第三十三話 終着へ導く光
幻獣調査団は、更に塔の三階へと進んでいく。三階の広場に到着すると──
ザワッと嫌な気配がする。
「……いるな」
警戒してノクトが呟く。
すると、影のようなモヤから犬のような何かが実体化する。それはすさまじい速度で襲いかかってきた。
「くっ!」
クレアは巨大な魔剣を盾のように扱いそれを防ぐ。弾かれた影の犬は、中空で一回転すると見事に着地した。
すると、影の犬はズズズズ…と床に沈んでいく。
「床に飲み込まれて、いなくなった……」
トロントが警戒して言う。次の瞬間、塔の石畳に黒い丸い影のようなものが転々と敷き詰められ、三階の広場いっぱいにそれが広がった。
「この影みたいなの、なに……?」
クレアがなんとなく床に敷かれた黒い影のようなものを覗き込むと、突然そこから影の犬が猛然と飛び出してきた。
「クレア!」
ノクトが彼女の手を強く引く。
クレアは後ろにひっくり返ったが、影の犬の斬撃は空を切った。そして、再び別の床の影へと入り込んでいく。
「おい、大丈夫か!」
トロントがひっくり返ったクレアのほうを気にかけると、その瞬間、ハルジオのフライングボットが危険を示して赤く輝く。
「トロント、後ろ!」
ハルジオが叫ぶと、トロントはすぐに察して身をかわす──
影の犬がトロントの後ろから突進してきて、見事かわされ攻撃が空を切ったことを知ると「グルル……」と唸って、また影の中へと入っていく。
「どうやら奴は、自分が設置した影の中を自由に移動できるようだな……」
ノクトの分析は正しいようで、入った影ではないところからも自由に飛び出してくる。
目視で動きを確認できないのは非常に厄介だ。床の影は一面に広げられており、無防備にバックアタックを食らったら致命傷になりかねない──
マリンは、後衛で目を閉じる。
影の犬は、物理的な生命体ではなく、魔法で動かされているもののようだ。ならば、魔力の流れを読むことができるはず。
──読めた!
「クレア!前に三歩、右に二歩!」
クレアは言われた瞬間に反応する──
ダン、と指定の歩数を駆け抜け跳躍し、魔剣を一閃する。
影の犬は完全に両断され、黒い霧のように消えていった。
全員、ほっと安堵する。
「マリン、ありがとう~。さすがだね!ノクトも引っ張ってくれてありがとねぇ」
言いながら、クレアが喜びのあまりマリンに抱きついた。
「魔力の存在であれば、どこに潜っていても流れが確認できるのではと思って察知してみましたが……うまくいって良かったです」
笑顔でマリンが言った。
トロントも駆け寄ってくる。
「ハルジオ、マジで助かったぜ。フライングボットの危険予知に何回助けられてるかわからんな」
「そんなの、お互い様ですよ、トロント。前で命を張ってくれるメンバーがいるからこそです」
一同は、心からお互いを讃えあった。
ノクトはそれを見て、肩のアイリーンを撫でながら、ふっと微笑んでいた。
幻獣調査団のメンバーは、再び慎重に階段を登り出す。だが──
四階に到達したが、敵対する者の気配は無かった。
「四階、なんもなしか……?」
トロントが呟く。その声はあまりにも静かな塔の中へと吸い込まれていった。
ハルジオは周囲を見回しながら考える。
「何も無い、というのも不気味ですね。というかもしかして、この塔自体は……ただ生物が生息しているだけで、特別な試練ではないのか……?」
「……空が、見えるぞ」
先頭を歩いていたノクトが、静かに言う。
ここから登ればもう屋上──
五人の旅の終わりが、近づいていた。
第二章、《冒険編》の完結です!
ここまでお読みいただき、
本当にありがとうございましたm(*_ _)m
次回より新章スタートです!!




