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かつて愛と呼ばれたモノ  作者: Anotherblood
第二章:『幸運の鈴《フォーチューンベル》』
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夜間反省会

「うん、終わったで」

「それじゃあ進むか」

「「えっ」」


 ルディの言葉に女性陣は露骨に仰け反った。今の状態でミス無く進むだけの気力は残っていない。そんな二人の様子を見ていた一真は苦笑して、助け舟を出すことにした。


「……と、言われても大丈夫なように、次から四人でやるってことで。ルディもそれで良いな?」

「うむ。んじゃ帰るぞ、丁度良い時間だしな」


 ほっとしたように、女性陣は胸を撫で下ろした。


「兄弟子の冗談はちと今はキツイで」

「そうよ」

「ま、心配性なリーダーに代わっての激励みたいなもんだ」


 ルディが昨日と同様に『帰還の星屑』を召喚し、指で握り潰す。サラサラと零れていく粉粒が魔法陣を描いて、四人を帰還場所(リターンポイント)まで一瞬で戻した。



 ―― ・ ――



 四人はセリア嬢に探索結果の報告をすると、それぞれシャワールームで汗を流し、私服に着替えて夜の学校直営飲食区画に繰り出すことにした。

 店舗の内の一つ、二十四時間営業の『バーフォール』に入り、男性二人女性二人の形でテーブル席に座って四人前のピザを頼む。談笑の内容は今日の『ミノタウロス』戦だ。


「師匠、アイツを相手にしたらどんな風に倒したん?」

「首の骨を折って終わりだな」

「……えーと、じゃあ兄弟子(ルディ)は?」

「首を一撃で刈って終了だな」

「参考にならないやん……」

「そうね……」


 その過程をどうするかという話なのだ。


「発想の転換、勝利までの過程を逆算してみろ。まぁカズマは例外として、俺の場合はどうすると思う?」

「一撃で首を刈るとなると……そりゃあ一撃で切れる必要があるわね」

「となると、魔法……でもリーティのアレでも一撃で倒せへんかったし」


 うーん、と悩む少女二人を微笑ましく見つめる男性陣。


「分かった、氣力(フォース)や」

「武器に纏って斬るってこと?」

「せや。そやろ?」

「ふむ」


 ルディは正解、不正解、どちらとも言わずに質問を重ねる。


「では、氣力(フォース)を纏わせて斬ると仮定して、どうやってあの分厚い首を落とす? 相手は木偶の坊じゃないぞ」

「私(あて)より強く、早く……? んー……」

「兄弟子(ルディ)はまだ全盛期に戻ってないんでしょう。でも、うーん」


 再び悩みだす二人。今度は一真がヒントを出す番になった。


「ルディは氣力(フォース)を使えるが、長時間展開していたか?」

「ううん。使う分だけ使っ――あっ」


 閃いた、と言うようにティアが金色の瞳を見開く。

 続いてリーティアもその解に辿り付いた。


「そうよ。必要な時に、必要なだけ使ってたわ」

「となると……瞬間的に最大の氣力(フォース)を使うてたんや。せやろ?」

「正解」

「おいカズマ。たった一分で解かれちまったじゃねーか」


 咎めるような物言いだったが、ルディの目はそれに反して笑っていた。

 妹弟子になる二人はヒントがあると、すぐに吸収して新しい一歩を踏み出すのだ。教えがいがあると感じるのは一真だけではなく、ルディも同様だった。


「でも常時氣力(フォース)を纏わないとなると、防御が疎かにならない?」

「それは魔法の手助けを借りる。氣力(フォース)だけに頼るのも、魔力(アストラル)だけに頼るのも、本来バランスを欠いて良くないからな」

「お前等、カズマが生徒会に呼ばれた時の話を覚えているか?」

「うん」

「えぇ」

「カズマは強い氣力(フォース)を使えるから氣力(フォース)バカと見られがちだが、魔力(アストラル)に関しても平等に行使している。ただ魔力の構築速度や展開規模がC++相当の為に、略式詠唱では強力な魔法を行使できない。その代わり、一節、一動作(ワン・アクション)のちょっとした手順ですぐに展開できる魔法を大量に覚えている。これによって判断を狂わされたり、びっくりして動きを止めてしまった経験は二人にもあるだろ?」


 一真とティアの戦闘然り、今朝のクリスフィアとの戦闘然り。一真は様々な錯覚や罠を用いて相手を手玉に取り続けてきた。使える氣力(フォース)が強力だからと言って、それだけに頼り過ぎないよう、他にも手練手管を整えている。改めて言われると「あ、確かに」と二人は納得するように何度も頷く。


「判断、決断、結果の元になる認識への介入。これこそがカズマの戦略なんだ」

「認識への介入……」

「身近な例で言うと……そうだな。コイツは今日、竜族の娘とやりあったらしいが『言霊(ことだま)』という魔法を使ったって言ったな?」

「えぇ」

「相手が『ミノタウロス』でも同じだ。恐らく『言霊(ことだま)』で背後に気を逸らさせている間に距離を詰め、奴のシミターが自分を貫く前に首を刈る。アイツは氣力(フォース)を感じられるようだったしな、声と一緒に氣力(フォース)を格納しておけば、良い囮になるだろう」

「はぁ~……そこまで気ぃ回らんかったわ……」

「けど、俺はティアを評価するよ」

「え?」

「俺も最大の結果を得るために相応のリスクを承知して動く。今日、ティアがアイツの『苦痛の狂声(ペイン・ボイス)』を食らうことを承知で足元を潜ったようにね。勇気ある行動が全て実を結ぶわけじゃないけど、破れかぶれではなく、ちゃんと考えた末に行動してた。よく頑張ったね」

「ふふ……面と言われると照れるわぁ」

「それとリーティアも」

「あら、どんな風に褒めてくれるのかしら」

「一度失敗しても、二度同じ轍を踏まなかったろ。手順を変えることによって、考えられる隙を極力少なくしていることが一つ」

「もう一つは?」

「二度目の連発攻撃、それでも仕留め切れなかった時に直ぐに動いてトドメを刺したろ? 硬直することなく勇気を出して前に進んだこと。よく頑張った」

「はい」


 リーティアは誇らしげに微笑んで、喜びのあまり隣のティアに抱きついた。胸へのセクハラが無かったからか、ティアもリーティアに抱きつくような形で喜び合ってる。


「褒められるって、やっぱり気持ちいいわね。お姉ちゃん」

「せやせや」

「俺らもアレやるか?」

「流石に断る。アブノーマルだとは思われたくないからな」

「お前が三人大切な人だ――なんていうと、そういう可能性が出てくることも忘れるなよ?」


 ルディの言葉は耳に痛い言葉だったらしく、一真は眉根に皺を寄せてコクコクと何度も頷いた。


「……うん、肝に銘じた」

「よろしい」

「大変お待たせ致しました」


 まるでタイミングを見計らったかのように、ピザが乗った大皿を手に持ったウェイトレスが一真達のテーブルにやってきた。美味しそうな匂いがふわりとテーブルを舞っていく。


「生地が熱くなっておりますので、十分お気を付け下さい」

「おし、じゃあ頂きます」

「それぞれ美味しそうね。こっちの一枚頂戴」

「じゃあ俺のもどうぞ。代わりにこっちのを貰おう」

「私(あて)も私(あて)も」


 今日も『幸運の鈴(フォーチューンベル)』のメンバーは仲良しだった。



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