104_呪いと兄弟剣
ある日、部屋の外が騒がしくて目が醒める。
何事かと身支度をして、外に出ようとすると扉をノックされた。
「失礼します。京八様、お目覚めでしたか」
「え、ああ。騒がしくて。何かあったのか?」
「ええ、、、騎士の一人が乱心されたようでして。聖騎士団の方々が取り押さえているのですが、苦戦しているみたいです」
「乱心!?」
「えぇ何か様子がおかしいようでして、突然暴れたのです」
「そうか・・・魔王の事もあるだろうし、ちょっと見てくるよ」
「え、大丈夫ですか?」
「まぁ、一応鍛えてはいるから騎士の一人なら倒される事はないよ」
「分かりました、お気をつけてください」
修道女は丁寧にお辞儀をしてくれる。
しかし一体何事だろうか。
騎士の内輪揉めかもしれないのに、ただ嫌な予感がしたから俺は現場へ向かう事にする。
「義兄さん!」
「七乃花、お前も来ていたのか」
様子を見れば、何人かの騎士が負傷しており七乃花は治療に当っている。
「フューネルさんが向こうで、暴走した騎士を相手にしてくれています」
フューネル?
教皇であるフューネルが騎士の事に口を出すとは何だろう。
俺は剣がぶつかり合う音へ向かう。
「小僧!」
「おっさん、大丈夫か?」
よく見れば、黒い煙を発している騎士を相手に戦っている。
「何だ、こいつは!?」
俺はナイフを取り出し、構える。
「ディグマだ!あいつが、、、あの剣に!」
おっさんは、ディグマを相手にしながら説明をする。
「ディグマ!?それにあの剣って!」
ディグマをよく見ると、ディグマが持っている剣は俺のせいで呪われた剣だった。
「あいつ、あれを手にしたのか!」
おっさんは必死にディグマを止めようと応戦するが、押されている。
あの剣のせいで、一時的だが[狂化]状態になっているのだろう。
「おっさん、無理するな!」
俺は割って入り、左手で剣を受け止める。
「小僧!」
「こいつを止める・・・。俺が持ち込んだ問題だ!」
剣を押し返し、魔力で幻を作る。
ディグマが幻を相手にする間に横から、ナイフで攻撃する。
しかしディグマの持っている盾に防がれ、俺は身を引く。
「ディグマを殺す気なのか!?」
「分からねぇよ・・・、そうするしか方法がなければそうするまでだ」
「駄目だ、あいつを殺すな!」
「他に方法があるのか!?それしか止める方法がないなら、その責任は俺が引き受ける・・・!」
おっさんは歯噛みをし、どうすればいいか必死に考える。
だが、ディグマは関係なく俺らへ剣を振るってくる。
「おい、ディグマと言ったか!聞こえているのか!?」
「AAAAAAh!!」
駄目元で話しかけるが、まともな声を発していない。
俺もこんな状況に陥ってた事を考えると、今更ながらゾッとする。
「おい、おっさん!剣を破壊したら、元に戻らないのか?」
「わからん!私も何度も試そうとしたが、あの剣の強度はかなり上がってしまっている。それにもし壊せたとしても呪いが振りまかれる可能性がある以上は・・・!」
「あんた教皇って事は、結界張ったりも出来るんだよな?なら、俺とあいつを囲うように結界を張ってくれ!」
「しかし、それでは呪いが貴様に振りかかるぞ!」
「言ったろ、、、責任は引き受ける。もしそれでまた[狂化]する事があれば、殺してくれ」
「しかし!!」
俺は構わず、ディグマを抑えにかかる。
「この呪いは俺が生み出したものだ・・・。なら俺が引き受ける義務があるって事だよな」
ディグマの凶悪な一撃を左手で止め、右手のナイフで牽制をする。
「おっさん、早くしろ!もしこれが呪いによって[狂化]を引き起こされてるなら、早くしないとディグマは死ぬぞ!」
「・・・っ。黙れ、小僧。今、結界を張ってやる!」
おっさんが魔力を溜め、結界を張る。
詠唱をしていないという事はこれも魔術の一種だろうか。
俺とディグマを中心に結界が張られた。
「小僧、その剣を使え!私の剣だ!」
おっさんの剣を拾う。
それは俺が師匠に渡され、俺の手で呪わせてしまった剣に似ている。
「これもミスリル製か・・・、なら!」
師匠からもらった剣と同じく、手によく馴染む。
剣を構え、ディグマとの間合いを図る。
「AAAAAAAh」
ディグマは俺を殺そうと俺にむかってくる。
左手に魔力を込める。
「ぐっ!!」
忌まわしい龍の哭き声が頭の中に響き渡る。
だがそれに気を取られる隙はない。
左手でディグマの持つ剣を掴む。
魔力を込めた龍の腕だ。
たとえミスリルだろうと斬られる事はない。
「おおおお!」
左手に力を込め、剣をしっかりと押さえる。
ディグマの剣にヒビが入る。
「お前の大事なものを、俺のせいで失わせて悪かった。せめて俺がお前の代わりに苦しみを引き受けてやるよ!!」
俺は右手にもつ剣に魔力を込め、呪われた剣を叩き折った。
「AAAAAAAAAAAAAAh!!!」
ディグマは悲鳴の代わりにと叫ぶ。
すると剣から呪いが解き放たれ、俺へと向かう。
「ぐっ・・・、がああああAAAAAAAh!!!」
俺の[狂化]スキルが強制的に発動されてしまう。
ディグマは地面へと倒れる。
俺の意思とは関係なく、手に持つ剣を構えてしまう。
くそっ、、、止まれぇぇぇぇ!!!!
俺は剣を振り下ろすが、ディグマに当たる直前で剣が止まる。
「止まった・・・?」
しかし、まだ俺の[狂化]は止まっていなかった。
慌てて、ステータスを開き、[狂化]を停止する。
「終わった・・・」
俺は膝を着く。
「ディグマ、無事か・・・!」
「義兄さん、何て無茶な事を!」
おっさんはディグマを抱きかかえ、状態を見る。
七乃花は俺の変化に気付き、慌ててこちらへと駆け寄ってくる。
「ディグマ・・・!」
「フューネルさん・・・、すいません」
「くそっ、やはり[狂化]のせいで・・・!」
ディグマは[狂化]の影響で魂の力が失われかけている。
「七乃花・・・、お前の固有スキルで治らないのか?」
「やってみる!」
七乃花は自らの固有スキル【不死鳥の呼び声】を発動する。
七乃花から不死鳥が現れ、羽ばたくとディグマへと入り込む。
ディグマの傷は治り、僅かながら反応がある。
「七乃花殿!」
ディグマの様子を見て、おっさんは驚いた声をあげる。
「良かった、、、何とかなったみたいですね」
七乃花はそのまま気を失い、倒れそうになったので俺が支える。
「助かった、、、ディグマ」
その後、騎士達がディグマと七乃花を治療室へと運ぶ。
俺も運ばれそうになったが、まだ気はしっかり持ってるから後で伺うと伝えた。
俺は呆然としているおっさんの元へいき、剣を渡す。
「小僧、、、助かった。今回の件は私の監督責任だ」
「そんな事ないだろう、俺があんたにあの剣を渡さなければ起きなかったし、そもそも」
「いや、、、こちらこそ、悪かった」
おっさんは俺へと深く頭を下げる。
「一体、何のつもりだ?」
「私は教皇という立場でいながら、お前の事を知ろうともしなかった。教皇は本来、勇者へと仕える身なのにも関わらず、国の事を第一にとしか捉えていなかった」
「おっさん・・・」
「その剣はお前にやろう。私が聖騎士団に入った時に、私とハルエルの為に作った兄弟剣なのだ。あの剣をお前に託したという事は、お前は真の勇者なのだ」
「勇者・・・」
フューネルは、後始末があるからと早々にこの場を後にした。
俺も自分の部屋に戻ったが、今日の事が忘れられず眠れなかった。
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