第十三話 許されざる者達
【前回までのあらすじ】
無事に大穴を脱出した幻獣調査団の面々は、荒野を進んでいた。
夜が明けてから野営を撤収させた五人は、荒野の終わりを進んでいた。
最初の目的地である草原が、ついに見えてきた。
ハルジオはマップを見ながら周囲を確認する。
「草原を出たら、まずは村らしきものがある方へと行きましょう。
原住民と話ができるかもしれません」
「……んん?あれは何だ?」
トロントが神妙な声でつぶやく。
突然、自分たちが見知らぬ謎の文明の気球が、ゆっくりと近づいてくる。
目をこらしてそれを見たトロントは、驚いて言った。
「つぎはぎだらけの……なんだありゃ、ボロ気球か?
よく飛んでるな、あんなもん」
「もしかして、この島の原住民でしょうか……?」
ゆっくりと気球が近づいてくる。
何か物騒な声でこちらに対して凄まじい怒鳴り声を上げている。
ノクトは、ナイトブレードをゆるりと左手で持つ。
その親指で鞘からカチ、と一センチほど浮かせ、そのまま鞘に包んだ状態を維持している。
ただ黒い刀を持って立っているようにしか見えなかったが、巧妙に隠された殺気が滲んでいた。
気球に乗る連中の言葉は訛りがすごいが、一応内容を聞き取ることができた。
「貴様らぁ!何者だ!」
敵意を込めて、全員が弓矢をこちらに構えているのがわかる。
気球は低空の状態になったと思うと、総員が一気に飛び降りてくる。
今まさに発射されてもおかしくない弓矢。
ノクトはこの短い一瞬で先端に毒が塗られていることを鋭く確認していた。
「外部の者がこの島に入るなァ!殺す ぞ 」
言った時には、何かがゴトリ、と落ちていた。赤い雫が地に落ちる。
「……え?」
警戒して皆を守るように先頭にいたトロントが、何が起きたかわからず疑問の声を上げる。
返り血を浴びたノクトが、刀を振り抜いた状態で、島民のすぐ近くに着地していた。
「き、貴様、な何てことを……」
あまりの出来事に憤慨する島民の首元には、既にナイトブレードが突きつけられていた。
一筋の抵抗でも見せたら、何の容赦もされないことは最早明白だった。
「武器を捨てて村へ案内しろ。さもなくば、殺す」
金属の刃のような冷たさで、ノクトのラベンダー色の瞳が光っている。
「は……は……はい……」
当然、島民は武装を解除してそれに従うしかなかった。
◆
「ちょっと、ノクト!」
それに対して何か言えるのは馴染みのハルジオしかいなかったので、島民に案内されながら、彼はノクトに対してこっそり苦言を呈した。
カフェの前でハルジオに呼び止められた、ぐらいの雰囲気で、ノクトは穏やかに「どうした?」という顔で振り向いた。
「さすがに、いきなりやっちゃうのはマズいって!
一応、幻獣調査団の仕事で来ているんだしさあ」
「……奴らは毒矢を仕込んでいた。
色と照りから察するに、致命毒。
先に斬らねばこちらの誰かが死んでいた」
「毒……!」
「殺意を向けて良いのは、殺意を受ける覚悟のある奴だけだ」
「そ、そうだけども……」
あまりにも正論すぎて、ハルジオはそれ以上のことは言えなくなってしまった。
ついでにクレアが笑いながらノクトの援護をした。
「まあ、敵だし?倒さなければ、ノクトが言うように誰か大変な怪我してたか、死んでただろうし。いいんじゃない~?」
「私も、救ってもらった形になったので、ノクトに同意ですね……
こんなところで死ぬわけには、いきませんから……」
と、強い決意を込めたマリンの声。
「……もう……どうしてウチのメンバーはこう血の気が多いんだ……」
メンバーの中では常識人のハルジオは、がっくりと肩を落とした。
ノクトには悪いけど、エイトに報告してちょっと叱ってもらわないと、とハルジオは思っていた。
その空気を迅速に察知したノクト。
「お前、その顔。もしかしてエイトにこれチクる気か」
「……」
「おい。チクるなよ」
「……」
「おいってば」
「……」
二人のやりとりはともかくとして、当然、トロントの『普通にイイ奴』判定も撤回されていた。
(確かに毒が塗られているのは分かっていた──しかし、あまりにも敵に対して人の心が……情けが、無さすぎるな……)
味方にいれば非常に心強いが、何かの拍子に敵対したらたまったものではないな、と心中で思っていた。
※この作品は全年齢対象です!※
実際のTRPGセッションでは、ノクトの村人への先制攻撃は【六面ダイス①:クリティカル】でしたw
今度活動報告にでも小ネタとして書きたいと思いますw




