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されど胸の灯火は消えずに歩ませて ~幻獣ハバキネスの件~  作者: ザイン=エル
第二章 幻を追うための冒険

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第二十三話 意外な弱点

【前回までのあらすじ】

フェンリル戦の傷が癒えたか癒えないかの時に、

まさかの《地獄の炎龍》に出会ってしまう。

攻略法が確立されておらず、弱点もわからない。どうする──

草原の盛り土かと思っていたものは巨龍──地獄の炎龍であった。

流石に、策もなく情報もないまま地獄の炎龍に挑むのは無謀すぎる。

五人はとにかく一目散に逃げ出した。


「な、なんでこんなところに巨龍が……!」


理不尽な思いに駆られて、トロントが走りながら叫ぶ。


「フェンリルの遠吠えで寄ってきたのかもな……」


流石に昨日の今日で本調子ではなかったが、それなりの速度で走りながらノクトが返事をする。


「あの犬っころ野郎、勘弁してくれよ〜!」


トロントは不平不満を騒ぎすぎて、舌を噛みそうになって、渋々押し黙る。

逃げまくってからふと気付くと、背後の恐ろしい気配が消えている。


「引き離せた……?」


マリンが後ろを振り向くと、小豆色の巨龍の姿はもう見えなくなっていた。

──しかし。

突然、五人全員が不自然な日陰に差し掛かった。

それは太陽を遮り、上空に巨龍がいることを意味していた。


「伏せろ!」


ノクトが鋭く叫ぶ。バクン、と今まで全員の頭があったところに凶悪な牙が通過して噛み合わさった。


「あわわわわわ、もうさっきので一回死んでるぅ〜」


ハルジオは恐怖で恐慌状態になりかけていた。

全員が一気に伏せたため、地獄の炎龍は上空を通過して行き過ぎた。もちろん、緩やかに上空でターンして戻って来る。


「ふざけやがって、あんなのとどう戦えって……」


ふと気づいてトロントは周囲を見回すと、見知らぬ集落のようなところに来ていた。広大な湖、そしてその湖の近辺に建つ原始的な高床式の木造建造物──


「なんだあいつら」


「なんだあいつら」


ざわざわとする、妙な声。

二足歩行のトカゲが最低限の面積の革鎧を着て歩いているような、水かきを持つ不思議な生き物が二体、何か喋っている。なぜだかとても目がつぶらだ。

友好的かどうかなど、もうこの際どうでもいい。


「おい、お前らァ!あの巨龍の弱点を知らないか!」


トロントが大声で話しかけると、二体は同じような顔を見合わせた。


「うんこ」


「うんこうんこ」


「……はぁ?なんだ?」


「トロント!」


ノクトがぐい、とトロントの襟首を馬鹿力で引っ張った。

「グエ」という無惨な声と共にトロントは後ろに転び、背中を地面に打ち付ける。


「なにすんだ……」


トロントは、あまりの首の苦しさにノクトに文句を言いかけたが、先ほどまで自分がいた場所を、巨龍の鉤爪が殺意を持って通過していって、冷や汗が噴出した。


「ノクト……首を締めてくれてありがとう……」


「どういたしましてだ」


「このまま追いかけ回されていてもらちがあきませんね……どうしたものでしょう」


マリンが、また滑空の準備をしている巨龍から目を離さずにつぶやく。


「でさあ、あいつら、うんこがなんだってーの?」


クレアがトカゲのような種族のほうを見ながら言う。


「わかんねえ、今すぐうんこしたいんじゃないのか!」


トロントがヤケクソになって叫ぶ。


「あれ……もしかしたら……」


ハルジオがつぶやく。トカゲたちは、ごろごろと何かの樽を転がして持ってきてくれたようだ。それは、何かすさまじくかぐわしき香りを放っている。


「巨龍の……弱点……?」


「きょりゅう、はな、よすぎ」


「よすぎ、よすぎ」


「くさいのにげる」


「くさいのにげる」


つぶらな瞳のトカゲ族たちは、かぐわしき香りの樽を指さす。


「つまりこれを……」


「投げてぶつけろ、と……」


トロントとノクトは戦慄した。

はっきり言って、嫌な予感しかしない。

正直、この樽を持ち上げて投げつけられるほどの背丈と筋力があるのは、今嫌な予感を察した二人、ノクトとトロントしかいない。


一体、どっちが──


緊張と共に、見守るその他の三人。

しかし、その決着はすぐについた。


「昨日倒れたノクトに、まさかそんなことさせる訳にいかねーなぁ!

エイトに申し訳立たねえよ。オレがやる!」


「トロント……お前」


「マジで嫌だが、全員死ぬよりマシだ!」


言うが早いか、トロントは勢いよく樽を掴み、怪力で持ち上げる。

そうこうしている内に、滑空した巨龍が迫り来る。


「お前らは逃げてろ!喰らえ!」


トロントは全力で樽を投擲する。

巨龍は投げつけられた樽に顔面から突っ込み、樽を完全に破壊した。かぐわしき内容物が飛び散る。


「グオオオオオ……!」


その効果は奇跡的なものだった。巨龍はあまりの臭さに身悶えし、バッサバッサと逃げていった。


「巨龍、ちょっと泣いてるじゃん……かわいそ。あ、墜落した」


流石にクレアが巨龍に同情していたところ、あまりの臭さに途中で気絶したようだ。

ハルジオははっとする。


「これ、チャンスじゃないですか?今のうちに禁域へ──!」


一方、ノクトとマリンは、つぶらな瞳のトカゲ族に頭を下げて礼を言っていた。

TRPGのセッション時、まじで、

ここのトロントかっこよかったです。惚れました。


なお、トロントのうんこ投擲は【ダイス②大成功】でした。

⑥だったらと考えると恐ろしい……w


★&ブックマーク、またご感想で、救われる命があります。

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