108_勇者の宣言
大聖堂の地下に隠された転移魔法陣。
賢者の始祖と勇者が作ったらしい。
「話には聞いているんですけど、実際使われたのは数度。私は初めて使います」
賢者は魔法陣へ向かい、魔力を込める。
「まぁ、安心するネ。誰か一人でも助けに行ければラッキーヨ」
「ラッキーって、そんな不吉な事言うな。他の三人死んでる事になってるだろ?」
「義兄さん・・・」
七乃花は怖がり、俺の服を掴んで離さない。
「はぁ、やれやれ」
俺らは魔法陣の上へと乗る。
魔法陣の光が強くなり、その輝きが部屋を満たす。
「転移・・したんだよな?」
目を開けると先ほどとは似た雰囲気の部屋にいた。
部屋の雰囲気は似ているが、先ほどの部屋とは別の部屋だ。
「ええ、どうやら成功のようですね」
他の二人も無事のようだ。
手足がなくなっていないか、きちんと確認をする。
すると扉が開かれる。
「だ、誰だお前たちは!」
衛兵の一人だろうか。
ひげもじゃの顔に、重そうな鎧と槍。
ドワーフだ。
「すみません、驚かせてしまいましたね。私はナツ。ドワーフの救援を受け、神国から参りました」
「救援?神国のナツって、、、賢者殿ですか!?」
ドワーフは驚いて槍を手放す。
「ええ、そうも呼ばれますね」
「た、助けが来てくれた!」
ドワーフは俺らの事を放おって、どこかへ報告にしていなくなってしまった。
「ドワーフってあんな感じなのか?」
「まぁ、そうですね。職人が多いと言われるだけあり、一つの事に集中しやすい性分ですね」
「ああ、なるほど」
すると、ドタドタと音がし誰かを連れてきた。
「おお、これは賢者殿!」
「おや、テルル殿でしたか?」
「ええ、そうです!テルルです!」
「状況はどうなっているのでしょう。ボルンハルト王も六花殿も無事でしょうか?」
テルルと言われたドワーフは渋い顔をする。
「何とか、無事・・・です。今は城にいるもの達を避難させています」
テルルはこちらへと促すと、先を案内してくれる。
どうやら転移先はドワーフの城の中だったらしい。
ドワーフの城は大きな窪地作られている。
窪地の中には城下町もあり、さらにそこから各所に地下道を作ってあるので窪地から逃げ出す事は可能だそうだ。
「魔王が城へと到達しまえば、全滅・・・という訳ですか」
「はい、それを何とか塞き止め、魔王の進行を遅くしているという状態です」
「しかし、見たものを恐怖で縛る相手にどうやって?」
テルルさんは立ち止まると、ここですと言い扉を開ける。
扉の中には、六花と威厳のあるドワーフが横に一人立っている。
「六花ちゃん!」
七乃花が駆け出すが、横に立っているドワーフに止められる。
「今は近寄らないでくれ!」
「しかし、助けないと!」
よく見ると六花は額に大きな汗を為、何かに集中している。
「おそらく、、、彼女は戦っているのではないでしょうか」
賢者はそういうと何かを始める。
大きな水球と小さな水球を魔術で作った。
「もうちょっとお待ち下さい・・・!」
すると小さな水球を操作すると、部屋の外に出していく。
「よし、いいでしょう」
そういうと水球に何かが映し出される。
「遠見の魔術か!」
「ええ、これならば、魔王の姿を写す事は可能でしょう」
映しだされた光景を見る。
一人の男が、次々へと湧き出るゴーレムを相手に戦っている。
「六花ちゃん!まさかこんな数のゴーレムを!」
「彼女は必死に魔王を足止めしてるネ」
六花は辛そうな顔を浮かべながらも、必死に戦う。
「彼女は我らドワーフの為に、避難する時間を与えてくれているのだ・・・!」
ドワーフの王が悔しそうに呟く。
「だいじょうぶ・・・。まだ頑張れるよ!」
「おい、大丈夫か、六花!?」
「六花ちゃん、無理しないで!」
このままでは六花のSPを削りながら、魔王が近づいてくれるのを待つしかない。
しかも、城へと到達した時には、みんな恐怖で縛られ動けなくなる。
そうなれば避難は間に合わず、ドワーフは全滅だろう。
部屋の前がドタドタと音がする。
今は避難を優先しているはずなのだがと思っていると扉が開けられる。
「ボルンハルト王よ!我らがあの魔王を足止め致します!」
ドワーフの騎士団達が王へ進言しに来た。
「・・・だめ!逃げて!」
六花は悲痛な声でドワーフへ伝える。
「しかし、、、このままでは勇者を殺されてしまう!我らが足止めをすれば!」
「あの魔王をご覧になって下さい。とても強く、そしてあなた方を拘束する力をもっているのですよ。どうするのですか?」
騎士団に水を挿そうと、賢者が進言する。
「動けなければ、魔王の足を阻む石となるぞ!」
「そうだな、、、このまま我らが黙って逃げるのはドワーフの矜持に恥じる!!」
「おおおお!!」
騎士団の思いが、王の闘志にも火をつけてしまう。
「お願いっ・・・!やめて!」
六花は、ドワーフを守るため最後まで魔王と戦うつもりだ。
「七乃花・・・。お前の固有スキル、六花に使ってやれるか?」
「え、ええ!」
俺は七乃花に【不死鳥の呼び声】で、六花を回復して欲しいと頼む。
ナツもアキームもドワーフを止められず困っている。
「なぁ、あんたらわかってるのか?六花は、死ぬ思いであんた達を逃がそうとしているんだ。勇者は魔王を呼び寄せてしまう。そして勇者が逃げれば魔王は追いかけて、いつか殺す」
「誰じゃ、お前は!」
「もし、ここであんた達が戦って死に、六花を逃がしたとしても。魔王は止まらない。それどころか、民までも巻き込んで魔王は勇者を殺しに来るぞ!」
ドワーフ達は俺をすごい勢いで睨む。
「ここで勇者を守れなければ、我らは何のためにいると言うのだ!」
「我らはドワーフ!第6勇者は我らの誇り!誇りを貶し、我らだけが逃げるなど恥じゃ!」
ドワーフは全く関係ない第3者の言葉を聞く気には慣れないようだ。
見れば、七乃花の固有スキルで六花は回復したようだ。
七乃花はスキルの反動でアキームにもたれかかっている。
七乃花の【不死鳥の呼び声】は、ディグマの件でも知ったがSPを回復出来る。
六花は大量のゴーレムを生成したおかげでSPをかなり減らしたが、まだ持ちそうだ。
「六花、どうだ?まだやれそうなのか?」
「はいっ・・・、もう三千体はいけます。ただ足止めにしかなりません」
「そうか・・・」
「せめて、少し時間があれば別の方法でもしかしたら・・・」
別の方法、ゴーレムとは違う何かの方法があるのか。
するとその会話を聞いてか、ドワーフが反応する。
「六花殿、ならば我らがその時間稼ぎを引き受けますぞ!」
「我らが魔王を足止めするぞ!」
ドワーフ達は今にも飛び出しそうだ。
「待て!!!」
俺は大声上げ、話を聞かないドワーフ共に言い放つ。
「また貴様か!」
「俺が行く!」
「小僧、貴様一人で何が出来る!!」
「・・・・・・」
「何だ!」
「俺は勇者だ!!六花が命を賭けて、あんた達を守ろうとしてるんだ!お前らはそれを無視するのか!いいか、覚えておけ、俺は第8勇者だ!!」
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