016_パーティリーダー
Dランク昇格試験―ハロルド商会の商隊をソルトの街まで護衛をする事。
ミズガルズ公国の首都からソルトの街までおおよそ六日程かかる予定だ。
突然の試験で、食料や水は?と思ったがそれは商会の人達が分けてくれるらしい。
初めての護衛任務という事で俺を含めパーティメンバーは警戒して黙っていたが、そうそうモンスターに出くわす事もなく次第にパーティの皆を口開き始める。
「じゃあ、エルクは冒険者で一人前になって自分の家を手伝いたいんだ!」
「うちの家は公国内ではそこそこの規模になってきたと思うよ。でも今度はそれを貿易に活かさないとうちの商会は増々大きくは出来ないと思うんだ。今は行商人などに頼んでいるけど、手数料が結構取られるからね。自分たちで隊商を組めれば儲けも大きくなると思うんだ」
「すっごいね、エルクは。私にはそんな大きな目標はないなぁー」
「パショネに夢はないのかい?」
「んんーー、強くなりたい!強くなって色んな国を見てみたいかなぁ。大陸の東の方に行って、エルフやドワーフなど色んな種族に会ってみたいよ」
エルフにドワーフか、ファンタジーの王道もいえる種族がこの世界にはいるようだ。
「京は?」
「俺か、、、俺はみんなほど若くないし、普通に暮らせれば満足だよ」
「それは無理じゃないかな」
「え?」
「そーだよー、ハルエル様が弟子を取るなんて今までありえなかったんだから」
「そうなのか、、、俺は行き倒れそうになってるところを拾われて自活出来るまで面倒見てやるって言われただけなんだけどな」
「それは運がいいのやら、悪いのやら」
苦笑いをしながらエルクは俺の今後について話してくれる。
「キュウルは?」
「もっと、、、魔法上手くなりたい。師匠にもう一時師事を仰ぎたい」
「キュウルも師匠がいたんだね。有名な人?」
「それは言えない、、、京の師匠と違って弟子はたくさんいる。・・・たらし」
「つまり、強くなって認めてもらいたいって事ー?」
コクリとキュウルは頷く。
「いいねぇ、みんな夢を語るなんて、若者の特権じゃないか」
俺らの様子を見兼ねてか、ピエールさんは茶化してくる。
一通り皆と話してみて思ったが、人当たりはよく揉め事は起きそうにないなと思える。
俺はパーティには恵まれたのかもしれないと、ひっそり感謝する。
皆と話してみて、大体どういう人か分かってきた。
エルクはこのパーティの中で一番若く、歳は19だそうだ。
革の鎧に、ブロードソード、そして何かのモンスターのウロコで覆われた大盾を背中に担いている。
パショネは21だ。
最初、女性に年齢は聞くのは失礼かと思ったが、聞かれた本人は特に何も気にしていない。
身軽な服装に、この間手に入れた鉄の剣。腰にはダガーを差している。
キュウルは年齢は分からないが、かなり若くみえる。
エルクの年齢を聞いた時に、エルクよりは若くないとボソッと言っていたのを俺はしっかりと聞いていた。
背丈はみんなより低く、黒いローブにとんがり帽子というパッと見で魔法使いと分かる。
黒いローブのせいもあり、俺は男の子かと思ったら立派な女性だそうで、一応俺なりに配慮はしようと思う。
そんな事を考えていると前方よりわずかながら殺気を感じる。
「さぁ、そろそろお喋りはお終いだねぇ。敵が来るみたいだね」
前を見るとゴブリンが3匹走ってくる。
俺が感じた殺気はゴブリン達のものだろう。
師匠とミズガルズ公国へ向かう旅路で何度か戦った。
ヌーやウィーウルフと比べると低いながら知能があり、一本調子には行かない相手だった。
「先手必勝!いっくよー!」
「うおおお!」
エルクがそう告げると抜剣し、駆け出す。
それを見た、俺とエルクも同時に敵へと向かって駆ける。
「喰らえ!」
ガキンッ!
三人の剣閃がかぶり、互いに邪魔をし合ってしまった。
「あ、ごめん」
「ごっめーん」
「すま・・・」
突如として、後ろからゴゥッという音と共に熱を感じる。
「ファイアーボール」
本能的にだったろう、俺は危ないと感じると横へ避ける。
避けると同時に炎の球がゴブリンに直撃していた。
「あぶねぇ・・・」
俺はキュウルの方を見ると、失敗したのが悔しかったのかとんがり帽子のツバを掴んで顔を隠している。
「ほらぁ、まだ二匹残ってるよぉ。商隊には迷惑かけないように早く倒すんだ」
ピエールさんは俺らを見ながら、まだ敵が残っているから油断するなと言っているようだ。
どうしたものか、、、、皆が自分の動きしかしていないから連携がめちゃくちゃだ。
「エルクは俺と左の奴に斬りかかるぞ!パショネとキュウルは右だ!」
「あ、ああ、分かった!」
「了解」
「りょ、りょうっかーい!」
俺は仲間の攻撃を喰らうのも喰らわせるのも嫌で、咄嗟に指示を出す。
ゴブリン相手に苦戦しながら、俺らは何とか撃退する事が出来た。
互いの連携ミスもあってか、気まずさが漂う。
「あ、あの、ピエールさん」
「なぁに?」
ピエールさんはニコニコしながら、パショネに振り向く。
「今のって減点になっちゃいます?」
「それを教えるのはご法度だねぇ。それに今は依頼中だ、試験の内容より依頼にしっかり当たる方が僕はいいと思うけどねぇ」
「あああ、ごめんなさい!」
慌ててパショネは商隊の列に戻る。
パーティ適正を見るための試験で、初っ端からこんな失態を犯せばパショネじゃなくても気になってしまう。
「まぁまぁ、みなさん、パーティを初めて組んだというのもありますから、落ち着いて下さいね」
「ごめんなさい、ハムルさん・・・」
パショネとエルクは自分達の事を恥じると周りを警戒する。
キュウルも喋らないが、先ほどの事を気にしているのか俯きながら歩いている。
思えばこの異世界に来てから俺は誰かと一緒に敵を倒すなんて事はしたことない。
おそらくだが、パーティの他の皆もそうなのかも知れない。
改めて、俺は師匠の言っていた言葉を思い出す。
「相手を良く見ろか…」
護衛の馬車が動き出し、しばらく歩くと再び殺気を感じる。
「来た・・・」
「分かるのかい?」
俺は殺気に反応した事を言葉に出す。
隣りにいたエルクがそれを聞いていたのか、俺に聞き返してくる。
「ん、ああ、何となくな」
「京の言うとおり!ゴブリン2匹!」
俺の勘は当たっていたのか、馬車の前方を歩いているパショネが敵の存在を教えてくれる。
「みんな!俺はみんなより少し遅れて飛び出す。気にせず先行してくれ」
「分かった!」
「りょうかい!」
俺はみんながどう動くか気になり、あえて遅れて出る事を宣言する。
パショネは敵を捕捉すると抜剣し敵へ向かい一直線に突っ込む。
それを見たエルクは、剣を抜くと一歩遅れて敵へと向かう。
キュウルの方を見ると、パショネとエルクが飛び出した事も確認せずに詠唱開始している。
ガキンッ
予想通りというかパショネとエルクはゴブリンを前にして剣が被ってしまう。
そしてタイミング悪く、キュウルの詠唱が終わりファイアーボールが発射されてしまう。
パショネとエルクはギリギリの所でそれを躱す。
「ギャアアア!」
キュウルのファイアーボールが敵に当たる。
俺は残り一体を背後から近づき、敵を屠る。
「あー、またやっちゃったー、ごめんエルク!」
「いや、いいんだ、こちらこそ」
「ごめん…」
敵を倒すと三人とも謝りあう。
この後、敵と何度か遭遇したが、互いが互いの足を引っ張り合い連携が上手く行かず、その度に謝り合うのを続けた。
日が傾いたので野営を出来そうな場所を見つけると、商隊の皆さんと野営の準備を行った。
野営の準備が終わり、俺らは食事へとありつけたがその面持ちは皆暗かった。
「はぁ、、、うまく行かなかったなぁ・・・」
「ごめん…」
「そ、そうだね、でも次はうまく行くよ!」
落ち込むパショネとキュウルを励まそうと声をかけるエルク。
きっと気持ちだけを取り繕っても駄目だろう。
俺は意を決して、口を開く。
「なぁ、みんな」
俺が声をあげるとみんな顔をあげる。
「俺が思った事を口にしていいか?自分もダメなところはあるが、、、良くする為に言っておいた方がいいと思うんだ」
「そうだね、意見をいい合うのは良いと思うよ」
エルクは賛成してくれた。
「お願い!」
「頼む」
パショネとキュウルも同意してくれる。
「パショネは、エルクやキュウルを見ずに敵が間合いに入ると同時に突っ込んでると思う。エルクは逆だ、パショネが動いたと同時に動くから攻撃が被ると思うんだ」
「ごめん、、、今までソロでやってたから周りを見る癖がなくて…」
「俺は盾しかまともに使えないから、何かやらないとみんなの足を引っ張ると思って…」
二人は項垂れる。
「キュウルは詠唱に夢中になりすぎて、味方も相手も見ていない。自分のタイミングで魔法を撃ってるように思える」
「その通り…。まだ余裕ない、ごめん…」
「いや、こちらこそ。俺も何も出来ていないのに、口だけ挟んで申し訳ない」
俺もみんなに辛辣な事を言ったのもあり、頭を下げる。
「初めての連携だ、こういうミスは良くあるねぇ。個々に指摘するまでもなく、京くんが言ってくれた通りだよぉ。とは言え京くんもここまで気付いていたのに戦闘中に指摘してあげれば良かったとは思うよぉ」
ピエールさんは俺らの様子を見てそう話す。
俺への指摘もごもっともだと思い、軽く凹む。
「じゃあ、この現状を打開するにはどうしたらいいか、誰か分かるかなぁ」
「んー、指示する人が必要ってこと?」
頭をかしげながら、パショネがピエールさんに答える。
「正解だ、パショネくん」
「パーティには必ずリーダーが必要だ。何故なら、あらゆる局面でパーティメンバーはそれぞれが出来る事が限られている。それを上手く使う事でパーティは初めて連携という機能を果たせるんだよねぇ。そうは思わないか、京くん?」
ピエールさんは俺へと無理やり話を振る。
まるで意図があるかのような素振りだ。
「はぁ、まぁ、俺もそう思いますけど」
「これは試験とか関係なくの話だけど、僕が思うに京くんはリーダーに向いているとは思うよぉ。リーダーに必要な資質は二つ。一つ目は的確な分析と判断」
「あと一つは?」
「パーティメンバーからの信頼だよぉ」
「借りにピエールさんが前者の通りだとして、後者は当てはまるかどうか・・・」
固有スキル【理解】のおかげで分析は出来る。
判断も、先ほどピエールに指摘された通り戦闘中に分析したものを指示すればいい。
けれども、信頼があるかは判断が付かない。
「私は京がりーだーでいい!」
「僕も京がリーダーが一番合ってると思う」
「リーダー、お願い」
みんな、俺に向かって期待の眼差しをコチラに向けてくる。
成り行きだが俺がリーダーでいいのかと言いたくなるが、皆は俺をご指名してくれた。
ここで断って、皆の試験結果に影響しても悪いしと思い俺は引き受ける事にした。
「分かった、今日から俺がみんなのリーダーをやる。この依頼中だけどな」
「おめでとう、りーだー!」
「頼むよ、京!いやリーダーかな」
「リーダー」
「さて、僕からのアドバイスはお終いだ。これ以上、続けると僕が監査官失格になっちゃうからねぇ」
「ありがとうございます」
俺は素直にお礼を告げる。
「おやおや、意外だねぇ。もっと皮肉屋と聞いてはいたが思ったより素直じゃないかぁ。君が女性ならばこの場で熱い抱擁をしていたよぉ」
「はぁ」
ピエールさんなりの励ましだろうか。
ともかく試験は始まっている。
今、出来る事はしておいた方がいいだろう。
「じゃあ、みんな早速だが、連携の確認をしよう」
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