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アンケート  作者: 菊池まりな


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101/104

第101話 光の街へ

崩れ落ちる廃工場を背に、夜気の冷たさをまといながら、美佳たちは走り抜けた。


 出口を飛び出した瞬間、胸を満たしたのは、鉄と埃の匂いではなく──澄み切った空気だった。




 振り返れば、工場の屋根が大きく崩れ落ち、土煙が立ち上っている。


 それでも不思議と恐怖はなかった。


 まるで建物自身が「役目を終えた」と告げて、眠りについたかのように思えた。




「……終わったのかな」


 ユリが肩で息をしながら呟く。




 美佳は答えず、都市の方へ視線を向けた。




 そこには、見慣れたはずの藍都学園都市が広がっていた。


 けれど、いつもの夜景とは違っていた。




 街路樹に沿って小さな光が帯のように流れ、ビル群の窓が一斉に明滅し、遠くまで続く光の網が都市全体を覆っていた。


 まるで都市そのものが呼吸をしているように、柔らかな明滅を繰り返している。




「これ……LAPISが……?」


 玲が言葉を飲み込む。




 東郷は無言で夜景を見つめていた。彼の瞳に映る光は、どこか感慨深げで、そして寂しげだった。




「俺たちが選んだ答えを……都市が受け取ったんだろうな」


 純の低い声が響く。




 美佳は胸元に触れる。


 彩音から託された鍵が、まだ温もりを残していた。




──ほんとうに、これでよかったのかな。


 わたしたちの選択は、誰かを傷つけることはなかった?


 問いが胸の中に浮かんでくる。




 だが、同時に胸の奥で小さな確信も芽生えていた。


 誰かが問いを投げかけ、誰かが答える。


 その繰り返しが未来を形づくるのだと。




「……行こう」


 美佳は仲間たちを振り返った。


「この都市がどう変わっていくのか、ちゃんと見届けなきゃ」




 その言葉に、純が笑みを浮かべる。玲は頷き、ユリは力強く拳を握った。翔は冷静なまなざしで彼らを見守りながらも、足を踏み出す。




 六人はゆっくりと街へ歩みを進める。


 夜空の下で、都市はまるで彼らを迎えるかのように輝き続けていた。

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