第十一話 砂の障壁
【前回までのあらすじ】
幻獣調査団の精鋭たちは、砂嵐と食糧難を乗り越え、ついにグレートワイツへと接弦した。
ハルジオはマップを持ち、全員に広げて見せる。
「僕たちがいるのはここ、南の荒野です。
このグレートワイツには他に接舷できるような場所がないので、
今回はわざわざ南まで回り込みました。」
マップを持ち指し示して、ハルジオは説明をする。
「上空から事前に確認してもらったところ、北東に村らしきものがあるようです。
しかし、島外の者、僕たち幻獣調査団の者以外は未到の地、しかも前回派遣した調査団は──」
ハルジオはみなまで言うことを避けた。
続けて話す。
「どんな脅威が潜んでいるかはわかりません。
十分に注意して進みましょう。
まずは荒野を進み、北東に広がる草原へと出て、村に向かってみましょう」
メンバーは深く頷いた。
道中の危険を確認しながら、荒れ果てた荒野を進んでいく。
ハルジオは注意深く確認しながら荒野を歩いていくが──
「うわあ!」
突然の、ハルジオの絶叫。
なんでもないように見えた足場に大穴があいたのだ。
「なんでこんなところに穴が……」
ハルジオは真っ逆さまに落ちていく。
立ち位置が良かったのか、クレアだけが大穴に落下せずに済んだ。
しかし──他全員の足元に大地がなくなっていた。
自分も落下しながら、トロントはマリンを支え、ノクトはハルジオが頭を打たないように抱きかかえた。
トロントは背中を強く打ち付け、ノクトは肩を負傷することになった。
「ご、ごめんノクト!」
「……問題ない」
「あ、ありがとうございます、トロント……」
「大丈夫だぜ、マリン。これが仕事だ。しかし──」
見事に四人が大穴に落ちてしまった。
穴の中から地上を見上げる。
「おーい、みんな大丈夫ぅ?」
クレアが穴から覗いている。
陸は二・五メートルほど上か。
「まいったな……なんだこりゃ。誰かが掘ったのか?」
頭を抱えるトロント。
「全員が脱出する手段を考えないとな……アイリーン!」
ノクトはアイリーンに指示を送り、穴の壁面を伝って上へと向かわせる。
「お前たちは、ここで待っていろ」
そしてノクトは、共に穴に落ちたメンバーたちにそう告げると、サバイバルナイフを腰から抜き放つ。
壁面にサバイバルナイフを突き刺して、そこをクライミングするように登って、何事もなかったかのように穴から脱出した。
「ば、化け物かよ……」
トロントは思わずポカーンとして言った。
「そうだ、フライングボット!」
一瞬遅れて、ハルジオもメイン武装であるトンボ型の自立式魔導体に指示を送った。
ハルジオが使役しているフライングボットは三機。
アイリーンと共に、なにか脱出の手助けになるようなものを探しに行った。
すぐにアイリーンとフライングボットからの連絡が入る。
少し離れた場所に、長い板を発見した、とのこと──
この板を運べば、穴から脱出する足がかりになるかもしれない。
クレアは準備運動をしながらノクトに言う。
「ま、ちょうど力持ちが地上にいるわけだし、拾いにいこっか」
「……ああ」
「ちょっとその板、取ってくるよ~!」
クレアは穴に落ちてしまっている三人に声をかけ、ノクトと共に駆け出した。
◆
だが、合流する前にアイリーンからの危険信号が送られてくる。
「……!ワームか……」
ノクトは更にギアを上げて走る。
するとアイリーンが信号を出している場所に、巨大な芋虫、ワームがいる。ただ……
「何あれ、本土のワームの三倍ぐらいあるじゃん」
その大きさに後ろを走るクレアは叫んだ。
あまりにもでかい。
人間よりも──野放しの生態系でのびのびと育ったか。
「アイリーン!」
速度を一筋も落とすことなく駆け込んだノクトは、黒いナイトブレードに手をかけ、走り抜け様に一閃。
巨大なワームは身を捻ってかわすが、刃の半分ほどが見事に体を切り裂いている。
ノクトは切り返すように着地して、勢いよく地面を滑りながら、慣性にしたがって停止する。
「大丈夫か」
アイリーンはこくこくと頷くようにして、何よりも早くノクトの肩に登る。
フライングボット三機も、周囲の空を回遊している。
ワームは深傷を負っているが、獰猛さを増して、毒々しい液を吹き出している。
そこへクレアの突進。
巨大な魔剣を軽々と振りかぶり、ワームの胴体を全力で叩き切った。
ドォ、と音を立ててワームは倒れた。
「やるな」
ノクトは素直にクレアを褒める。
「ま~ね。《魔剣士》だからね」
しかし、二人が話している背後で、半分になったワームが別々に起き上がり、襲いかかろうとする!
「……アイリーン」
ノクトの指示は、場違いに優しさを感じるほど、穏やかな声だった。
アイリーンは凄まじい火炎を後方へと吹き出す。
ワームはその地獄のような業火に焼き尽くされ、今度こそ動かなくなった。
「ひえ。あんた、後ろに目が付いてるみたいじゃん……」
アイリーンは、常にノクトの死角を補って動いている。
クレアの言い分に、ふ、とノクトは微笑むだけだった。
とりあえず二人は長い板を発見した。
これを持ち帰り、大穴に立てかけて皆の脱出を支援しなければ。
ナイトスコーピオンを連れたナイトキラーに死角は無いのでした。




