113_王国と帝国の戦争
「いい景色だね」
バルト平原にある小高い崖の上から、三上賢三は眼下を見下ろす。
下には赤い旗を掲げる帝国軍と青い旗を掲げる王国軍が戦っている。
「所詮、あれは人同士の戦。勇者同士で殺し合いが始まらなければ我らの目的も達しない」
影から人が現れ、三上に応える。
「彼らは必ず殺し合いを始めるよ。何の為にここまでお膳立てをしたのか」
三上はそう言うと帝国軍の本陣を見つめる。
「上手く行けば勇者二人を始末出来るか。奴らの力は強い。故に殺した際に受ける我らの恩恵もでかいだろうな」
「ああ、そうさ。勇者がいかに優れていても相性がある。あの二人の武に特化した力が無くなれば他の勇者を殺すのも楽になるよ」
三上は笑い、また眼下を見る。
「誰だ、お前は!」
後ろから声をかけられ、振り向くと甲冑を来た騎士が数名いる。
持っている盾のエンブレムなどから王国の騎士だろう。
「やれやれ」
戦争が開始され、索敵の為に動いているのだろう。
「君達も運が悪いね」
三上は杖を掲げると魔力を高める。
「魔法使いか!」
騎士達は抜剣し、三上へ向かい構える。
三上はそれに構わず、風の魔術を発動させる。
「詠唱がない!?魔術だというのか!」
風は刃となり、騎士達へ襲いかかる。
「ぐああ!」
「うわぁぁぁ!」
「やめてくれ!!」
風の刃を食らった騎士達は、あるものは首を、胴体を切り刻まれ絶命する。
「くっ、おのれ!」
咄嗟に盾でかばった騎士がそう呟く。
他の騎士達と比べ、甲冑の意匠がこだわっている所を見るとこの部隊の隊長だろう。
その騎士は盾で三上の魔術を牽制しながら、擦り寄る。
「貴様も死ね」
「え?」
騎士は背後から声が聞こえ、振り向くと首を斬られ絶命する。
その男は影から騎士の背後に現れ、首を斬った。
「邪魔者は消えたね、さぁ勇者が出てくるまで見物しようか」
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バルト平原。
王国側本陣。
「失礼します!」
建てられたテントの外側から大きな声でそう聞こえると、騎士の一人が入室してくる。
「報告します!我ら王国の兵は帝国兵と衝突。当初は地の利により、優勢を見込んでおりましたが帝国兵はその数により次々に王国の兵たちを倒しております」
テントに集められている王国の貴族たちに動揺の声があがる。
「えぇい、細かい事はいい、どうなっている?」
大臣が一声かけると、報告に来た兵は慌てて説明をし直す。
「失礼しました!我が軍は劣勢!当初二万おりました兵も、その数を6割程に減らされています!帝国の方も数を減らしましたがまだ三万以上は保有しております!」
「ぬぅ、、、まずいですぞ」
それを聞いた大臣に焦りの色が見える。
報告を聞いた、他の貴族達も小声で話していたのを辞め、隣にいる者同士でどうすれば良いかを話している。
貴族の誰かから勇者の力を借りようと上がる。
他の者達も賛同し、皆一ツ橋一歩へ向け語りかける。
「静まれぇっ!!」
その様子を静観していたアスガルド王が一声上げる。
「帝国に攻められるなど、長い王国の歴史でもそうある事じゃない。確かに我らが戦争に不慣れなのは重々承知しているだろう」
「しかし、このままでは我が軍は壊滅し、それこそ本当に侵略されかねませんぞ」
「とはいえ、これは我らの問題。それに勇者を巻き込むなど言語道断じゃ!」
アスガルド王は当初、勇者をしかるべき時が来るまでは王国へ置いておきたかった。
それは他国へ渡り、国の思惑や人の問題に巻き込まれ命を落としてしまう事を恐れていたからだ。
何よりも歴史と勇者を重んじている王は戦争に一歩を巻き込みたくないと考えていた。
「アスガルド王よ。戦争は確かにあなた方の問題でしょう。しかし、相手は二神。理由もなく王国へ牙を向けるなど、、、俺は彼を止めます」
「しかし!」
「それに王国は、僕がこの世界で生きていく手助けをしてくれた。城の人も王国の民も。それが今襲われているのをただ黙って見ている事は出来ない!」
一歩は、二神の策略で王国が蹂躙される事も、王国の人間が失われるのを耐えられなかった。
その思いに、貴族たちは乗っかる。
「そ、そうですぞ、王よ。これは勇者の戦いでもある!」
「勇者は我らを守ってくださるのです、勝利は間違いないでしょう!」
貴族たちは自らが助かろうと必死に王に向かい弁明する。
「しかし、本当によろしいのですか、一歩さん?敵とはいえ、二神さんは同じ勇者であり、同郷の者と戦えるのでしょうか?」
王の横にいたアンナ姫が、一歩へ問いかける。
「・・・ええ、出来れば戦いたくはない。ですが目の前で人が殺されようとしているのをただ見てるのは俺には出来ません。何かすればそれを小さな波となり、新たな火種になるかもしれません。ですが何もしなければ、それは後悔しか生まない」
一歩の決意は固く、それ以上アンナ姫は何も聞かなかった。
「父様、いえアスガルド王。第1勇者 一ツ橋一歩様の決意は固い。これは戦争ではございますが、一歩様の戦いでもあります」
アスガルド王は深く目を瞑り、そして口を開く。
「良いだろう。恥ずかしながら我が王国へと加勢して頂けますか、勇者殿」
「分かりました、第1勇者の俺は王国へと力を貸します!」
それを聞いた、王は深く頭を下げ。
空気を察してか、都合の良い事しか言わない貴族たちも同様に頭を下げたのだった。
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