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 なんで襖が空いているのか。遮蔽鈴の設置された場所は、ぴったり閉めてしまうと外からは開けられない。普段休憩するときは、外からでも開けられるように少し開けるよう気をつけているくらいだ。

 さっきだって、ちゃんと確認したのに、と混乱しっぱなしのわたしは、「い、いつから……?」と聞くのが精一杯だった。


「『わたしだって、何も考えてないわけじゃ』ってあたり? ついさっきよ」


 しれーっとしている姫鶴に、はっとなる。間違いなく、姫鶴が勝手に開けたのだ。じ、と睨むと、そんなこと気にならない、とばかりに、にやっと笑った。


「タイミングよく来たなあ、と思って」


「ふ、襖だから気が付かないでしょ」


 障子ではないのだ。人影がどうとか、分かる分けもない。


「いや、足音してたじゃない。……気が付かなかったの?」


 遮蔽鈴は中からの音は聞こえなくなるが、外からの音は普通の襖で区切られたときと変わらない音量で聞こえてくる。


「で、でも、透くんって限ったわけじゃ……」


「逆に聞くけど、閉店作業も終わったのに、店に入れる人、他にいるの?」


「……」


 わたしは黙ってしまった。透くんには合鍵を渡しているが、白陽には当然渡していない。ただのお客さんなら、もっと無理。

 わたしと透くんが幼馴染であることをしっている姫鶴も同じようなことを考えたのだろう。

 いや、でも、白陽に限っては、紫司馬として不法侵入してきているから、不可能か可能かの二択ならば、そりゃあ可能になってしまうんだろうけど。


「別人ならすぐ閉めればいいだけの話よ。泥棒だったら、もっと足音をひそめるか、別の場所を狙うでしょ」


 少し考えれば分かる、とでも言いたげに、姫鶴は言葉を続けた。


「ある程度家の構造が分かってから侵入するだろうし。ここの部屋、何もない上に逃げ場もないじゃない」


 そう言いながら姫鶴は立ち上がる。


「じゃ、私はこれで。用件も済んだし、私がいたら邪魔だろうし」


 「またね」と、姫鶴は引っ掻き回すだけ引っ掻き回して去っていった。

 わたしは姫鶴を引き留めたいものの、できずに、玄関まで見送る。わたしもこのまま外に逃げたかったが――そうもいくまい。


 玄関の鍵を閉め、休憩所兼客間の和室に向かうと、顔を赤くしたままの透くんが経ちぱなしのまま、そこにいた。わたしが姫鶴を見送るまで、一歩も動いていないようだ。


「す、座る……?」


 わたしが声をかけると、透くんはびくり、と大げさなほど肩を跳ねさせた。


「ご、ごめん。驚かせるつもりはなかったんだけ、ど――」


 ぱし、と透くんがわたしの手を取る。緊張しているのか、彼の手は手汗が滲むくらい熱いのに震えていた。

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