表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆたかの怪奇列島第12章「テケテケ」  作者: こうた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/8

第2話「間の崩壊」

夜は、まだ終わっていないはずだった。

だが今は、時間の感覚が曖昧だった。

ななが立ち止まる。

「……今、何分経った?」

ゆたかは時計を見る。

針は動いている。

だが、信用できない。

「分からん」

一拍。

「時間が“流れとらん”」

神父が静かに補足する。

「局所的時間異常です」

人面犬が鼻を鳴らす。

「空間だけじゃねぇな」

その瞬間。

“カッ”

音がした。

ななが振り向く。

何もいない。

だが——

今度は“少し遠い”。

さっきよりは距離がある。

ななが呟く。

「……離れた?」

ゆたかが首を振る。

「違う」

一拍。

「“離れたように感じとるだけ”や」

神父が言う。

「距離情報が分離しています」

ななが混乱する。

「どういうこと……?」

ゆたかは短く答える。

「近いと遠いが同時に存在しとる」

その言葉と同時に。

また音。

“カッ”

今度は真横。

ななが叫ぶ。

「いや、近すぎるやろ!!」

振り向く。

何もいない。

だが——

“気配だけがある”

呼吸の距離。

でも触れない。

神父が言う。

「認識が分裂しています」

一拍。

「距離の概念が維持できていません」

人面犬が低く笑う。

「距離バグってるな」

ゆたかが前に出る。

だが——

一歩目で止まる。

「……くそ」

ななが気づく。

「動きにくい?」

ゆたかは小さく頷く。

「進んでる感覚がない」

その瞬間。

“カッ”

音が重なる。

前、後ろ、横。

全部から聞こえる。

ななが息を呑む。

「どこにおんのこれ……」

神父が静かに言う。

「位置情報が崩壊しています」

一拍。

「“存在の座標”が固定できません」

人面犬が笑う。

「追いかけてるんじゃねぇ」

一拍。

「こっちが追われてることにも気づけてねぇだけだ」

その時だった。

桃太郎が一歩動く。

ただ歩く。

その瞬間。

音が止まる。

“カッ”

消える。

ななが目を見開く。

「止まった……?」

神父が言う。

「認識が収束しました」

ゆたかが呟く。

「また無心か」

空気が戻る。

だが完全ではない。

まだ“ズレ”が残っている。

ななが小さく言う。

「これ……戻ってないよな」

ゆたかが答える。

「せやな」

一拍。

「壊れたままや」

遠くで、また音がする。

“カッ”

今度は、はっきりしている。

でも距離は分からない。

近いのか、遠いのか。

もう意味がない。

ななが呟く。

「これ……戦いちゃうやん」

ゆたかが言う。

「現象や」

一拍。

「逃げられん現象や」

夜は続く。

だがその夜は、もう“時間”では測れなかった。

■ 第12章 第2話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ