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会合

そんな中でも、月の定例会合は行われる。

とはいえ、王の数が減ったので準備もその分、楽になっていた。

今回の会合は、白虎の宮だった。

維心は、後を維明と義心に託し、白虎の宮へと飛び立って行った。


月の会合の席では、いつものように各宮から先に提出されていた案件の処理からだったが、それも格段に減っていた。

世話をする神達が優秀なので、まずここまで来るまでに傘下の面倒はその上の王が処理してしまうので、わざわざここまで来ないで済むのだ。

そんなわけで、そう時も掛からず会合は終わった。

もちろんの事、過去を知るものや未来を知るものの事は神世に公言されていないので、誰も知らない。

知って居るのは、最上位の宮と上位でも一部の宮の王だけだった。

皆が宴の席へと移動する中、先に檀上の席に収まった最上位の王達は、いつものことながら話をしていた。

「定満…いや、定弥の宮の亀裂の件は驚いたものよ。」志心が言った。「急な話であったな。大きな損害が出たが、とりあえず宮は無事であったそうな。」

維心は、頷いた。

「我が閉じたゆえ問題ない。」と、宴のための大広間に、皆が揃うのを見てから、言った。「…後で話す。」

志心は頷いて、立ち上がった。

「此度も皆、ご苦労であった。労いの酒を用意したゆえ、皆楽しんでもらえればと思う。」

そして、サッと座った。

「して?あれは真実何が原因であったのよ。陸が案じておったらしい。自分の結界と接しておった所で、話しては居たがそれでも起こったことらしいからの。」

維心は、答えた。

「あの二人の結界が干渉し合ってというのではない。主と高晶の時とはそれが違う。あれは…恐らく、流れを元へ戻そうとした動きではないかと、我らは見ておる。」

志心は、眉を寄せる。

炎嘉が、言った。

「…だろうの。本来ならば、定成は死んであの宮は滅びの道を歩むはずであった。だが、定成は生き残り、宮は残った。あのままでは恐らくは、宮ごと無くなっただろうと思われる。ゆえ、維心と、あれは無理やりに流れが起こしたものなのだろうと話しておったのよ。」

焔が、顔をしかめた。

「どういうことぞ?」

維心と炎嘉、志心は顔を見合わせた。

そして、維心が言った。

「…もう良いだろう。もう全て終わるしな。実は、我らは過去を詳細に知るものと、未来を知るものをどうしたものかと悩んでおったのだ。そんなものが居る事実を、我も問題が起こる直後まで知らぬでな。蒼からもう黙っていられぬと炎嘉に話し、それがしばらくして我に来た。炎嘉も、最初は我に知らせずやれと言われて、無理だと頭を抱えて志心に話した。なので、三人で対応をしておったのだ。」

翠明が、目を丸くした。

「何と申した?過去と未来と?」

維心は、神妙な顔で頷いた。

「詳しい事は省くが、過去を知る二名と、未来を知る二名が転生しておる事実を知った。その一人が定成、あの、定弥の弟よ。」

翠明は黙り込む。

箔炎が、言った。

「それは、きちんと処理したのだろうの?今申したということは、終わったということで間違いないな?」

また面倒がと落ち着かないらしい。

炎嘉が、頷いた。

「定成の記憶は、例外として天黎が消した。未来の記憶は、その性質上縛りがあって、玉にできぬようになっておってな。我らでは手に負えなんだのよ。だが、天黎が消した。もう一人は、聡子、塔矢の第一皇女ぞ。」

焔が、目を丸くした。

「え、確か月の宮に入るとか聞いたアレか?」

維心は、頷いた。

「そう。あれも、天黎が娶ることであれを見張ると言い張るので、そうなった。確かにあれが見ておって何かある事は無い。ゆえ、そちらの事はもう、終わったのだが…最近までごたごたしておったのは、過去を知るもののことぞ。」

駿が、険しい顔をした。

「…何やら探しておると蝦夷やら北やらへ龍の軍神が出ておったの。あれか。」

維心が、頷いた。

「そう。涼夏と迅の二人が、それを持っておった。ゆえ、それを消そうとしたのだが…迅は、その記憶が無くなれば、己の宮を滅ぼす事になると、消されては困ると蒼に訴えたのだ。それでも、面倒だから消そうとしておったら、逃げた。己のせいで宮が滅ぶのは否と思うたからぞ。」

高彰が、言った。

「その気持ちは、分かる。」と、杯を置いた。「記憶が無くなったら、宮の危機を気取れぬようになるところであったのか?」

炎嘉が、それには答えた。

「その通りよ。あの宮はの、陸が愛羅との離縁で呆けて、迅と昌士の二人の王座争いで滅ぶ未来があった。それを、未来を知るものから知ってしもうたのだ。迅は、過去の記憶も全てを持っておったから知った事実であることを分かっておったし、己が宮を滅ぼす事実を知っていた。あの時点ではの。だが、記憶が無くなったらそれを知る自分が居らぬようになって、恐らく努力して認められていた第一皇子の自分が王座に就くべきだと争うだろうと恐れた。だから逃げたのだ。回りが必死に未来を変えようと励んだ結果、陸は呆ける事も無く、昌士も宮に馴染もうと励み、迅は月の宮に留まっていた。それなのに、それが崩れる事になると思うたのだ。」

高彰は、じっと杯の酒を見つめながら、言った。

「…できたら、迅には温情を与えてやって欲しいと思うがの。」

高彰には、己が原因で宮が滅ぶという苦しみが、分かるのだろう。

高彰自身は宮を大きくしっかりとさせた功績があったが、それを継いだ者達が滅ぼしそうになったのを、黄泉から見ていた。

宮が滅ぶという事を、現実として感じたことがある高彰にとって、耐えがたい事だと思ったのだと思われた。

維心は、頷いた。

「我もそのように。幸い碧黎がそれを汲んで、過去の事を、詳細に知っておる部分だけを消して戻そうと申しておるのだ。ゆえ、問題ない。記憶の処理が終わったら、迅は月の宮にはもう戻れぬので、陸が宮へ引き取るだろう。なので、案ずる事は無い。」

高彰は、ホッとした顔をした。

「そうか。ならば良かったことよ。」

そうして、やっと杯に口をつけた。

炎嘉は、維心が聡子が詠み人である事実は、他の者達には伏せているのを気取っていた。

恐らく志心も同じだろう。

未来を知っている、とだけ皆に知らせておこうと思ったのだろう。

確かに、要らぬ懸念は撒かぬ方が良いと判断したとしたら、その通りだと炎嘉も思った。

なので、黙っていた。

焔が、言った。

「それで…もう一人は?女が居ったろう。確か罪人の娘の。」

維心は、ため息をついて頷いた。

「ああ。そちらは、やはり何と申すか…人なのだ、中身が。どう頑張っても神にはなれぬ。体は神だが、命がまだ幼過ぎて神の中ではつらかろう。ゆえ、人に落とす事にした。神であった記憶も、過去の詳細な記憶も消し去り、人としてやり直すために。それしか、あれには生きる道はない。黄泉へやることも考えたが、碧黎が神としての命を切り離してやれと申すから。そうすることにしたのだ。今は地下牢最上層に籠めておるが、そのうちに碧黎が参って処理をすることになっておる。それで、終いぞ。」

焔は、ハアアアと盛大にため息をついた。

「良かった!」と、扇を出して己を仰いだ。「何やらごたごたしておって、今年は正月遊ぶこともできなんではないか。この調子だと来年はやっと旭の離宮の温泉に行けるの!今年は残りをそれをよすがに頑張れるぞー!」

炎嘉が、呆れたように焔を見て笑った。

「主は。そればっかりではないか。まあ、今年はまだ弥生も中旬だしの。これからまだ長いが、何も無い事を願うが良い。我も願っておくわ。」

焔は、軽く炎嘉を睨んだ。

「不吉な事を言うでないわ。そもそもこれほどに詰まっていろいろあるのは珍しいではないか。恐らく問題ない。そう願う。」

それから、次の正月の話に花を咲かせ始めて、その日の宴は久しぶりに何の懸念もなく遅くまで酒を酌み交わしていたのだった。

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