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されど胸の灯火は消えずに歩ませて ~幻獣ハバキネスの件~  作者: ザイン=エル
第一章 辿るは黒き夜

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第四話 盟友の芽生え

【前回までのあらすじ】

姉のアイリーンを失ったことを受け入れ、病弱なノクトは体を鍛えて仇を討つことを決意する。

厳しい鍛錬を経て、ほんの少し体力がついてきた頃の事だった。

ノクトが体を鍛えだしてから、ゆうに五ヶ月が経っていた。

早朝、カフェの前。入念に準備運動をしているノクトの姿があった。


「エイト、走り込みしてくるよ」


「ああ、いってこい」


いつものようにそれを見送る。

ノクトは安定したフォームで走り出した。

最初に百メートルすら完走できなかったことを思えば夢のような進化だった。


一キロメートルを完走し、速度を落としてゆっくり歩き、そうしたらストレッチへと移行する。

ノクトの銀色の髪は、朝日を浴びてきらきらと輝いていた。





カフェに戻ると、エイトは開店に向けてあれこれ忙しく準備をしていた。

ノクトは汗を拭き、軽く身支度を整え髪を結ぶと、当たり前のようにカフェの準備を手伝い始めた。

気付くと手伝いに合流していたノクトに対して、エイトは声をかけた。


「おかえり。いつも手伝い、ありがとな。普通に助かるよ」


「まあ、世話になってるから……」


照れくさいのか、小さな声でそういいながら、準備で遅れが出ているところを勝手に判断し、食器を整えたり、開店に向けて掃除したりする。


「ああ、そうそう」


思い出したように、コーヒー豆を準備しながらエイトが言う。


「今日はお前の友達を連れてくるぞ~!」


「……オレの、友達?」


そんなのいないし、いらないが……とノクトの顔に書かれていた。そうくるだろうと思っていたので、エイトは動じない。


「幻獣調査団クライメシスってあるだろ。

それを作った偉大なじーさんがいるんだが」


ぴく、とノクトの耳が動いたような気がした。

幻獣調査団クライメシスは、姉のアイリーンが所属していた組織だ。


「そのじーさんの孫が、お前と同い年なんだな。

いいとこの坊ちゃんだが、嫌味が無くてめちゃくちゃいいヤツなんだ。

ちと、会ってみないか。

カフェに来るよう誘ってあるんだ」


「ふーん……」


「『ちょっと興味あるかも』って顔にかいてあるぞ」


「うるっさい」


ノクトはそこらへんにあった紙くずをエイトに投げつけた。





とりあえず十五時にカフェにて合流ということで、ノクトはそれまで休憩をとらせてもらうことにした。まだ病弱なんだから、あんまり手伝いするなと怒られて、部屋に押し返された。

ノクトはベッドの上でストレッチしながら、どんな奴が来るんだろ……と思いを馳せていた。

そしてそのまま小説を読んでいたら、寝ていた。





ふと目が覚めると十四時。約束の時間が少しずつ近づいている。

ノクトは身支度をするためざっとシャワーを浴び、髪を乾かし、服を着替えた。

ノクトにあてがわれた部屋は二階で、カフェは一階だ。のんびり支度して、ギリギリに出ると、カフェには既にそれらしき少年の姿があった。


「おう、ノクト!こっちこっち」


エイトが手でこちらに招く。

くるんとした短い栗毛が印象的な、眼鏡の少年が微笑んでいた。穏やかで純粋な目が印象的だ。


「初めまして!ハルジオっていいます。

君がノクト君?」


思っていたのと違うのが来たな、とノクトは思った。

そして意外なほど彼に好感を持った。

もしかしたらノクトが最も近づきたくないと感じるのは、自分自身のようなタイプかも知れなかった。


「ああ……初めまして。ノクトでいいよ」


「じゃあ、ノクト、会えて嬉しいよ。

めちゃくちゃ本が好きなんだって?

僕も本が大好きなんだ!」


「え、そうなんだ……東方侍伝とか知ってる?」


「もちろん知ってるよ~!

主人公の燈士、すごいかっこいいよねぇ!」


これは間をとりもたなくてもほっといて大丈夫だな、と判断して、エイトはカフェカウンターの中へと帰って行った。


ハルジオは同年代の友達が身近におらず、エイトがノクトと一緒に暮らし始めたと聞いて会いたがっていたそうだ。

ハルジオはかなりの本の虫で、本の話題で太刀打ちするには余程の本好きでなくてはならなかった。

その点、ノクトは虚弱で伏せっている間中古今東西の本を読み尽くしていたため、うってつけの人材だった。


「僕は神話系も好きで。ノクトは神話読む?」


「あー神話。理不尽すぎてめちゃくちゃ面白いよな。

神様になんか子供五十人ぐらいいたりして、しかも数人がただの蛇でしかなかったり……」


同年代の子が誰も知らないようなニッチな本の話題で一頻り盛り上がっている最中、喋りすぎて喉が乾燥したのか──


「……けほ、けほっ」


ノクトは乾いた咳が止まらなくなってしまった。

これは多分止まらないやつ、と思って、ノクトはかすれた声で謝りながら席を立ち、ハルジオのいないほうを向く。


「ごめ………」


ハルジオと、もっと楽しい、好きな本の話をしたいのに。何だかノクトは泣きたくなった。なんで、この体は、全然いうことをきいてくれないんだ……


「だ、大丈夫?ごめん、無理させちゃった。

ど、どうしよう」


慌てるハルジオをよそに、エイトがさっとやって来て、水の入った器をノクトの唇に付ける。背中を優しくさすってやる。

どうにか咳はおさまったが、エイトはノクトが泣きそうになってるのを見て、何を思っているか全て察してしまった。


「ごめんなハルジオ、前も言ったように、こいつちょっと体調悪くてさ」


肩で息をしていて喋れないノクトの代わりに、エイトがフォローをしてくれる。

ハルジオは、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「ほんと、ごめんなさい……こんなに本の話ができる人と会ったことなくて、楽しくて……知ってたのに、無理させちゃった。ひどいことを……」


どうしたらいい。

どうしたら──


ノクトは呼吸が辛くてあまり喋れない。

だけど、この場をどうにか……

新しく、友達になれるかもしれないハルジオに、何を言ったら──


気にしなくていい、

オレが悪いんだ、

お前のせいじゃない、


違う。違う!


「ま……」


絞り出すように、ノクトは言う。


「……また……話そう……」


ハルジオは嬉しくて、ちょっと目に涙をためながら、笑顔でうなずいた。


今回は、ずっと病弱で孤独だったノクトに、少しだけ体力がついて、初めての友達ができる回でした!

本人は友達なんかいらねーって思ってたんですけど、エイトは親代わりとして友達を作ってあげたかったみたいです。

ハルジオとは性格が全然違うけど、二人とも根がとても善良で、気が合うのでしょう。


★「され灯」は完結まで毎日17時50分に連載予定です★

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