第三十二話 棲みつく者たち
フライングボットからの情報によると、オウムたちは光る塔へと向かったようだ。幻獣調査団の目的もそこだったので、彼らはできるだけ早足に行軍する。
そしてついに──
一行は、幻獣ハバキネスがいるとされる塔のごく近くまで到着したのだった。
彼らの最終目的地。ここで、何が起きるのか──ハバキネスに会うことはできるのか。全員の鼓動が高まった。
「我々の最終目的がここに全てある。塔の攻略、ハバキネスとの運命の邂逅……」
ハルジオは、緊張した面持ちでつぶやく。その先に待つものに、想いを馳せた。
「行きましょう。最後の冒険へ──!」
「あと、テントを取り戻す冒険ね〜」
クレアが茶化すように言って、トロントが「このタイミングでそれ言う〜?」と肩を落とした。
重厚な金属製の扉を、トロントとクレアの二人が押し開けた。普段であればノクトの役目であったが、傷口のことを考えてクレアが申し出た。
扉を開けることで細い隙間が少しずつ広がっていき、暗い塔の中を照らし出す──
そこにいたのは、小型のゴブリンたちだ。勝手に根城にして住み着いているといった雰囲気だった。
「最終ダンジョンにしちゃ、大したことない相手だな」
トロントは先制攻撃とばかりに円盤状の飛刃であるソイドを投げつける。ノクトも迅速に、音もなくクナイを投げつけた。
ソイドは胴体に、クナイは首にヒットし、先手で二体のゴブリンを沈めた。
「まっ、今更小型のゴブリンくらい、ねっ!」
クレアが跳躍して、魔剣を斜めに斬り下ろす。二の腕のジャンプウィングが白く輝き、一度に三体をなぎ倒した。
トロントがそれを見てヒュウ、と口笛を吹く。
「クレアのヤツ、絶好調だな、なんか」
「どんどん来なさい〜!」
クレアは調子にのって構えるが、
「殲滅完了してるぞ」
と、ノクトがクナイを回収しながら言った。
塔一階を調査して回るが、どうも塔の一階はゴブリンの汚いねぐらになっているようだった。
「なんか、思った感じと違いますね……」
マリンが呟く。
「幻獣ハバキネスは、ゴブリンが勝手に塔に住んでても別に気にしないってか。器の大きいことで」
トロントは独り言のように言った。
ハルジオは、フライングボットからの連絡を受け取りながら、皆に伝える。
「テントがあるのは二階のようです。行きましょう!」
塔の外壁内側に備えられたゆるやかな螺旋階段を登り、慎重に二階へ向かう。
「あっ」
先頭を歩くクレアが、短い声を上げる。
二階はオウムたちの巣窟だった。きっちりテントも置かれている。
「やっと追いついたぞ!オレのテントを盗みやがって!」
怒りながらソイドを投げつけるトロント。ノクトもクナイで応戦する。
すると、オウムたちはバタバタと飛び立ち、一羽残らずこの塔から逃げていった。
「やった!」
残されたテントを回収する。
損傷などもチェックするが、とりあえず問題はなさそうだ。
オウムの見張りとして活躍していたフライングボットも、ハルジオの元へと戻った。
クレアはぼやいた。
「なんか、巨龍だとか、フェンリルだとかのほうが全然手強かったかもねえ……まあ、いいんだけどね」
「まだ、油断はしないほうがいいな」
ノクトはナイトブレードとアイリーンを確認するように触れながら、そう言った。




