第十六話 安らぎを共に
【前回までのあらすじ】
幻獣調査隊は、メルソン村で得た危険な敵たちの情報をさらに掘り下げることにした。
最新型ワープ装置を使用し、一度、幻獣調査団本部へと一度帰還した。
エイトの家を勝手に借りて身支度を整えたノクトは、幻獣調査団本部でシャワーを浴びたり休息をとったりしていたメンバーと再合流し、まずは図書館へと向かった。
調べるべきはフェンリル、地獄の炎龍、そしてハバキネス。
ハバキネスは幻獣調査団からの情報があったが、客観的に調べることも重要だと感じたのだ。
ノクトとハルジオは基本的に本の虫なので、図書館に行くというだけで少しワクワクしていた。つい最新の書物に目がいってしまうが、今回は仕事で来たのでぐっと我慢する。
「では、今回は分かれて調べましょう。僕とトロントは地獄の炎龍を」
ハルジオが組分けするときに、ノクトが提案をした。
「エイトからフェンリルに関する情報を得ている。引き続きオレがフェンリルについて調べよう」
「わかった、それじゃあノクトはフェンリルについて調べて。クレアとマリンはハバキネスについて調べてください」
「おっけ〜」
「わかりました」
というわけで、全員がそれぞれの書物を調べていく。たっぷり一時間、様々な書物を持ち運び、読み漁った。
本が苦手そうな約二名、クレアとトロントは大変そうだった。
◆
図書館で調べた情報共有は後ほどカフェで行うこととなり、引き続き準備のためにマーケットの方面へと向かう。
今回の敵は手強い。然るべき準備をしなければ命を落とすこともあろう。
それぞれ、思い思いのものを購入していた。
ノクトはとりあえず、携帯食料を多めに。
それから、即効性のある鎮痛剤入りの塗布傷薬を購入した。痛みで動けなくなってしまった時に非常に役立つ。
また、戦闘中に牽制したり手数を増やしたりするために、クナイを追加で購入した。
マリンは草食獣の革や角を買取所で売却した。服になったり、装備になったり、薬になったり、巡り巡って再び役立ってくれるだろう。
◆
粗方用が済んだ頃。
カフェでエイトが夕飯を奢ってくれるそうだという話をもちかけたところ、皆大喜びだったので、ノクトはその後調査団本部の隣のカフェに彼らを連れていくことにした。
カランカラン、という音とともに五人がカフェに入店する。
「いらっしゃいませ!よく来たな〜!」
早速、エイトが笑顔で対応する。
「ごちになりまっす!」
「ありがとうございます。初めまして、エイトさん」
「お招きありがとう。お邪魔します」
「エイト、元気そうで何よりだよ!」
クレア、マリン、トロント、ハルジオの順に挨拶をする。
エイトのカフェは基本的に幻獣調査団員のご用達だったが、新任のトロント、支部のマリンとクレアは初めて来たようだった。
◆
それぞれが、思い思いの品を注文していた。
テーブルにはピザや、たっぷりの生野菜、香草と挽き肉を焼き上げてライスの上に乗せたものなどが非常に良い香りを漂わせていた。
「疲れた体に染み渡ります〜!」
マリンは美味しそうに食事を頬張った。
ライスと挽き肉の上にはトッピングとして目玉焼きが乗っていてとてもボリュームがある。
「エイトのカフェは、カフェラテが絶品なんだ」
と、ノクトが言うので、全員が見事にカフェラテを注文していた。
「マジでキマるな。このカフェラテはキマる」
トロントは、脳がしびれたかのように言う。
「こんなに美味しいカフェラテがこの世に存在するとは……!」
クレアも衝撃を受けて、目をきらきらさせながら、あっという間に飲みほしてしまった。
ハルジオはここのカフェラテがすでに大好きだったので、ご満悦だ。
ノクトは各自のその反応を見て、非常に満足そうだった。
誰よりもエイトの飯が好きなのは彼だったからだ。
彼自身も、あつあつのとろけるチーズが乗ったピザを頬張っていた。
仕事の話をする予定ではあったが、うまい飯、最高のカフェラテに出会って完全に毒気を抜かれ、歓談モードの五人だった。
「へぇ……ノクトはここに住んでたことがあるのか。どうりで、店主と距離感が近いわけだな」
トロントが納得したように頷く。
「ああ。エイトは元凄腕の兵士で、オレを鍛えてくれた師匠みたいなものだ」
エイトの所作を見ていて思うが、確かに只者ではない、とトロントは納得した。
今だに現役兵士で、士官であると言われても納得するほどの体躯、身のこなし、気配。
そこへエイトが追加の食事を持って話に割り込んできた。
「ノクトは戦闘において天才的だろう?本当にこいつはすごいんだ」
温かい出来立ての食事が乗った皿を置きながら、その顔はもはや誇らしさでにこにこしていた。
「この人、殺意がマジでやべーっすよ」
クレアがノクトをつんつん指さしながらそう同意したのに対し、さらなる親バカを炸裂させたエイトは、
「そうだろう、そうだろう。こいつは殺意という天性の素質を秘めていてな……」
と語り出すので、
「……バカ」
頬杖をついて苛立っているノクトから、シンプルな二文字が贈られていた。
ノクトに怒られてもエイトは全くめげることなく、今度はアイリーンにその矛先が向かう。
「このアイリーンも最高に可愛いんだ。気立てがよくて、いつも周りのことを気にかけてくれている。皆もアイリーンと仲良くしてやってくれ」
図らずもその文末は、最初に顔合わせをしたときにノクトが言った自己紹介と全く同じ一文で締められていて、それがノクトとエイト本人以外の爆笑を誘った。
アイリーンは尻尾を振ってキャッキャとして、とても嬉しそうだった。
ハルジオはなんだかその様子が微笑ましくて幸せで、ニコニコと眺めていた。
やっぱり仕事の話そっちのけで歓談しちゃいましたw




