第十四話 行方を追って
【前回までのあらすじ】
ノクトが先制攻撃で村人をやりました。脅して村へ案内させています。
怯えきった島民に案内され、到着したのが《メルソン村》と呼ばれる秘境の村だ。
とりあえずこれ以上敵対行動を取らないことを条件にして、彼らを一旦解放することにした。
「約束を反故にした場合は、どこにいても見つけだして必ず殺しにいく」
というノクトの言葉に震え上がった島民たちは、夢にも彼らに危害を加えようとは思わなくなった。
解放する前に、彼らに対して少し聞き込みをすることにした。
この数人の島民のなかで最も年嵩な男に、ハルジオが話を聞く。
「えーと、では改めて……僕たちは幻獣調査団クライメシスという組織のメンバーで、幻獣調査のためにここに来ました。敵意を向けないで頂ければ、害意はありません。できれば友好的にお話をしたいです」
それを聞くと、心から怯えきった男はほっと肩を撫で下ろした。
「それならそうと早く言ってくれれば……」
「言う暇なかったけどね~?」
茶化すように、クレア。
そしてまた、ノクトに刃物のような目つきで睨まれて、島民は震えて黙る。
「とりあえず、あなたのお名前、そして村の規模や状況を教えていただけますか?」
話を戻して、ハルジオは尋ねる。すると島民は答えた。
「儂の名前はジウ……この村の村長だ。
村はこの島唯一の村で、全ての島民はここに住んでいる。
まあ、文明のレベルはご覧の通りで、ほそぼそと日々の暮らしをしているに過ぎない」
「なるほど。幻獣ハバキネスや、それらに関する事はご存じですか?」
「それらについては、村人たちが様々な情報を持っているだろう。
あんた方に協力するように言っておくから、聞き込みをするといい」
「ありがとうございます!」
「ああ、それから……」
ジウは協力的に言う。
「あんた方、宿泊をしたいのであれば、《村の東》にある空き家を使うがいい。
あそこは今使われていないのでな、自由に使ってもらって構わんよ」
それは助かります、と言おうとしたハルジオは、ノクトに制された。
「いや……そこまで世話になるわけにはいかない。
気持ちだけ受け取っておこう」
「そうかそうか、いや、調査団の皆さんには差出口だったな」
ともかく、幻獣調査団への協力を確約できたので、村長ジウ、そして連れ立った者たちは無事に解放された。
「さて、どうしようか。聞き込みもしたいけど、腹も減ったな」
トロントが腹を押さえながら言う。ハルジオは同意した。
「確かに、もうお腹ぺこぺこですね……。
そうしましたら、調理班と聞き込み班に分かれて行動しましょうか」
ハルジオの提案で、ハルジオとクレアは調理班、それ以外のノクト、トロント、マリンが聞き込み班というように分かれて活動することとなった。
「ハルジオと一緒に、おいしいご飯用意しとくよ~」
と、クレアが元気に言う。
ハルジオはそれに続けて言葉をかけた。
「それじゃあ、聞き込みの方はお願いしますね。
あと……トロント、マリン。
ノクトが暴走しそうになったら制止してくださいね」
「……暴走などしないが?」
さも心外だという風なノクトであった。
◆
聞き込み班は、村を歩いている女性をみつけ、物腰が穏やかな聞き込み担当マリンが「すみません」と声をかけた。
「本土からやってきた、幻獣調査団の者です。
少しお聞きしたいのですが、よろしいですか?」
「ああ……村長のジウが言っていたね。何だい?」
「ありがとうございます。幻獣調査のことでお聞きしたいのですが、幻獣ハバキネスについてご存じですか?」
「ハバキネスねえ、あの時々空を飛んでいるっていう、虹色の竜の事かね。」
「!見た事があるのですか?」
マリンは驚いて言う。
まさかこうも簡単に目撃情報を得られるとは。
すると村人の女性は言う。
「あたしは見た事は無いけどね。婆さんが数年前に見たって言っていたよ。他にも目撃した人はいる」
「幻獣は幻や伝承としてではなく、この地にしっかりと息づいているのか……」
トロントは手ごたえを感じ、頭の中に情報を刻み込む。
村人の女性はしっかりとうなずく。
「そうだね、実際にちゃんといるねぇ。
ハバキネスは、フェンリルを守護獣として使役しているんだよ」
「フェンリル……」
狼のような姿の魔物が、マリンの頭の中に浮かんできた。
「狼みたいな奴だけど、知能がとてつもなく高いんだ。
うちの旦那が昔ハバキネスを捕まえようと何人かで隊を組んで行ったんだけど、フェンリルに阻まれちゃってさ。
そいつは霧を使ったり、分身したりして、仲間を失いながらも命からがら逃げ帰ってきたよ。
あんなの、願いを叶えるだか叶えないだかも本当かどうかなんてわからないし、手を出したらいけない化け物なんだよ」
「なるほど……」
マリンは手帳にメモをしたためる。
だいぶん有益な情報を得られて満足し、感謝しつつ村の女性と別れようとしたときに。
「……すまないが、もう一つ問いたい」
ノクトが最後に振り返って聞く。
「三年前、この島に別の幻獣調査団の一隊が来ているはずなんだが、彼らがどうなったか知らないか?」
「あんた方と同じ組織の人かい?
さあ、見た事ないし、わからないねえ……」
首を振って、村の女性は言った。
ノクトは何でもないことのように答える。
「──そうか。時間をとらせてすまなかった」
◆
聞き込み班は、更に聞き込みを続ける。
今度は、小さな湖で魚釣りをしていた男に声をかけた。
「ハバキネスとかいうのに関係があるかは知らんけど、夜にはめちゃくちゃうるさい遠吠えが続く時があるな。それがあると、うるさすぎて眠れないんだよ」
「遠吠えが……。何か魔物たちが意思疎通をしているのでしょうか?」
「さあ、よくわからないんだけどなぁ。
それと、北の森林のほうに向かうんなら、やめておいた方がいいぞ。
森林は禁域といわれていて、強大な魔物たちがウジャウジャいる。
危険すぎるから、島民もそこへは絶対に近寄らないんだ」
「北は魔物が多いんですね……」
マリンはメモをしたためていく。
「そうだ。どういうわけか、最北の山の絶壁に塔があって、そこから謎の光が放たれているみたいなんだ。そこが魔力の集結点のようになっていて、ああいう奴らを呼び寄せていると言われている。
真相は全くわからんし、危険すぎて誰も調査はできないから、我々は現状を維持して棲み分けをするしかないわけだが……」
マリンはそれらも重要な項目としてメモをとっていく。
◆
次の聞き込み対象は、随分と荒れた雰囲気の男だった。
「あァ?なんで村長の命令だとかで、テメェらに協力なんかしなきゃいけねーんだよ。ぶっ殺」
慌ててトロントがその男の口を物理的に塞いで、彼にだけ聞こえるように小声で叫ぶ。
「無暗に殺意を向けるな!マジで殺されるぞ!」
いつの間にかナイトブレードを抜刀状態にしたノクトが、刀の背を肩にトントンとして周囲の自然を眺めている。
気配はリラックスしているように見えたが、肩の刀が物騒すぎて、いつでもそのリラックスが殺意に激変して振り下ろされるかわからなかった。
「無駄に殺生したくないんだ。頼むよ。なっ」
トロントが本気で言っていることが伝わって、男は震え上がって大人しくなる。
「では……」
こほん、とマリンが咳払いする。
「ハバキネスや、使役されている魔物のことで、何か情報を知りませんか?」
「ハバキネスねぇ……」
まだ震えながら男は考える。
「それに関係あるかは知らんが、いつからか、どこかから飛んできた巨龍が住みついているな」
「巨龍?」
「地獄の炎龍とかいう奴で、外部からきてここを根城に決めたらしいんだ。
目的はよくわからないが、北の塔の魔力が目的かもしれないな。
ああいう魔力の泉のようなものがあると、色んな奴が寄ってきて困る」
「ここには、守護獣フェンリルだけでなく、巨龍までもが住みついているのですね。厄介な……」
マリンはメモをとりつつ同意する。
「有益な情報を、ありがとうございます」
「もう一つ、質問がある」
と、ノクト。
「三年前、この島にやってきた幻獣調査団の者たちが行方不明になっている。何か情報を知らないか?」
男は、首をかしげながら言った。
「そんな奴らが来たのか?知らないなあ」
ハバキネスについては様々な情報が得られて実りがあったが、三年前に消息を絶った幻獣調査団については、聞き込みを続けても、これといった情報は全く得られなかった。
村に到着する前に、あの落とし穴のようなものや天然のトラップで全滅してしまったのか。
村を通り過ぎて、禁域とされる危険地帯に向かって消息を絶ったのか。
それとも──
現時点では一切の判断ができなかった。
実際のTRPGセッションでも、この時のノクトは完全に触れたらヤバい奴扱いされてましたw




