どうしたら
蒼は、居間へと帰って碧黎を呼んだ。
碧黎はすぐに来たが、むっつりと険しい顔をして浮いていた。
蒼は、言った。
「碧黎様、もう黙ってはおられません。何かあったら結局維心様達になんとかしてもらうしかないんですから。迅達がどうしてあんな風に記憶を持っているのか、それに、流れがなんだって迅を戻そうとする方向に動くのか、気になるんです。何か見えましたか。」
碧黎は、頷いた。
「…分かっておる。我だって知らぬ事はあるが、調べたら大概の事はわかるのだ。だが、言える事と言えぬ事があっての。分かっておってもどうにもならぬ。ただ一つ言えるのは、迅はできたら帰さぬ方が良いのと、あれらの記憶の事はできたら維心達に話さぬ方が良い。だが、そうはなるまいの。僅かにあった希望も潰えてしまい、迅を帰さぬ理由がなくなった。昌士一人で帰す事ができぬのは、迅の性質ではそうなろうし。どうしてもと申すなら、できたら涼夏を共に行かせられたら良いのだが。それも神世の理上無理なのであろう?」
つまり、涼夏と迅を引き離すなということか。
蒼は、頷いた。
「…やってみます。というかどこまでオレにできるか分かりませんけど。何しろ維心様達の知識をもらえない状態なので、誰に聞けば良いのかわからないんですよ。」
碧黎は、うーんと唸った。
そして、言った。
「…十六夜に相談してみよ。」蒼が驚いていると、碧黎は続けた。「あれは忖度などないから、率直な意見を申すだろう。何も知らぬし我のように情報を漏らす心配もないゆえ、何を話しても大丈夫だろう。あれは黙っておるが全部見て聞いておる。あれの頭の中でまとめたものを話し合ってみるのだ。今回は維心に頼らず、やれるところまでやってみよ。」
蒼は、十六夜と自分でどこまでできるのかと項垂れたが、やるしかない。
なので、頷いた。
「…分かりました。一度話してみます。」
碧黎は頷いて、消えて行った。
と思ったら、十六夜が言った。
《オレとお前で何ができるんだよー。親父も無茶振りしてくるよな。》
蒼は、やっぱり聞いてると、月を見上げた。
「でも!やらないとまずいんだよ、とにかく何か思い付いたことある?」
十六夜は、はあとため息をついた。
《お前さーオレに丸投げし過ぎ。でも、思ったんだけどな、迅が涼夏を娶りたいんだって事にしたらどうだろう。》
蒼は、顔をしかめた。
「そんな感じじゃないって迅が言ってた。」
十六夜は、イライラしたように言った。
《だーかーらーそういう事にするの。そしたら宮じゃ、罪人の子だとかなんとかで、迅を王にできないだろ?飲むなら飲むでいいじゃねぇか、親父は最低限ここを出たとしてもあの二人を一緒にしとけって言うわけだから。連れて帰るだろうし、問題ねぇ。》
言われてみたらそうだ。
臣下にしたら究極の選択だろうが、それが一番手っ取り早い。
諦めるにしろ何にしろ、迅と涼夏は同じ場所に居る事になる。
「…最初は何言ってんだと思ったけど、確かにいい考えに思えて来た。」
《だろ?》十六夜は続けた。《じゃ、まあ迅と涼夏に話してくらあ。涼夏は夕方から家でずっと泣いてるし、あのままじゃ明日の朝目が腫れて大変だぞ。》
それどころじゃない。
蒼は思ったが、もう夜も遅いし、自分は応接間に戻らなければならない。
なので、頷いた。
「頼んだよ、十六夜。オレは維心様達の所に戻らなきゃ。」
十六夜は、頷いたようだった。
《まあ任せとけ。じゃあな。》
そうして、十六夜の意識がこちらから反れたのが分かった。
蒼は、ほったらかしの客達が気にかかって、急いで応接間へと戻って行ったのだった。
だが、心配する必要などなかった。
王達は、サクサクとゲームを進めていて、王城を呆気なく攻略したようだった。
そこで王に歯向かうもの達、要は反政府組織と手を組んで、さっさと攻略したようだった。
「焔が酒場に寄ると聞かぬでな。」炎嘉が言う。「それどころではないと維心も我も止めたが、万全でないと行かぬと、たった3しか減っていない体力を回復させると駄々をこねて、仕方なく寄った酒場が反政府組織のアジトだったのよ。そやつらと話をつけて、上手くやったので早かった。」
焔は、胸を張った。
「我の手柄ぞ!何しろ戦う人員が減ってしもうてこちらは不利であっからな。皆寝てしもうてからに。」
蒼は、バツが悪そうな顔をした。
「申し訳ありません、オレが宮の事に席を外していたから。」
維心は、首を振った。
「良い、戦い甲斐があったわ。」と、蒼を見つめた。「で?迅は何と?話を聞いて来たのだろう。」
蒼は、首を振った。
「いえ、明日の朝に話しに参るようですので。それより、これからまた神殿ですか?」
それには、炎嘉が頷いた。
「その前にまた、あの焼き討ちされた村に寄って来なければならないのだ。どうやらそこにヒントがあるらしゅうてな。反政府組織のリーダーから聞いた。」
志心が、うんうんと頷く。
「剣の事についての資料かなにかが、あの村の教会にあるようなことを聞いたのだ。あのバーントという将軍が焼き討ちしたのも、どこにそれがあるのかわからないので探させて、無かった所から片っ端から焼いて行ったようぞ。教会だけは、牧師がどこかに資料と共に隠れたようで、それが敵の手に渡っていないようだ。他の村も同様にして焼き払いながら探したが、見付からないので王が痺れを切らしてとにかく取って来いと命じたから将軍はあの場に居た。ということらしい。」
蒼は、いろいろイベントが起きていたんだなあと思いながら、頷いた。
「じゃあ、街道沿いの魔物との戦闘の時はオレも戦いますから。」
焔が、それを聞いて自慢気にコントローラーを操作した。
すると、そこに地図が現れた。
「それも、反政府組織の奴に飛行系の魔物を借りられての!一っ飛びなので面倒な移動をしなくて良くなったのよ!見よ、ここで行きたい場所に指定を入れるだけで良いのだ。」
嬉しくて仕方がないらしい。
蒼は、段々ストーリーが進んで来たらできるようになるやつだと頷いた。
「それは良かった。では行きましょう。」
そうして、一行はパッと飛んであの、焼かれた村へと渡った。
相変わらずリアルな映像で、村は黒く焼け焦げていて、もはやくすぶってもいなかった。
志心が、先に歩き出した。
「教会はあちらぞ。確か、焼かれてはいたが原型は留めておった。石造りであったからの。」
維心も、頷いて志心について自分のキャラを動かす。
「参ろう。しかし、我らがこのまま行って中に入れてくれるのか?」
炎嘉が言う。
「そこはそら、ここを手分けして調べた時に、駿が教会に行って。」と、駿を見た。「牧師と顔見知りになったのではないか?」
駿が、頷いた。
「そう。ジョセフという名であったわ。旅をしていると言うと、我に全回復アイテムをくれた。引き換えに、魔物を倒したら手に入る、ええっと何という名であったか?あの、爪よ。」
炎嘉が、眉を寄せた。
「あの面倒な能力を持つドラゴンのような魔物を倒したら手に入るあれか?時々消えたり、また別の場所で現れたりするやつ。」
駿は、頷いた。
「そう、それ。それを持っておらぬかと聞くゆえ、持っておったしやった。大層喜んでおった。」
志心は、頷いた。
「ならば教えてくれるやもしれぬの。そやつが居ればの話であるが。」
6人は、そんなことを話し合いながら教会へと向かって行く。
蒼は、進んで行くストーリーをみながらも、十六夜は上手くやっているだろうかと、そればかりが気になって仕方がなかったのだった。




