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ヴァージン・エピローグ  作者: シキ
アリス編
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第十一話『理由とは常に合理的な訳ではない』


「ルークからの情報を考えると、一箇所にとどまるのは得策じゃないね」


 お昼ご飯を終え、食器を洗っていると、私が洗った食器を器用に片手で拭きながら先生は言う。


「気になっていたのですが、一人でここに住んだ理由は何でしょう? 危険しかないのでは?」


「??」


「……魔女とは危険な存在なんですよね? 貴重な人材である先生が一人でここに居座るのはリスクが高いかと、何か考えがあったのでは?」


 食器を布巾でくるくると拭きながら、先生は考えている。

 ただ言ってもいいのかと悩んでいるというより、私の疑問にただ不思議がっているようだった。


「理由は……ない……かな?」


「え?」


「自分で言うのも何だけど、確かに僕は唯一魔女を殺せたのかもしれない、だからと言って僕は自分の存在が貴重だから死なないようにしようだなんて考えて無い、君の疑問は理解できる、でもそれは僕が合理的に動くならって話だ」


 はっと、食器を洗う手を止める。

 確かにそうだと思う、先生のこの理由は何よりも人間らしいし、何もおかしくない。

 確かに、先生が死を怖がっていないのか、という疑問はある、でもそれはきっと、何処にいても同じ事なのだ。

 現にルーク・ヴァルキヤなどの部下がいても左手を無くしている。


 私は魔女が先生の何らかしらの対策によって、一人でいるにも関わらず手が出せないと思っていた。

 ただ、そうじゃないのだ。

 手を出せなかった理由は魔女側にあって、今になって動けるようになった?


「きっと、助手ちゃんが今考えている通りだと思うよ、魔女側になにかあるのさ」


「!……だとしたらどんな……」


「さぁね、でも余計にここにいる理由が無くなってきた、物語の中にある式に関しても、僕だけじゃ限界があるし……」


 今、目の前にいるのは少年のような笑みを浮かべる先生ではなく、知的で鋭く口角を上げる一人の元超越騎士だった。

 

「何処かに、行ってしまうのですか?」


「……え? 一緒にこないの!?」


 ポカンと二人の間にハテナが浮かぶ。

 先生は急にいつものあどけない様子に戻る。


 どうやら、私は先生が一人で何処かに行ってしまうと感じてしまい、先生は一緒に行くつもりで考えてくれていたらしい。


 いつかそんな日が来るんだと分かっていたけど……と、落ち込みそうになっていた私は反転して、一気に心が躍った。


「つ、付いていってもいいのですか!? てっきり置いて行かれるのかと!?」


「一緒にいきたくないの!? 助手だしてっきり付いてきてくれるのかと!!」


「いや、付いて行っていいのなら付いて行きますよ!?」


 しばらくの沈黙。

 そして一気に笑いが込み上げる。


「一緒に行こうか!!」


「はい!!」


 先生は簡易的な荷造りをすると、すぐにルーク・ヴァルキヤに手紙を書いた。

 本に関する数式について、学者に紹介状を書いて欲しいとのことだ。


 後日、ルーク・ヴァルキヤから著名な学者数人の住所と紹介状が送られてきた。


 騎士団には黙って行くべきか悩んでいたが、教会に狙われる以上は黙っていてもしょうがない。

 それなら教会に通じる味方にも伝えておいた方がいいと判断した。


 手紙を受け取った翌日、私と先生は一緒にサクラノトス王国の『ガクモン都市』へと向かおうとしていた。


 馬車を手配するべきだと言ったが、私の体質もあり先生は断ってくれた。教会内部に魔女がいる以上、少数で動いた方がいいと言っていたが優しさの方が大きい気がする。


 最東端に位置するドクホン都市から北へ向かう、約一ヶ月程の距離だろうか。

 北はすでに雪が降っているだろう。

 厳しい道のりだろうが、私の心は喜びでいっぱいだった。

 孤独だった旅に比べれば、険しい旅路など何ともない。

 大丈夫だもんと見栄を張る片腕の先生に代わり、荷物を背負うと行きましょうと声をかける。


「うん、楽しみだね助手ちゃん!!」


「はい!!」


 行くべき方角を指差し先生と一緒に歩き出す、ワクワクと不安を抱えながら、その旅は始まった。


 

 


 





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