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第一章 バットアンドガール その弐

誤字、脱字、気になる点などあればご指摘の程よろしくお願い致します。

では本編をお楽しみ下さい。

 

 バイトの後輩、木村が連れてきた新人のバイトの子を見た、俺と清正は、しばしフリーズした。何故なら、その容姿、名前が今まさに俺の腕時計に憑依している彼女、そのものだったからである。


 「うん間違いなく、お嬢さんだねっ」


 呆然と立ち尽くしていた清正が、落としたタバコを拾いながら口を開く。


 「ちょっと性格がきつそうだけど」


 (すいません、私人見知りなので初対面はあんな感じで態度悪くて…)


 腕時計越しから伝わる申し訳なさに対して、俺は「大丈夫だよ」と苦笑いで答える。

 そんな清正と俺を不思議そうに見つめて。


 「あのー?私名前言いましたよね?聞こえてますかぁ?」


 「あっごめん、俺は逆月涼です、よろしく。柚木さんすまないけど先に事務所に戻っててもらえるかな?すぐ俺も行くから」


 「あーい、ここに来た意味?まぁいいんですけど」


 あいかわらずの態度で彼女は階段を降りていく。俺は軽くため息をつき、腕時計を見つめる。


 「とりあえず涼はそのままバイトに戻った方がいいみたいだねっ、あの柚木って子の面倒見た方が良さそうだし、そんでそこの柚木さん……ってかどっちも柚木かぁ…面倒くさっ、腕時計の方はユッキーと呼ぼうか」


 「それもそうだね、いいかなそれでも」


 確認するように腕時計に話しかける。


 (それで良いです、分かりやすい方いいですから、ユッキーですね。了解しました)


 ホントにさっきの悪態から考えられない素直さだ、ホントに同一人物だろうか?


 「ユッキーはどこまで記憶がないの?覚えている事があれば教えてほしい。何か分かることがあるかもしれないから」


 俺の問にユッキーは少しの沈黙を置き、答える。


 (正直何も思い出せません…ただ…さっきこの時間の生きてる自分を見て、確かにこのビルのコンビニへアルバイトに来て、先程のように寒くて事務所に戻りたいって考えていたのは思い出しました。それ以外はは何も…ごめんなさい)


 「いいよいいよ大丈夫だから謝らないで」


 正直聞くのが怖かった、死んでしまう瞬間なんて、思い出してしまったら、辛いに決まってる。思い出さなくて良かったとまで思っている。そんな俺を見透かしてか、清正が口を開く。


 「涼は気にしすぎるんだよ。優しすぎるんだよ。だから寄ってくるのさ、だから寄っていくのさ。涼はおっさんになっても涼なんだな。まっでもユッキーの記憶は、今の生きてるユッキーの行動、事象を目の当たりにしないと蘇らないみたいだね。ただ、思い出す記憶の範囲はその行動、事象の範囲に限るって感じかな」


 「おっさんて言うな、まぁユッキー焦らずゆっくり思い出そう…」


 ードンっー


 地割れのような音と共にビルが揺れる。


 「なんだこの揺れ、清正これ」


 俺が清正に目を向けた瞬間、清正はすでに動いていた。


 「どうやらゆっくりはさせてもらえないようだね。顕現せよ天乃矛杖」


 眩い光と共に空間から引き抜かれたそれは光を吸収する様に形を成す、現れたのは純白を纏った杖。

 即座に戦闘態勢に入る清正を見て、只事ではない緊張感が俺の体を駆け巡る。


 「淀家の次は、あんたかい、破団はだんの総裁、安芸座間十六あざまじゅうろく!」


 「久しぶりだな、清正。義兄弟に会うなり宝器ほうきなる天乃矛杖をチラつかせるなんてあんまりじゃないか」


 「重要指名手配犯が義兄弟を名乗るな、安倍家の名が汚れる」


 その男は真っ黒いフードを被り、屋上の貯水槽に腰をかけ、子供のように足をブラブラとばたつかせる。微かに笑う口が暗くなった月夜に照らされ黒いフードの影から怪しく覗く。一瞬にして空気が変わったのがすぐにわかった。


 先程の強い揺れから、一定のリズムで地鳴りと共に繰り返される揺れ。何が起こっているかわからず、ただ清正と黒フードの男を静観することしかできずにいた。


 「ひどいなぁ、久々の再会だっていうのにつれないじゃないか清正」


 「再開なんて望んでねーよ。何でお前がここにいる?」


 「何でって僕がここに来たる程の理由がここにあるからじゃないか。それより清正ぁ、この揺らぎかなりやばいんじゃないのぅ?何でこんなに揺らいでるのかなぁ、このままだと四回結線ぶっ壊れるよぅ?」


 バカにした口調で黒フードの男は清正を煽る。


 「心配しなくても結構、すぐにお前をぶっ殺すから。(だが何故また揺らぎはじめた、こんなにも強く、ユッキーの陽気は収まったはず)他に可能性は……」


 思考を巡らせた清正はとっさに俺へと振り返る。


 「涼!水俣柚木だっ!彼女が危ない、ユッキーにあれだけの陽気があるんだ、水俣柚木も同等もしくはそれ以上の力があるってことなんだよ、くそっなんですぐに気付かなかった、頼むすぐに迎ってくれ!!」


 「やばいじゃん、それやばいじゃーん!!」


 パニックになりながらも俺は屋上からの階段を全速力で駆け降りる。


 「うわぁ彼必死に走ってるね、転ばないでねー!っと…それでだ、清正。俺も淀家には随分お世話になっててさぁ、たまにはケツもたないと面子がたたないんだわ、その為にも清正には大人しくしてもらわないと困るんだよね……顕現しろ獄乃矛杖ごくのほこづえ


 黒フードの男は、目の前の空間から黒い煙のようなもやと共にゆっくりと何かを引き抜く。そして黒いもやを吸収するようにそれは形を成し、漆黒の杖が姿を現す。


 「やっぱ淀家が絡んでんのかよ、そんな気がしてたがっ…速連足索そくれんそくさく


 清正の足元に陣が浮かび上がり、足首に収束し、一歩踏み込むと同時に、コンクリートの床が、衝撃でめくれあがり飛び散る程の跳躍を行い、黒フードへと一瞬で距離を詰め、天乃矛杖を頭上から一直線に振り下ろす。

 黒フードの男は獄乃矛杖でそれを軽々と受け止め屋上には(カーン)と乾いた音が響きわたる。


 その頃一階まで全速力で降りた俺は…


 

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