この先もあなたと繋がれるように
私たち二人は温泉街の中をぶらぶら雑談しながら歩く。
さっきまで曇っていた空はすっかり晴れきっていた。
雪の結晶のような細かい欠片が降ってきたと思ったら、冬の冷たい風にさらされた電線から落ちてきている雪だった。
「あ、そうだ柚ちゃん! 連絡先交換しない?」
「え? あー……いいけど……?」
「なんで疑問形なのさ~やっぱりシティーガールだから星の数くらい友達がいるとか?」
友達数の圧倒的に少ないスマホの画面を見る。
雪代さんは都会に住んでいてもコミュニケーション能力と勇気がなければ友達ができないことを知らないらしい。
なんだか申し訳なさそうに私はコードの映ったスマホの画面を見せて雪代さんはスマホでコードを読み取る。
(よく考えたら私、お父さんとお母さんと幼馴染の綾ちゃんしか連絡とってないな……っていうか雪代さんみたいな人間は上京しても絶対うまくいくタイプな気がする)
私はそんな言葉を言う寸前で飲み込んだ。
ピロリン
スマホの通知音が鳴る。
「ほいっ! 初めての都会の友達~! なんかめっちゃ嬉しい!」
「私も初めて、田舎の友達」
「これからもよろしくね! 柚ちゃん!」
「うん、雪代さん」
「ね~雪代さんって、同い年なのにあたしだけ年上に見られそうで恥ずかしいよ~佳代子ちゃんって呼んで♡」
上目遣いで雪代さんはおやつをおねだりする子犬のようなキラキラした瞳で私を見つめる。
多分そこら辺の男の人におんなじ顔をしたらなんでもほしい物を買ってもらえそう。
スポーツ万能の女の子に綺麗な顔を与えちゃう神様もかなりいい加減だ。
「じゃあ、佳代子、ちゃん?」
「ありがとうぅぅう~!!」
佳代子ちゃんは私に勢いよく抱き着いた。
不純だと思うけど大きな胸がふにっと柔らかくてドキドキした。
誰かにギュッとされるとお母さんを思い出すけど、今はなんか違う気がする。
愛されているより、そばにいたい。
そんな気持ちをうすうす感じていた。
「柚ちゃん、明日予定なかったら一緒にスキー行かない?」
「えぇ!? 私まともに滑れないよ!?」
「大丈夫! インターハイ出場経験のあるあたしが教えてあげるから!」
「おばあちゃんの家に着いたら後で連絡してもいいかな?」
「いいよ~! 連絡待ってるね!」
そのまま佳代子ちゃんと別れて私はおばあちゃんの家に向かった。
豪雪地なので玄関は階段を上った先の二階にある。
ちなみに一階は車庫や漬物などが付けてある物置兼倉庫になっている。
おじいちゃんが亡くなる前に二台あった車は今はおばあちゃんの車一台になっていて、
どこか寂しさを感じた。
インターホンを押す。
「はーい、今行きます~」
随分前に会った時より若干しゃがれたおばあちゃんの声がする。
少しして引き戸の玄関ドアが開いた。
「あら! 柚ちゃんじゃない、大きくなったねぇ、今日明日泊まっていくんでしょう?」
「うん。あと……明日友達とスキーに行く約束をしたんだけど行ってもいいかな?」
「全然いいよ、もうできたんだね友達、どこの子?」
「雪代佳代子ちゃんって子だけど」
「あぁ、スキーで有名な家の子だね、いつも挨拶返してくれる優しい子だねぇ」
「本当に優しい子で初対面だったけど温泉まで紹介してもらって一緒に入ってきちゃったよ」
「あっはっは! じゃあ明日は楽しんでおいで、お部屋は上の階の突き当りだよ」
私は階段を上り、突き当りの部屋のふすまを開ける。
この家に来たのは何年ぶりだろう。
呼吸をするたびなんだか懐かしい気持ちになる。
おばあちゃんのOKをもらったので早速私は佳代子ちゃんに明日のスキーに行けることを報告する。
『こんにちは、柚です』
送信ボタンを押すだけなのになんか妙にドキドキしている自分がいる。
送信ボタンを押してから数分が経った。
既読が付くまで何回も画面を見てしまっていてそんな自分に羞恥心を覚え始めた頃。
ピロリン
スマホの通知音が鳴った。
『ごめん~! 屋根の雪かきでスマホ見れなかった! 明日の連絡かな?』
何とも豪雪地らしい返信が返ってきた。
『うん、明日の連絡だけどOKだって』
私が返信すると
『やった~!』と飛び跳ねるスタンプが返ってきた。
(喜んでる時の佳代子ちゃんにそっくりだ)
これからもこんな関係が続けばいい。
心の奥で囁くようなそんな気持ちが芽生えてる。
最後まで読んでいただきありがとうございます!




