010_公国への旅
「さ、準備は出来たか?」
「準備って、、、俺、ほとんど荷物ないんですけど」
「まぁ、そうだな!あれだ、心の準備って奴だよ」
「昨日の修行で十分覚悟を決めましたよ」
「ハハハ、そうだな」
師匠が話していた通り、翌日になり俺らはミズガルズ公国に向かう。
ミズガルズ公国は商業と貿易が盛んな国で、この街よりもさらに多くの人や店が並んでいるらしい。
ここが王国の国境付近でもあるから馬車を使えば2日程着くらしいが、師匠が修行も兼ねるとの事だったから徒歩で行くことになった。
「いいか、大抵の敵には奇襲が有効だ。初手で勝負がつく場合もある」
「つかなかったら?」
「まぁ、あとは実力だな。お前さんの場合はまだ弱いから大抵負けるから、経験が浅い間は気配を消して奇襲に専念するんだ」
気配を消す、、、うーん、存在感を薄くするという事なのか。
とりあえず試してみる。
「お、意外と様になってるじゃないか。お前さん、暗殺者か何か?」
「そんな訳ないですよ」
「ハハハ、まぁそうだろうな」
街道を歩いていると、とあるモンスターを発見し師匠は指を指す。
ヌー、牛に似たモンスター。
性格はおっとりとしていて、その肉は上手く食料として活用されている。
初級冒険者の多くはこいつを狩ることが多く、一番お世話になるモンスターだそうだ。
しかし、通称暴れ牛と異名されるのもあり、一度怒らせてしまうと手がつけられない。
俺は師匠に促され、ヌーを狩る事にする。
気配を消し、一気に距離を詰めて、そこから致命傷を与える・・・頭の中でそのイメージを膨らませる。
言うは簡単だが、前世であんなサイズの動物を実生活の中で普段目にする事もなく生活してた俺に、簡単に倒せと言うのは酷だ。
だが師匠は倒せると判断したのだろう。
狼との戦いを思い出し、覚悟を決める。
やらなければ、生きてはいけない。
狙うは首。
背後から奇襲といえど、寸前で相手が身構えるだろう…
「よし、、、行くか!」
覚悟を決め、気配を消しながら徐々に距離を詰める。
剣をしっかりと握りしめ、ヌーとの距離が近づけば近づくほど速度を上げる。
あと一歩。
「今だ!」
思い切り地を蹴り、頭上からの一撃をお見舞いする。
しかし、そう見せかけて、寸前のところで着地し首目掛けて袈裟斬りを、お見舞いする。
「ブモォーーッ!」
適当なフェイントによく引っかかってくれたと安堵するも、傷の具合から攻撃が浅かった事を知る。
ヌーの目つきが変わり、目の前にいる京に向かい、角による一撃を喰らわせようとする。
俺はすかさず剣の平を正面に構えて防御を取る。
攻撃を受け止め、体が浮く。
昨日の修行での感覚を思い出し、俺は受け身を取る。
よし、このまま着地後にもう一撃!
ざっ
着地時に着いた足をバネにして、前へと踏み出す。
距離を詰め、渾身の一撃をお見舞いする。
先ほどの一撃とは違い、ヌーは悲鳴を上げなかった。
命を奪われる悔しさを目に蓄え、こちらを恨むように見据えたまま、倒れる。
「ウィーウルフの時より強くなってるじゃねぇか!やっぱ、お前さんは実戦で強くなるタイプだわ!」
「はぁはぁ、いやこれでも必死なんですよ。やらないと生きてけないから」
俺は肩で息をしながら、師匠の感動の言葉に相手する。
「まぁ、そうだな。一、冒険者としては優しくしてやりてぇが、師匠としては弟子が自活出来るまでは鬼にならねぇとな」
「もう十分、鬼っす」
「さて、モンスターを倒したら、解体だな。まず魔石を取り出す。いろんなモンスターがいるが、まぁタイプ別に解体していけば大体の魔石の位置ってのは覚えてくさ」
「なるほど」
師匠はテキパキと解体用のナイフで、ヌーの皮を切り裂いていく。
つい先程まで生きていたのだ、師匠がナイフで切り込む度に出る血が俺はとても気持ち悪く感じる。
「まぁ、慣れないうちは気持ちのいいもんじゃない。吐く奴もいるくらいだからな。・・・っと、これがヌーの魔石だ」
俺は師匠には悪く思ったが口元を押さえながら、質問をする。
「その、例えば慣れない奴はどうするんですか」
「ギルドに依頼だな。ただし、倒したモンスターの価値から手数料取られるからあまりおすすめはしない。それでも、大量発生の場合はギルドに依頼する事があるな」
「大量発生?」
「あぁ、稀に繁殖期で大量に発生する場合がある。大抵、そういう場合はさばけない量のモンスターを仕留めるから依頼する事になる。そういった時は専用の討伐クエストになるから解体料はまけてくれるな」
師匠は話しながらも手際よく解体を進めていく。
見ていて、気持ちのいいものではないが早く慣れるためと自分が解体する為に目を閉じずにいられた。
「次からはお前さんもやるんだ、こういうのは実際にやらないと覚えていかないからな」
「ええ、わかりました」
この後に俺の天敵でもあるウィーウルフと遭遇し、戦う事になった。
一番最初の戦いと比べると苦戦することなく、討伐する事が出来た。
その後、師匠に教わりながらウィーウルフの解体を行う事となったがかなり手こずった。
「フゥー」
「ハハハ、ため息か」
「まぁ、やっと横になれるんでそのくらいいいじゃないですか」
枯れ草などを集めた、簡易的なベッドに俺は横になる。
寝ている時の見張りはどうすると師匠に聞いたが問題ないそうだ。
というのも、こうやって冒険者が狩りなどで野宿出来るようにモンスターを寄せ付けない道具があるそうだ。
師匠はこれを魔除けの陣と言って、何かを施していた。
「まぁ、そうだな。お前さんはよくやってるよ、無理やり弟子として扱ったが、ここまで一生懸命になってくれるとはな。師匠冥利につきるぜ」
一生懸命か・・・城から逃げ出した俺が生きるためとはいえ、ここまで一生懸命に生きてるとは。
「褒めたところで、俺は急には強くなりませんよ」
「ハハハ、それでこそお前さんだ。魔除けの陣を貼ってるが、効果は夜明けまでだ。早く寝よう」
「師匠、、、いや、おやすみ」
「おう、しっかり寝ろよ」
そう言いながら師匠の方とは、反対方へと寝返りをうつ。
前世での生活に全うな挨拶などしてなかった、、、ちゃんとしたというのは数年ぶりだ。
こうも色々な事があるが、俺は冷静に受け止め、こうして生きている。
俺はそう変化してきている、この世界に来てから、徐々に。
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公国を目指す旅が始まって、7日は経った。
師匠との旅はある程度、俺が当初想定していた通りのものだった。
街道を進み、倒せそうなモンスターが出現すれば俺に狩らせ、解体させる。
日が傾けば、野営の準備を開始し、倒したモンスターで料理を行う。
料理もそうだが、野営の準備なども今は俺が率先して行っている。
その理由の一つがスキルだ。
俺は公国を目指し旅を開始してから、色々スキルを覚えた。
[体術]
[サバイバル術]
[料理]
[環境適応]
この世界はゲームの世界と同じく、スキルという形で技能を習得しそれを生活に反映出来る。
俺がウィーウルフを倒す時に覚えた[剣術]なんかは、今までの人生で剣など握ったことがない俺が一丁前に触れているのがいい例だ。
当初はあり得ないと思っていたが、こうして生きていられるのもスキルのおかげだろう。
師匠にも確認してみたが、俺はどうやら人と比べるとスキルの習得がかなり早いそうだ。
それもスキルを習得すれば、必然とスキルのレベルがⅢまで上がっている。
思い当たるのは一つだろう。
晩飯を食べた後は、師匠との修行を行う。
未だに王国の街で行った師匠への一方的な打ち込みのままだった。
師匠曰く、スキルに頼っては本当の実力は上がらないだそうだ。
夜も更けると簡易的なわらベットに寝そべる。
弱音や愚痴などはこぼしまくっていたが、それでも逃げようとは思わなかった。
「ウィーウルフ4体同時。今のお前さんなら、やれるさ」
「師匠、数の計算できてます?昨日、2体同時がなんで倍になってるんすか」
この人は・・・と思いながら、腰の剣を抜く。
今までの反復だ。
単に数が倍になっただけ。
やることが倍になっただけ。
そう自分に言い聞かせると、4体の群れを観察し、一瞬動きの遅い1体に目をつけると距離を詰める。
狙いは首。
ザシュン
手応え有りだ。
すかさず、次の攻撃対象へ向けて切りかかる。
ザシュン
残り2体となったウィーウルフ達が一斉に襲ってくる。
1歩下がると同時に半身になり、タイミング合わせて横から蹴りを喰らわせる。
蹴りの勢いのまま、体を回転さえ剣をなぎ払いもう1体に切りつける。
ザシュッ
蹴った最後の1体との距離を詰め、とどめを刺す。
ザシュッ
「おぉー、すばらしい」
我ながら綺麗に倒せたと思っていると、師匠は満面の笑みで褒めてくれた。
「こう毎日モンスター相手に戦わされてれば、剣捌きと体捌きが、何となくわかってきた気がしましてね」
「にしても、お前さんの飲み込みの早さは異常だな。教えてるこちとら、助かるんだが」
師匠にそう言われるが、俺は心のなかで思う。
おそらく、固有スキル 理解のおかげだろうな。
ステータスオープン
名前:岡崎 京
職業:ニート
年齢:25
LV:8
HP:58
MP:36
SP:??
力:23
体力:21
器用:27
敏捷:29
知力:28
対魔:24
幸運:30
【固有スキル】
理解(物事を識ることによって理解する。理解した対象がスキルの場合、スキルLv3までを獲得出来る。)
【スキル】
剣術Ⅲ
体術Ⅲ
サバイバル術Ⅲ
料理Ⅲ
環境適応Ⅲ
【称号】
転生者
魔物殺し
初級冒険者
「さぁ、見えてきたぞ。ミズガルズ公国だ」
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