110_魔王の本気
「タフだな。あんた」
魔王は口の血を拭きながら立ち上がる。
「ははははは。最高だな、京八よ。この世界に転生してからというもの、ここまで追いつめられたのは初めてだ!」
魔王はとても嬉しそうに俺へと語りかけてくる。
「分からねぇな。何であんた、魔王なんかやってるんだ?別に殺したくて魔王をやってる訳じゃない。ここに攻めてきたのも勇者を殺すという義務だけで来ているように感じる」
「義務・・・か。なるほど勇者には、そこは伝えないようシステムがそうなっているようだな」
「システム?」
「神は言っていた、この世界に勇者が現れるからそいつらを全員始末しろと。さすれば願いを一つ叶えられるとな」
「願い?まさか、そんな!?」
「お前は知っているはずだ。転生させられた時の事を。あれは言葉なんかではなく、確かにその真実のみを突きつけられるような感覚」
「なら、魔王たちはその為に勇者を殺そうと動いている訳か!」
「くっくっく、ははははは!お前は実直だ。勇者の中には既にそれに気づいて動いている者もいるのではないか」
俺には思い当たる人物がいた。
二神だ。
「くそっ!!何て世界だよ、ここは!」
「そう言うな、こうして闘いを愉しむ事が出来る」
「引いてくれと言っても、引かないよな?」
「ああ、無理だ」
魔王は再び剣を構える。
「すまぬ、遊んでいた訳ではないのだがな、さらに本気を出させてもらう。我の固有スキル【壱意専心】を解除し、SPを攻撃と防御に回す」
すると魔王の気配が変わる。
先ほどまでの突きつけられるような恐怖はなくなる。
代わりに威圧感が凄まじくなる。
「往くぞ!」
魔王の一撃を食らう。
直前で防御したから真っ二つにならずに済んだが、全く見えずダメージも深い。
「ああああAAAAAh!!」
飛ばされながらも反転し剣を地面に刺し勢いを止める。
だが、もうすでに目の前に魔王が迫る。
「あああ!!」
我武者羅に剣を振り、何とか攻撃を止める。
再び迫り、何とか見切れた俺は攻撃を受け止める。
防御の瞬間に、剣にたっぷりと魔力を込めたおかげで折られずに済んだが、剣を受け止めた衝撃で地面が僅かに沈む。
「何て馬鹿力だ!」
「・・・これはまだそうでもないぞ。ならっ!」
受け止めた剣にさらに力があがる。
俺は受け止めた剣を支えきれず手を下げてしまう。
そして右肩口から斬られる。
「うううAAAAAAAh!」
痛みに耐え、距離を取る。
[理性]スキルにおかげか、痛みはきっちり感じてくれる。
右肩を斬られたせいで剣を持つ手が上がらない。
左手で拳を作り構える。
相手を見て、何とか躱す。
「何て速さだ・・・!それに攻撃が重い」
魔王の攻撃を躱し、龍の左手で攻撃を捌く。
「そっちの腕が使えなければ、攻撃に周る事は出来ぬか」
魔王は執拗に攻撃の手を止めない。
「これはどうだ!」
また威圧感が増す、SPをさらに溜めたようだ。
魔王が駆け、攻撃を与えてくる。
俺は寸前の所で躱す。
躱した所を見ると、地面が抉られている。
「くそ!まだ強くなれるというのか!」
「貴様はまだSPを理解していない。魂の力とは万能。扱えれば如何ようにも出来る。例えば、、、このようにな!」
魔王は剣を振るい衝撃波を飛ばす。
地面を抉りながら、俺へと向かう。
「ちっ!!」
俺は躱せず、左手で防御する。
勢いが強すぎて俺は後方へと飛ばされる。
「ぐあああっ!!」
俺はボロボロになりながらも立ち上がる。
魔王は俺に構える隙もなく、接近する。
「喰らえ!」
魔王の剣が横一閃に振るわれ、俺は尻もちを着くような形で避ける。
地面に這いつくばりながら、魔王の攻撃を躱し続ける。
「くっ!」
足に力を込め、体制を立て直し距離を取る。
「惜しい男だ・・・」
魔王がこの闘いの終局に寂しさを感じているのだろうか。
こちらへと接近し、剣を振り下ろす。
「終わりだ!」
凄まじい剣圧が俺へと迫るが、攻撃が当たる寸前で何かが俺を守ってくれた。
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