第一章 バットアンドガール その参
誤字、脱字、気になる点などあればご指摘の程よろしくお願い致します。
では本編をお楽しみ下さい。
「はぁはぁ…さすがにこの歳で階段ダッシュは…きついなっ…はぁ」
屋上から全速力で一階まで降りてきた。その勢いのまま、柚木さんが戻ったはずのコンビニへと入る。
「よぅ、流石に清正はまだ屋上か」
そこには売り物の菓子パンをかじりながら、黒いスーツを着た男がレジカウンターに腰掛け俺を睨んでいた。
「当たり前じゃない我ら総裁が、自ら相手してるんですもの、私らも早く終わらせて淀家に届けるもの届けて帰りましょうよ、エステの予約時間、間に合わないじゃない」
「待ってもう少しで魂と繋がりそうだから、それにしてもこのお嬢ちゃんかわいいね、魂抜いたら人形にしていい?持って帰っていい?」
「きっしょ、何でも良いから早くしてよね」
「柚木さん!木村!」
入口から正面奥で手鏡を見ながら前髪をいじる赤いスーツの女性、うつぶせになって倒れてるバイトの後輩である木村をクッション代わりに座り込んでいる。そして女性の前には白いスーツのスキンヘッド頭の男性が柚木さんに手をかざしている。その手からは白いもやが糸状に伸び、柚木さんの胸元へと繋がっていた。
(涼さん…)腕時計越しでもユッキーの不安と恐怖が伝わってくる。
「柚木さんと木村から離れろ」
「木村?あぁこのクッション?てか誰よあんた、ねぇ清嗣パンばっか食べてないでその子やってよ」
「あぁ?しゃーねーな、一枝おまえも鏡ばっか見てないで少しは動いたらどうだ?太るぞ」
最後のひと口を食べ終わり、手をほろいながらレジカウンターから清嗣と呼ばれてる男が腰をおろす、それと同時にスキンヘッドが口を開く。
「あっ繋がった、魂抜くよ」
やばいこれかなりやばい、時間もない、くそっ!考える時間もないぞこの状況。やるしかないか。
(また力借りるよ、久しぶりだねみんな…)
(いいよ…遠慮するな…涼いいよぅ…やっちゃえやっちゃえ…良かろう…どうぞ…久々よのぅ…食えるのか?…いちいち許可を求めるでない…今日は誰?僕も使ってよ…主よ…涼!!…涼さーん!…涼様………)
目を閉じ頭に響き渡る声に(ありがとう)と答え、解放の儀を唱える。
「餓鬼解放、羅刹」
学生の頃、夏休みでのとある騒動のせいで、俺の体には五十体の鬼が宿っている、羅刹はその内の一体、目が良いのと、とにかく足が速い。
解放を唱えた瞬間、俺の身体に異変が起こる。目は黄色に光り、体は熱くなり赤い陽炎が俺を包み込む。そして俺は呼吸を確かめるように息を深く吸い、「はぁー」と息を吐く。息を吐くと同事に足元の床がひび割れ、コンビニの窓ガラスが全て割れた。
「よしいけるっ!」
俺が動き出す前にレジカウンターにいた男から回し蹴りが俺の顔目がけて飛んでくる。さすが、異変に気付きすぐに動き出したな。だが遅い、俺が今解放した羅刹の目がとらえる物は、ある程度の速さであれば、スローモーションに感じてしまう。それ程に目がいい。
回し蹴りが顔に届く寸前、刹那、男のみぞに掌底。男はレジ後ろのタバコ棚まで吹っ飛び壁を貫通。すかさず今度は女が俺の足元に、低い体勢から俺の顎めがけてパンチを繰り出す。俺は身体を後ろに反らしそれを交わす、女の顔を鷲掴みにしてそのまま押しつけるように地面に叩きつけ、女の頭が床にめり込む。
女の顔を掴んだ状態のまま、床をえぐりながらスキンヘッドの男性へと女を投げ飛ばす、スキンヘッドの男性は女を抱えながら吹っ飛び、壁を貫通して路地裏にて転がる。
その隙に木村を外の電柱横へと移動、すかさず柚木さんを抱え、外に二、三歩出たところで膝をおり垂直跳びの体勢へ。跳躍、屋上まで一直線に飛ぶ。垂直跳びの風圧で二階から五階の窓ガラスが割れる。
ここまで羅刹解放から僅か十五秒程といったところだろうか。
そして垂直跳びが屋上を通過したところで清正と目が合う。
「清正っ柚木さん呼吸してるけど意識ない」
清正は柚木さんを抱えて屋上の上を飛んでいる俺を見て、ニヤリと笑い、黒フードの男にこう言った。
「最強ってのはああいう奴の事を言うんだよ」




