101_七乃花と六花とキュレープ
「義兄さん、今時間いいかな?」
七乃花が部屋に尋ねてきた。
「ああ、大丈夫だぞ」
「良かった。それで、、、その義兄さんにお客さんを連れてきたんだけど」
「客?」
大聖堂まで上がりこんで来る客なんて誰だろう。
「ほら」
七乃花が客とやらに促している。
よく見ると七乃花に隠れる様に後ろに誰かいる。
そいつは七乃花の影から、俺をこそっと覗いている。
少女。
そう見たことある少女、俺と同じく転生させられた勇者の一人である六車 六花だった。
「六花だったか?」
俺が声をかけると少女は少しびくっとする。
俺はそんなに悪人面に見えるだろうか。
「六花ちゃん、別に怖くないから」
七乃花は笑いながら、六花の頭を撫でる。
「京さん、、ですよね?」
「ああ、そうだ」
まだ七乃花の後ろからは出てくる気はなさそうだ。
どうしたものかと部屋を見渡すとちょうどいいものがあった。
修道女が差し入れとして用意してくれたクッキーだ。
俺は手をつけずにいたクッキーの皿を持ち、七乃花の方へ向ける。
「これ、クッキーなんだがいるか?」
ちらりとこちらへ姿を見せる。
「いいの?」
「ああ、手をつけなかったからな。やるよ」
「ありがとう!」
六花は嬉しそうにクッキーを受け取る。
早速一つ頬張ると笑顔を見せてくれた。
「ああ、ところでどうして六花がいるんだ」
「ええっとね、彼女は隣のドワーフが治めるニダヴェリール共和国にいるのよ。まぁ遠くもないし、義兄さんが見つかったということで来てくれたの」
「そうか、わざわざ。まぁ少し前までは体を動かすのも困難だったが今では元気にやってるよ」
「はい、それは良かったです!七乃花お姉ちゃんが京さんとも仲良くして欲しいって言ってましたから、私も京さんと仲良くしたいです!」
「仲良くって言ってもなぁ・・・。六花は今までどう過ごしてた?」
クッキー効果だろうか、六花は俺に色々と話してくれた。
「それで二神さんはいつもみんなに睨みつける感じでね、雰囲気はすごく悪くなっちゃうの」
「二神かぁ、、、王国でずっとそんな感じだったのか」
「うん、一歩さんもどうにかしようと思ってたんだけど上手くいかなくて」
二神の事情は知らないのだろうか、ドワーフの王がまだ若い六花には口止めをしてるのか。
「ドワーフの国はとってもおもしろいんだよ!鍛冶場も見せてもらったし、前の勇者が作ったって言われる魔導機関の原型が置いてあったり!」
「魔導機関・・・、それはすごいなぁ!俺も見てみたい」
魔導機関の開発者は勇者か。
「私も色々作ろうって事で、色々やったよ!おかげでレベルアップして固有スキルも増えたんだ!」
えっへんという雰囲気で俺に言い聞かす。
「固有スキルのレベルアップ?・・・たしか俺もしたけど今じゃ使用停止だもんな」
「え、義兄さん、固有スキル使えないの?」
「あぁ、色々あった時にな・・・」
「そ、そうなんだ。うーんでも、そんな事あるのかなぁ」
「私は固有スキル使いすぎた時は使えなくなっちゃったよ?物をたくさん作るとSPがすごい減っちゃうから」
六花の固有スキル【創造者の再生】は創造者つまり、職人によって作られたものならば再生出来る。ニダヴェリールに行った際に壊れた遺物を延々と再生し続けたそうだ。そのおかげか進化スキル【創造生成】を取得したそうだ。これは【創造者の再生】によって得た遺物の知識を元に新しい遺物を作る事が出来る。
「そういえばSPって魂の力なんだよな?0になると死ぬって事で合ってるよな?」
「ええ、そうね。六花ちゃんが言ってる様にでも0になる前にSPを使うスキルは使用出来なくなるよ」
賢者に教えられた認識は間違っていないらしい。
ただ魔術の前端となる力の使い方というのは分かってなさそうだ。
「そうだよな、、、」
固有スキルが使えないという事に着目して忘れていたが、俺のSP欄は??になっている。
これはどういう事なのか改めて気になる。
「なぁ、俺のSPって??になってるんだけど、これって何かな?」
そう聞くと二人して首をかしげる。
どうやら分からないらしい。
「まぁ、私達は義兄さんが居なくなった後城の鑑定石と、三上くんの【鑑定】スキルで見てもらったから自分の事で気になる点はないかな」
俺は鑑定をまともに受けた事がない。
ヴァナヘイム神国での鑑定もぶっ倒れてる間にされたから自分で確認したわけじゃない。
とはいえ。
「六花の話を割って悪かったな。せっかく来たんだ、一緒に神都を散策しないか?」
そう言い、俺は目で七乃花にも来てくれと合図を送る。
「いいの!?六花、前来た時に気になってたところあるの!」
「私も一緒に行ってあげるね、六花ちゃん!」
「うん、うん!」
「じゃあ行くか」
俺らは三人で街へと繰り出した。
七乃花と神都に出た事はなかったが、勇者の名乗りを上げてるせいだろうか色々な人から声をかけられる。
「勇者様!どうだい、この肉!今日取れたてのワイルドボアの肉だ、新鮮だよ!」
「いやいや、こっちも上手いよ」
「勇者様、こっちにも来ておくれ」
この人気っぷりだ。
ここの通りは普段通らない。
神都は住んでいる人の多くがヴァル教の教徒だが、歴史ある街並みは観光の名所ともなっている。
この通りは観光客向けの通りなのだ。
「七乃花お姉ちゃん、京さん、あっちです!」
「ああ」
勇者とか関係なければ俺らは仲の良い兄妹に見られてたのかと考える。
「いらっしゃい」
ふてぶてしい感じの主人だ。
丸い鉄板があり、ここで何かの焼き物をするのだろうか。
「この店は何の店なんだ?」
「うちかい?キュレープ店だ。その昔、とある勇者様が考えたって言われてるけどこの有様さ。作るのにも技術がいるし、気付けば店をやってるのは俺くらいだな」
キュレープ?
思ったより可愛いネーミングだ。
「分からんが3つくれ」
「あいよ!」
店主は手際よくキュレープを作っていく。
「これは!」
「クレープ!」
「おいしいね」
クレープに二人は感激している。
俺も前世での食べ物に感動し、夢中で食べた。
食べ終わった俺はふと思った事を口にする。
「味は良いのに勿体無いな」
「そうだよね、もしキュレープが勇者の記憶により再現された食べ物ならこの世界にもっと広めて上げたいと思っちゃうね」
六花は何かを思いついたのか地面で何かをしている。
するとキュレープが作られる。
「何だこれ、こんなのも再生できるのか?」
「うーんっとね、これは見本だよ!」
「見本か!」
俺は見本を受け取ると店主に渡す。
「見本、食えねぇのか?」
「ああ、食えない。だかな、客の大半がキュレープという物を知らないんだ、これを飾ったらどうだ?」
「まぁ俺も店をたたむ気だった。最後になるだろうし、あんた達の好意ありがたく使わせてもらうよ」
「六花」
六花の名前を呼ぶと次々に見本を出してくれる。
阿吽の呼吸というやつだ、
「はい、これ」
「お、おう、また見本か悪いね」
「うーん、まだこれじゃ足りないな。六花頼む!」
「任せて!」
そういうと六花の手によりキュレープ屋は改造される。
武骨な文字でキュレープと書かれた看板はパステルカラー調になり、可愛い文字でキュレープと書かれた看板に。
さらに可愛い感じのエプロンが作られる。
「おいおい、ちょっとこれは俺のセンスじゃねーぞ」
「まぁどうせ最後なんだから、いいじゃないか。食べ物の雰囲気として、可愛いらしさをアピールしてった方がいいと思うんだ」
「可愛いらしさだと?」
店主は店を魔改造されて、今にも怒りそうだ。
「可愛いですよ!」
「ええ、クレープ屋さんって感じがします!」
ナイスだ、七乃花と六花!
「まぁいい、今日で店じまいだ。やるだけやってやらぁ」
俺らはやりすぎたかなと、先を急いだ。
その後、このキュレープ屋は神都の名物になったそうだ。
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