107_六花の覚悟
警鐘が鳴り響く。
一体何事かと作業場から飛び出すと周りにいるドワーフ達が慌てふためいている。
「一体、何が起きたんですか!?」
「ああ、こんなところにいたんですね、六花様!」
声を上げるとドワーフが治めるこの国の大臣テルルさんが事情を教えてくれた。
「早くお逃げください!敵です!」
「敵!?モンスターですか!?」
「いえ、一人だけです。それが魔族なのです!」
魔族がたった一人で攻めてくるなんて。
まるであの時のようだと嫌な事を思い出す。
「まさか、魔王!?」
「分かりませんが、そうだとしたら早く逃げなければ!」
「慌てるな!!」
大きな怒号で、皆が一斉に静かになる。
ニダヴェリール共和国の王であるボルンハルト王だ。
「我が兵、何人かやられたみたいだが、敵は一人だ落ち着かんか!」
王は頑固者であるドワーフ達をまとめられるだけの手腕を持っている。
彼の一声で慌てふためいていたドワーフ達が大人しくなる。
「勇者よ、お主は客人だ。このニダヴェリールが招いた客人を、むざむざと魔王の前へ突き出す事はしまいよ」
「だけど、もしかしたら」
それでも六花は不安を拭えなかった。
「せめて誰が攻めてきたのか、調べさせて下さい」
六花は固有スキル【創造生成】であるゴーレムを一体作りだす。
大きさは1m程、全身は土色の装甲だが、内部は細かい機械で構成されている。
「ゴーレムじゃ、魔王は止められないのでは?」
「これは偵察用のゴーレムだよ。私の視覚と繋がっているから、何が攻めてきているか分かるかも」
ゴーレムは起動すると、六花の命令通りに外へと飛び出す。
この部屋から階段を降り、扉を開け、敵が来ているという方向へ駆け出す。
「見つけた・・・」
ゴーレムより送られてくる視覚情報から人影を捉える。
そして。
「みんな・・・逃げて。あれは第1魔王!五十嵐さんを、第5勇者を殺した化物!!」
魔王を見つけると六花は叫ぶ。
「魔王!?」
「まさか!!」
「魔国は我らとも取引があるのに、それを無視するというのか!」
ニダヴェリールはドワーフという種族上、人間だけに肩入れをする訳にはいかない。
彼らの持つ技術力やそれらによって作られた武器や兵器を巡って、争いが起きてしまう。
そうならないようにニダヴェリール共和国は多種族から常に中立を貫いていた。
「落ち着かんか!例え、魔王といえどたった一人で国落としなど出来るものか!!兵は我に続け!迎え撃つぞ!」
「そうだ、王の言うとおりだ!」
「我らは屈強なドワーフ!魔王相手とは引け劣らぬ!」
ボルンハルト王は皆を落ち着かせると迎撃準備を行うと命令する。
「駄目!あの魔王は誰が相手でも戦えない!?」
「何を言う六花殿?ここで戦わねばニダヴェリールは落ちてしまうのだぞ?」
ボルンハルト王は士気高揚に水を差された思いだが、六花の態度に思わず聞き返す。
「分からないけど、、あの魔王の固有スキルはとてつもなく凄かった。前の王国での戦いの時、城にいたほとんどの人が動けなくなってた」
「動けないだと?ではその時の王国はどうやって守ったのだ?」
「一歩さんだけが動けたから、そこで魔王と一騎打ちをしてくれたの」
一歩・・・王国に残った勇者の事かとボルンハルト王は思い出す。
「くっ、ならばどうすればいいのだ!?」
「・・・皆さんは逃げて下さい」
「逃げるだと!?我々ドワーフが客人である六花殿を残して逃げるなど出来ぬ!!」
「あの魔王の姿を見ただけで動けなくなるんです!!それに私の力なら・・・」
六花は【創造生成】を発動するとゴーレムが次々と生まれてくる。
「まさか・・・!」
「私のSPが持つ限り、ゴーレムの大群で魔王と戦います!」
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