺達に深々と頭を下げると、馬車を来た道へと引き返す。
残った人はエルクを中心に連携やらポジションの確認が始まった。
「では、京。弓を教えますねぇ」
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