105_帝国の開戦準備
「陛下、今回の開戦にあたり協力を申し出た貴族達が揃いました」
「ああ、そうか。じゃあ始めるか」
二神が声を上げると、大臣が会議の始まりを告げる。
帝国城の広い部屋に、帝国内の有力者達が集まっている。
「それでは軍務長、報告を」「はっ!放った草による王国の布陣が判明致しました!王国の兵の数はおよそ二万ほど。王国はバルト平原で帝国を迎え撃とうと準備に当たっております。・・・おそらくですが、こちらの皇帝陛下が二神様であることを宣言しておりますのであちらも勇者を投入してくるのは間違いないと思われます!」
「ははっ、そうでなくちゃなぁ!」
二神は嬉しそうに報告を聞く。
「我らの兵の数は集めれば五万には達するかと」
「二神様がおられればあちらの勇者など問題ありませんな」
「これは勝ち戦。それに乗らぬ、愚か者の領主がいようとは」
集まった貴族達が次々に、戦争への勝利を確信し話し合っている。
「おい。戦争に参加しなかった領主はどれくらいいる?」
「え、はい。子貴族を含めませんと三家ほどかと。ウァサゴ侯爵家、シャックス伯爵家、ロノウェ侯爵家になります」
「戦争が終わったら、何か理由をつけて領地を奪い取るしかないな」
先ほどまでの和やかな談笑モードから、静かになる。
大勢の貴族が戦争に参加してくれたが、何も恩賞の為だけではない。
二神の手腕による。
今や帝国は恐怖政治と言っても過言ではない。
貴族達により、何度暗殺が計られようとしたがそれはことごとく失敗に終わった。
勇者であり、皇帝陛下というのはそれほどまでに恐ろしいものなのだ。
「この戦争、必ず帝国の勝利にしてやる。数は数で削ぎ落とせばいい。向こうの勇者だけは必ず俺がこの手で沈めてやる!」
「さ、さすがは陛下!」
「勇ましいですな!」
「どこまででもついて行きます、陛下!」
貴族達は二神を褒め称え合う。
「バルトか、そこも奪う。奪った後は好きにすればいい」
とある貴族が立ち上がり二神に異を唱える。
「へ、陛下!今回の戦争は伝統あるものです。それを奪っては侵略戦争になってしまいます!」
事実、平和が長く続いたせいで戦争も形骸化している。
戦争開始の宣言を立て、決められた日時に決戦する。
それをこの世界では伝統と呼んでいた。
「お前、名前は?」
「は、はっ。モラクス子爵です」
「モラクスか」
二神は立ち上がると拳を作り、その拳が光を帯びる。
そしてモラクスを殴り飛ばす。
壁に叩きつけられたモラクスは血を吐く。
「モラクス、俺らは仲間だろ?そんな事言うなよな?」
モラクスは血も吹かずそのまま立ち上がる。
「はっ、失礼しました。伝統などあくまでも飾りです。勝ってこその戦争。この場の誰もが異を唱える事なんてないでしょう」
モラクスの態度の変化に皆、恐怖する。
二神が恐れられているのは強さだけではない、こうして強制的にその意思を奪ってしまう事だ。
「後の細かい事は任せる」
二神は大臣に丸投げをすると部屋に戻る。
「素晴らしいじゃないか二神くん」
「三上か、ったく勝手に入ってくるんじゃねぇよ」
「前にも言ったけど君の力になりたいからね」
「はっ、力になりたいか」
そう言うと二神は拳に光を纏い、三上を殴ろうとする。
が、魔力障壁により遮られてしまう。
「危ないなぁ。君のその力は僕には通用しないよ。君の固有スキル【強制宣誓】は相手の心を折らなければ無理やり誓いを植え付けられないからね」
「ちっ!」
「そんな事よりも一歩くんは君と戦う気でいるみたいだ。良かったね。ただ、あれからかなり力をつけたみたいだから気をつけた方がいい」
「強くなったって事か?そいつは上等だ」
「どうにも最近の君は慢心してるように見えるからね。いざ戦いになったら僕とパーティを組んでほしい。あー、邪魔するつもりはないから気にしないで。最悪、君が倒れそうな時に援護はさせてもらうよ」
「邪魔さえしなければ好きにしろ」
「うん、そうさせてもらうよ」
三上は窓から飛び出すと風を纏い空を飛ぶ。
その表情には得体の知れない笑みで溢れていた。
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「ふぅん、そういう訳ね。おもしろそうじゃないの?」
帝国貴族のとある一室。
「はい、そうなんです、巳狗弐様!」
先ほどの二神も参加した戦争の会議に参加していた貴族だ。
「しかし、第1勇者と第2勇者がそんな事になってるなんてねぇ。あの野郎はここまで報告していなかったって事よね」
「はい、おっしゃる通りです!」
「それで、ちゃんとバレなかったでしょうね?あなたにはちゃんと伝えた通り、帝国には従順でいて頂戴」
「もちろんでございます!巳狗弐様へと、この身この心は捧げましたが、それも巳狗弐様の為、決してバレないように心得ております」
「はぁ、腐ってても貴族という訳ね。人を騙すのは得意って事ね」
「巳狗弐様の為でございます!」
「分かったわ、しばらくそのまま大人しく良い子でいるのよ」
「はい!」
「にしても、【弐心】は便利だわ。私への愛を植え付ければここまで従順になるんだもの。ふふふ、そうね、そのうち他の貴族へは帝国へ対する疑心を植え付けましょうか」
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