013_ミズガルズ公国へ到着
「コラァァァア、いつまで寝とる!!」
「ひっ」
「もう昼になるぞ。今日から世話になるミズガルズ首都のギルドに挨拶だろうが。さっさと支度をしろ」
ミズガルズ公国の首都に着いた俺らは、すぐに宿を取り眠りについた。
人生で初めての旅にモンスター討伐や野営など、かなりの疲れが溜まっていたせいか寝坊をしてしまった。
時計がないから寝坊なのかどうかも分からなかったが。
欠伸を噛み殺しながら支度を行い、待っている師匠の元へと向かう。
「さて、これから冒険者ギルドに行くが、本来俺はここを拠点に活動をしている」
「そうなんすね。最初に言ってた通りここでしばらく修行してから旅でしたっけ」
「まぁ、そうなるな。ここならば冒険者ギルド依頼を受ければ、初級から中級のモンスターを相手に出来る。お前さんの修行には丁度いい」
「ちなみに、俺がここに来るまでに倒したモンスターの中に中級はいました?」
「いない」
「一匹も?」
「いない」
冒険者になったばかりの俺がいきなり中級モンスターを相手にしている訳はない。
分かってたとはいえ、先の長さにため息を着いてしまう。
「まぁ、気落ちするな。お前さんはかなり飲み込みが早いし、生きるのに必死だ。そういう奴は早熟だし大成する者も多い」
「大成しなかったら?」
「まぁ、死ぬんだろうな」
「もう少し弟子のモチベーションも考えて下さいよ」
「ハハハ、そういうな。そうそう死なないように俺が鍛えているんだから」
そんな事を話しながら歩いていると見た事がある看板、冒険者ギルドが見えてきた。
「あら、ハルエル様?」
「オウ、今戻ったぞ!」
師匠が声をあげるとギルド内にいた他の冒険者達がざわめく。
師匠のそこそこ名が通っているというのは半信半疑だったが、周りの反応を見るからに本当らしい。
「オオオ、ハルエルじゃねーか!」
「よぉ、ヒッグ。今、戻ったぜ!」
ヒッグと呼ばれた人を見ると、それは師匠にも負けず劣らずの分厚い筋肉で鍛え上げられた大男だ。
師匠とヒッグさんは、感動の再会に抱擁し合っている。
「ムキムキなおっさんが抱き合ってるよ・・・」
小声でそっと呟いてしまう。
「じゃあ、例の依頼は無事に…」
「ああ…、おそらくは…」
抱き合っていると思ったら、何かを囁いている。
一瞬、気持ち悪いと思ったが、どうやら内緒話をしているみたいだ。
ヒッグさんはくるっと俺の方へ向き直ると、話しかけてくる。
「じゃあ、おめーさんが京ってわけだな。ハルエルの弟子になったのか?」
「は、、、はい!岡崎 京です」
「なるほどなぁ、色々と話は聞いてるぜ!」
ヒッグさんは物知り顔でこちらをじろじろと見ると、ニカッと笑う。
「まぁ、色々と任せとけ!」
そう言うとヒッグさんは冒険者ギルドの奥の部屋へと入っていった。
何が?と思ったが、代わりに師匠が答えてくれた。
「明日になれば、分かるさ。まずは魔石と素材の換金だな。頼むぜ」
「は、はい。またしてもすごい量ですね。これはハルエル様が?」
「いいや、こいつさ」
「噂以上ですね、ハルエル様の弟子は。それでは京様、念の為右手をお願いします」
受付嬢に言われるまま右手を差し出し、鑑定石へと手をかざす。
俺は鑑定が終わるまで、ヒッグさんが言っていた噂について考えていた。
「冒険者ランクF 京様ですね。この討伐数でランクEに昇格になります。換金はもう少々お待ち下さい」
「え、ランクE?」
ぼーっと考えているとそんな事を言われ聞き返したが、受付嬢は換金作業へ移ってしまい流された。
量が量だけに受付嬢は忙しく捌いていく。
今話しかけても作業の邪魔だなと思い、俺はギルドを見渡す。
さすがテンプレ異世界の通りの冒険者ギルドだけあって、屈強そうな人たちばかりいる。
しかし彼らはこちらを伺ってはいるが、誰一人俺へと近づいて来ようとしない。
「お待たせしました、京様。合計で480szになりますが、いかがしましょうか」
「あー、例えば今回売るもので残しておいたものとかありますか」
「そうですね、特にありませんね。知り合いの鍛冶師や服飾師などがいれば素材は残しておいたほうが格安で武器・防具を作ってもらえたりはしますが、京様はまだこちらに来られたばかりですから知り合いはいないと思います」
知り合いがいないと面と向かって言われると、傷つくものがある。
だが、事実その通りなので受付嬢の言うとおりにする。
「じゃあ、全て換金でお願いします」
「分かりました」
受付嬢は金が入った袋を机の上に置いてくれる。
俺は中身を確認すると、それを手に入れる。
「それでは、ありがとうございました」
「あの・・・ティナです。しばらくはこの街にいられるとの事だったので名前をお伝えしようかと」
報酬を手に入れた俺は挨拶を済ませ、冒険者ギルドを出ようとすると受付嬢に名前を告げられる。
するとこちらを伺っていた冒険者達が、再びざわめく。
こう何度もざわめかれれば、少しずつ気にならなくなってくる。
「あー、これは失礼しました。俺の名前は京です。よろしくお願いします」
俺は受付嬢に礼儀の正しさを教えられたような気がして、慌てて返事を返す。
名前を告げると、今度こそ外へ出る。
外に出ると先に外で待っていた師匠がニヤニヤとこちらを見てくる。
「ほほー、これはこれは」
「受付嬢に挨拶されただけで周りのあの反応は、先が思いやられますよ」
「いい事も悪い事もあるのが、冒険者よ。ところで、お前さん俺が前に言ってた古銭の換金について覚えているか」
「あ、すっかり忘れてました!」
「そうか、報酬が手に入ったとはいえ金は多くあった方がいい。せっかくだし近くにあるから換金しよう」
俺は師匠に連れられ、古物商の建物に入ると古銭の換金を依頼をする。
店主は快く引き受け、何やら色々と調べていた。
こんな古銭なんか引き取って価値があるのかと思っていたら、師匠が説明してくれる。
こういうのは素材が銅や銀だったりするから、一度素材を元に戻し再鋳造すれば転用出来る。
ただ古物商ではそれに当てはまらず、アンティークとして取り扱い物好きな金持ちや貴族が買いに来るんだそうだ。
古物商は俺の古銭を調べ終わると、金額を提示してくれた。
結果として、500szになった。
ポカンとしていると師匠にこんなもんだろうと言われたので、この金額で承諾する。
モンスターの討伐報酬や今回の古物商の換金の合計で1010szだ。
先ほどの古物商での待ち時間の間に、師匠から貨幣の価値について教えてもらった。
まず単位だが、下のようになっているそうだ。
bz(ブロンズゼニー/銅貨)
sz(シルバーゼニー/銀貨)
gz(ゴールドゼニー/金貨)
pz(プラチナゼニー/白金貨)
これらの通貨は各国共通になるそうだ。
ちなみに、各通貨は下記のようになる。
1sz=100bz
1gz=100sz
1pz=100gz
さらに、俺の価値観で現代の価値に換算すると。
1bz=1円
1sz=100円
1gz=10,000円
1pz=1,000,000円
と言ったところだ。
つまり今の俺は現金で10万円近く持っているという事になる。
中々に小金持ちだなと嬉しくなり、俺は金の入った袋を抱きしめる。
「なぁ、ところでよお前さん。せっかく金が入ったんだ武器と防具を見に行ったらどうだ」
「あぁ、確かに。どこにあるんです」
「んー、教えてもいいんだが、お前さんの自活もあるから1人で買いに行ったらどうだ」
確かに、今後も買い物する時に師匠がついてまわるのは嫌だな・・・。
「お前さんがいいなら、毎回買い物付き合ってやるぞ」
また顔に出てしまっていたのか、ニヤニヤしながら師匠はこちらを見てくる。
「い、いえ、結構です!自分で買い物してきます」
俺はこれ以上、付きまとわれても困るなと思い、そそくさと師匠から離れる。
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