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第一景 案山子の墓
ススキの穂が秋風に揺れている・・・。
・・・田んぼの隅に『捨て場』の看板が立っている。
捨て場にはたくさんの案山子が捨ててある。
あそこは案山子の墓だ。
雨に濡れて腐った案山子。
今捨てられたばかりの案山子。
案山子の顔にはみな同じ文字が描いてある。
『へのへのもへじ』
案山子には服が着せられている。
子供のセーター、おばさんの着物、父の背広、母の割烹着、お爺さんのドテラ。
麦藁帽子を被せたマネキン人形まで。
ホッペタに捨てられた日にちが書いてある。
軽トラが停まった。
農夫が荷台から『三躰の案山子』をおろした。
担いで捨て場に入って行く農夫。
暫くして農夫が捨て場から戻って来た。
捨て場の入り口には、赤い帽子を被せた『地蔵』が立っている。
農夫は地蔵に線香を挙げ、手を合わせて帰って行った。
捨てられた三躰の案山子・・・。
顔には、貴子、権蔵、春樹と書いてある。
竹藪の奥で雉が「ケン、ケン、ケン」と三回、鳴いた。
地蔵に挙げた線香の煙が、三つ絡み合って空に上がって行った。




