佳代子ちゃんのスキー教室!①
緊張とワクワクが入り混じって眠れない長い夜が明けた。
こんな夜は小学校の修学旅行以来だった。
(……そういえばスキーって何持っていけばいいの!?)
根本的な問題に気づいて急いでスマホで調べてみる。
どうやらスキーウェアとスキー板とストックとブーツはレンタルで貸してもらえるらしい。
(これだけあれば一応滑れるかな?)
あとはグローブと帽子、これはおばあちゃんに借りることにした。
そんなこんなで一応できる限りの準備が完了した。
佳代子ちゃんがメッセージで送ってきた待ち合わせ場所に向かって歩く。
下手に走ると凍った路面にすってんころりんしてしまう。
雪国は思ったよりデンジャラスだ。
待ち合わせ場所は昨日の温泉の前。
しばらくする佳代子ちゃんとお父さんの車が見えた。
「おーい! 柚ちゃん! こっちこっち!」
佳代子ちゃんが車の助手席から手を振っていた。
雪代家の車の中にはピカピカのスキー板や高そうなスキーウェアなどが乗っけてあって、
うまく言葉にはできないけどプロっぽい感じがした。
外と比べて車の中は温かすぎて寝不足の私には良質なASMRくらい良く効いた。
――――ウィーン
初日に一度聞いた不穏な音がして私は思わず閉じていた目を見開く。
「ガッハッハ! 眠気がバッチリ覚めたろ?」
「ふふっ、そういえば柚ちゃん、スキー板とかは持ってないからレンタルするよね?」
「うん、一応そうするつもり」
「全部一式貸してあげるよ! 兄妹の持ってきたから!」
「いいの?! 申し訳ないよ~」
「いや、レンタルでも値段なかなかするよ~?」
そう言って佳代子ちゃんはスキー場のホームページからレンタルの値段を見せる。
「ひ……じゃあ、お言葉に甘えて……」
昨日から雪代家のお言葉に甘えてばっかりだ。
だんだん車は山道を登っていく。
バスも通るせいか思ったより結構広い道。
そして突然開けた場所に出る。
「わぁ……広い」
駐車場には大型バスや県外ナンバーの車がたくさん停まっていて多くの観光客が来ているのがわかる。
結局、佳代子ちゃんからはスキーウェアとゴーグル、
おばあちゃんから借りた帽子とグローブも佳代子ちゃんの家の物にチェンジした。
スキー板とブーツやストックはスキー場の物をレンタルすることにした。
「よしっ、じゃあ気をつけてな!」
「「行ってきまーす!」」
ザクザクと雪を踏みしめる。
思ったよりショートブーツでもレンタルのできるインフォメーションセンターまでは辿り着きやすかった。
スタッフさんに足の大きさと身長を聞かれてスキー板とストックと重たいブーツを借りてスキーの板にドッキングする。
「足が……お、重い……」
「お、借りれたね! じゃああのキッズゾーンってところでカニ歩きで坂を登る練習と
上手に転ぶ練習をしよう!」
「カニ歩きと上手に転ぶ練習?」
「うん、私も一番最初に習ったのがこの練習。と言っても十年以上前のことだからあたしはあんまり記憶にないんだけどね」
そう言いながら佳代子ちゃんは遠い山の上を見つめる。
今やインターハイに出場するくらいの選手だけど、これまで沢山の汗と涙を流して成長してきたんだろう。
比べて私はそんな大層な人生を送っていない、東京の隅っこに住むただの女子高生。
「柚ちゃんどうしたの? 不安?」
「いや、何でもない!」
「柚ちゃん、大丈夫だよ! 絶対滑れるようになるから!」
佳代子ちゃんの言葉はいろんな意味で私の心を押した気がした。
スッキリと晴れた気持ちで私の人生史上三回目のスキー教室が始まる。
最後まで読んでいただきありがとうございます!




