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七夕の宴の席2

「…まだですね。」シンとしていた中、蒼が、じっと志心を見て言った。「寿命は見えないんですが、亡くなる神特有の気がまだ見えないんですよ。なので、早くても数百年はまだありそうに見えますが…一気に進むかもしれないし。でも、確かに気力は下がっているのに見えないんですよ、志心様が亡くなる未来が。維心様ばりに先が全く見えない。」

焔が、膝を進めた。

「どういうことぞ?」

蒼は、顔をしかめて言った。

「ええっと、オレ達月の命は、命の深いところまで見えているので、本神が気付いていなくても、ああ、先が短いなとか見えるというか、わかる、感じるんですけど、普段は見ないし見えても言わないんです。例えば焔は、ちょっと前に燐と争ってた時はなんだかまずそうな感じに見えたんですけど、維心様が戻った途端にそれがなくなったんですよね。今は全く先が見えないんで、もしかしたら維心様が戻ったことで補佐の役割で維心様が生きてる限りはもしかしたら寿命が切れないのかなって思って見てました。」

焔は、驚いた。

あの時、いくらなんでも役に立たないからと寿命が切られる寸前だったのか。

炎嘉は、何も言わない。

だが、翠明が言った。

「我は?我はどうよ?」と、驚く皆に言い訳のように付け足した。「綾を迎えたばかりで先に逝けばあれが不幸になるゆえ。公青の気などもらったゆえ、寿命が分からぬのよ。」

蒼は、困ったように言う。

「あの、普通は言わないんだ。焔のことは、もう終わったことだから言っただけで。今がどうのと言ってしまうと、皆構えるだろう?でも、翠明は今のところ全く今までと変わらないと答えておくよ。」

翠明は、ホッとした顔をした。

炎嘉が、言った。

「…まあ…皆気になるだろうがそれぐらいにしておけ。蒼がそういう命なのだと知っておるだろうが。言えばまた寝ることになるのではないのか?」聞きたそうにしていた、駿もそれで黙った。炎嘉は、志心を見た。「とにかく、主の命はまだあるようよ。気力が落ちて参ったのは気になるが、志夕が居るしな。今は有事でもない。穏やかに過ごせば良いわ。少し疲れておるのやもしれぬし、面倒は我らに任せてゆっくりせよ。あの面倒な気のことにしても…そうよ、高彰。主なら見張れるの?」

高彰は、驚いた顔をしたが頷いた。

「は。ではそのように。」

まだ若い王だが、その命が歴代最高の王だと宮で崇められている、高彰その神なのだと炎嘉は知っている。

なので、頷いた。

「頼んだぞ。」と、蒼を見た。「して蒼よ。何やら正月の話があると言うておらなんだか。維心も落ち着いたようだし、話せば良いぞ。」

見ると、志心の命がどうのという話に我に返ったのか、維心は落ち着いてこちらを見ていた。

蒼は、頷いた。

「はい。」と、懐から紙を引っ張り出した。「ええっと、別にオレの宮に集まるのでも良いのですが、それだとさすがに飽きて来るだろうなと思って。毎年となるといくらなんでも目新しいこともなくなりますしね。だから、毎回正月に何をしたいのか先に話し合っておいて、それを各宮で持ち回りで毎年やったらどうかなって。もちろん、こちらも提案しますし、目新しいことも探しておきますけど。とりあえず、この間やったことと、他のことをこちらに書いて参りました。他に何か正月にしたいことがあったら、言ってもらえたら。それで、幾つか選んで選ばなかった物は来年に持ち越し、みたいな感じでどうでしょう。」

蒼は、目の前の床にそれを置いた。

この前、月の宮の会合で話し合った時に書いて来たものだ。

皆がそれを覗き込んで、ウンウンと頷いた。

「ほほう、この前やったのが双六、羽子板、香合わせ、楽、舞いか。露天風呂もな。」

箔炎が言う。

焔が、頷いた。

「羽子板は送ってくれたらこちらでも作らせるがの。双六は持って参ってくれぬと、我らには人の生涯など分からぬし。」

蒼は、頷く。

「双六が選ばれたら、もちろん新しいのを作らせて持って行きますよ。」

志心が言う。

「香合わせは今年は女ばかりだったが、我らもやりたいものよ。皆で持ち寄らぬか。」と、高彰を見た。「主の祖先の高彰は、それは良い香を合わせたのだぞ。主もそれを継いでおったら利きたいものよ。」

高彰は、微笑んだ。

「確かに我が宮には秘伝の香が。高瑞はまた違った香を合わせるのですが、では我は祖先に倣ってみせましょうぞ。」

どうやら高彰は、香もできるようだ。

蒼が言った。

「オレは全くだからなあ。判定もできませんよ。全部良い香り、で終わりですから。」

炎嘉が笑った。

「やってみたら良いのに。碧黎ならやりそうだがな。」

それには、維心も顔を上げた。

「そういえば、あれはいつも維月が合わせた香を焚き染めておるようだが、あれの合わせた香がなんとも言えぬ癒しの香りなのだと維月が言うておったな。里帰りから戻って来た時に維月から馨ることがあるが、あれの気と合わさってえもいわれぬ様で、つい眠ってしまうほどぞ。我が寝てしまうので焚き染めるのはやめさせておるがな。」

志心は、前のめりになって言った。

「利いてみたい。なんとの、碧黎の香か。やはり香合わせは外せぬな。」

蒼は、頷いて気で赤い丸をつけた。

「じゃあ、香合わせは決まりで。他に何かありましたら書き足しますけど。」

駿が、項目を見つめながら言った。

「この、めんことは何ぞ?カルタは知っておるが、めんこは知らぬ。」

蒼は、頷いて答えた。

「それは、厚紙に絵が書いてありましてね。それを床に置いて、叩き付けてひっくり返す遊びなんです。相手のめんこを風圧でひっくり返したら自分の物にできます。もちろん、気を使っちゃダメなんですけど。」

炎嘉が、ほほう、と鋭い目になった。

「それは面白そうだの。単純であるから場所も取らぬし。」

「これもやってみます?」蒼は、赤丸を付けた。「なら、正月前にこちらで作ってサンプルをそちらへ送りますね。全く同じ物をそれぞれ作って持って来てもらっても良いですし。変な細工はダメですよ?きちんと紙だけで作るようにしてくださいね。」

皆がウンウンと頷く。

いつもながら、こういう知らないことに関しての神達の反応はとても素直だった。

「羽子板も外せぬのではないのか。」箔炎が言った。「皆維心に一泡吹かせたいのだろう?こやつだけ涼しい顔をしておったが、皆大変なことになっておったからの。」

蒼が、ウンウンと赤丸を付けた。

「他には?あの、月の宮の遊びばっかりですけど、大丈夫ですか?」

維心が、言った。

「珍しいものが良いから皆それで良いのよ。飽きて参ったらまた次の年に考えたら良いではないか。」と、首を傾げた。「そういえば…昔、前世の頃はまだソーラーパネルとやらを置いて、電気を使って動く…あれは、パソコンとか言う。あれで将維が遊んでおったことがあったな。」

蒼は、驚いた顔をした。

「よく覚えていらっしゃいますね。ええ、今でもありますよ。時々将維と碧黎様が対戦ゲームをしてますね。ホントに暇な時だけですけど。あれは人の遊びですからね。」と、顔をしかめた。「でも…あの機械を設置するのが大変なんです。昔は小さな画面だったんですけど、今は巨大なスクリーンで…シート型なんです。人世からの帰還者に丸投げしてるので、オレには設置ができません。やるなら月の宮しか無理ですね。」

焔が、興味を持ったようだった。

「なんなら、そのパソコンとやらを仕入れさせようか?全部の宮に設置しておけば、どこへ行ってもやりたければできるだろう。ええっと、紙幣とやらが要るのだったな。(きん)を2、3キロ替えてこさせようか。足りぬか?10キロぐらいか?」

蒼が、慌てて言った。

「そんなに要らないよ!というか、今のレート知ってる?一昔前とは考えられないほど高騰していて、500グラムでもお釣りが来るほどなんだって。」

焔は、首を傾げた。

「レート?」と、顔をしかめた。「何ぞそれは。」

蒼は、ため息をついた。

「いや、その、人世のことはオレに任せて。必要なら買い付けに行かせて設置は臣下にさせるんで。」

炎嘉が笑った。

「まあ、それはいろいろ飽きてからで良いではないか。とにかく、今回は羽子板、めんこは蒼に頼んで、後は…香合わせは我らもできるし、楽かの。舞いは興が乗ったらで良い。三日あるしなあ…双六も頼んで良いか?」

蒼は、頷いた。

「分かりました。新しいやつを作っておきますね。」

「今回は一攫千金コースに行くぞ。」 焔が言った。「堅実にしておって維心に追い抜かされたからの。結局翠明が一番先に上がりよったが。」

翠明は、苦笑した。

「出目が良かったからの。来年も楽しみであるな。」

蒼は、双六と楽にも丸を付けて微笑んだ。

「ホントにね。でもどこの宮でやります?」

皆が、顔を見合わせる。

「…龍の宮でやるか?」

維心は、眉を寄せた。

「それだと我が普段と変わらぬではないか。」

炎嘉が、焔を見る。

「焔は?主、パソコンの設置に前向きだったしの。」

焔は、ブンブン首を振った。

「我だって日常から離れたい!主の宮は?」

炎嘉は、顔をしかめた。

「我だって同じ心地よ!」

と、駿に視線が行ったが、駿は即座に首を振った。

「うちは妃が居らぬしゴタゴタしておるから無理ぞ!」

翠明も、顔をしかめる。

「別に良いが、綾がなあ。子がまたその頃に生まれるしなあ。」

妊娠していたのか。

皆知らなかったので、ここに居ない公明の話題になった。

「公明ならどうか?」

駿が、ため息をついた。

「ならぬ。桜がこの度子を生んだゆえ、恐らくその辺りは子育てで忙しい。」

どこも出産ラッシュだ。

蒼が、うーんと言った。

「いっそ、旅行します?」皆が驚いた顔をする。蒼は続けた。「どこか、北とか、北西とか。空き宮があちこちにあるはずですから、そこに集まるとか。皆で結界を張れば、危ないことはないでしょう。」

炎嘉が言った。

「それが良い!別に大陸まで行かぬでも、旭の領地なら広すぎて売るほど土地があるゆえ。今回は旭も呼んで、皆で遊ぶのよ。温泉も出るぞ、あの土地は!」

いつもおっとりと離れた土地で正月を迎えているはずの旭にとっては、寝耳に水だろうな。

蒼は思ったが、あの広い土地にちょっと集まっていても特に邪魔ではないだろう。

旭不在で、最上位の王達は、楽しげに話を進めていたのだった。

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