ep.アジフライはウスターソースの巻
ep.3アジフライはウスターソースの巻
「おい、飼い主。誰か来たみたいだ」ねこの耳は素晴らしい。
この家には鍵のない戸がある。来る者拒まずだ。それでも、すたすたと上がり込んでくるのは、冴子だけだ。僕の恋人といえば恋人だが、たまにしかここへは来ない。彼女のアパートは知っているが、「僕は待つ人」で彼女は「来る人」という役割が決まってしまっている。だからって嫌いな訳でなくて、ちゃんと好きだ。彼女もそうだと言っている。僕たちは恋人同士だ。それで満足だ。
「おす、元気!」
「おす。元気そうじゃないか。今回は来るのが早かったね」
「季節がら人恋しいの。だから今来た。誰かと温まりたいのよ」
「たしかに寒いときはそう思う」
「やっほーー。ぽんた元気?」話が切り替わったらしい。
「冴子ちゃーん。元気、元気」
「今日はね。ぽんたの大好きなお料理つくるね。なーんだ?」
「えーっと、アジフライ!」
「あたり!♪」冴子は料理好きで腕もよい。リクエストするとなんでもつくってくれる。
「はーい、できたよおん♪ぽんたはウスターソースね。ぼくちゃんはケチャップだよねー」
このたっだ広い、冷たい空気しか存在しないエアコンのないこの家に、人恋しさを忘れさせるものがいくらか漂ってきた。
冴子は、2泊して帰って行った。
「またね。近いうちに来るよ」
「ねぇ、冴子ちゃん。またカラオケ行こう」
冴子だったのか。




