また会える
とうとう出発の日の朝が来てしまった。
雪国らしく空模様はどんよりしていて雪がちらちら降っている。
最後日の天気は雪。
この地域らしくてなんだか離れるのが少し寂しい気持ちが募る。
キャリーバックの荷物を整理する。
中からはらりと紙のようなものが落ちた。
スキー場で買ったリフト券だった。
結構な値段がしたとしみじみ思った。
つい最近の事なのにすごい昔のことみたいに懐かしい。
でも鮮明に覚えている。
なんだか不思議な気持ちが心の中で混ざり合っていた。
ピンポーン
インターホンの音がした。
スマホの時計に目をやる。
楽しかった時間はあっという間に過ぎていく。
急いで玄関に向かうとおばあちゃんと佳代子ちゃんと佳代子ちゃんのお父さんが話をしていた。
「あ! 柚ちゃん来た!」
「佳代子ちゃん、わざわざ新幹線の駅まで送ってくれるの?」
「任せなさい! おじさんは佳代子がいっつも嬉しそうに柚ちゃんの話をしてるのを知っているからなぁ! 佳代子と友達になってくれてありがとうな! これからも仲良くできるなら仲良くしてやってくれよ!」
佳代子ちゃんのお父さんはニッと歯をみせて笑った。
おばあちゃんもうんうんと頷いている。
「私も村にいる間、沢山お世話になりました! この村にはまた東京の家族も連れてこようと思います。おばあちゃん、佳代子ちゃんのお父さん、ありがとうございました!」
いつかお礼をするならこの村にもう一度来て顔を見せることが一番だろう。
そう思って私は佳代子ちゃんのお父さんが運転する車に乗り込む。
車の窓を開けておばあちゃんと手のひらと私の手のひらを合わせる。
「おばあちゃん、体調に気を付けてね! 元気でね!」
「うん。また近いうちにこの村においで」
「うん! 絶対また来るね!」
車が動き出して家の敷地から出ていく。
見送るおばあちゃんの姿はどんどん小さくなっていく。
また、今度は夏休みに会いに来よう。
車は雪の降り積もる道路を走り続ける。
車の中はラジオから流れる歌謡曲だけが流れているだけで恐ろしく静かだった。
「ねぇ、柚ちゃん、プレゼントがあるんだけどいい?」
「プレゼント!? いいよもったいないよ!」
「だめ、私のこと忘れてほしくないから、貰ってほしい」
そう言って佳代子ちゃんが取り出したのは透き通った翡翠色のガラス玉のついたネックレスだった。
「綺麗……」
「これ、私が作ったんだよ」
そう言いながら佳代子ちゃんは私の首にネックレスを着けてくれた。
着ける最中お互いの顔の距離必然的に近くなってドキドキした。
「うん。似合ってる! そういえばこのガラス玉最初は青色にしたんだけど、柚ちゃんの名前の柚は黄色だからって黄色混ぜたら緑色になっちゃたの」
「ふふ……佳代子ありがとう、これとっても綺麗」
「よかった! 気に入ってくれて」
二人でこうやって笑いあう時間もあと少しで終わりだ。
「もうすぐ駅だぞぉ~柚ちゃん、忘れ物とかないよな?」
「大丈夫です。送迎までしてもらって、本当にありがとうございました!」
「そうだな、また来てくれよな!」
私たち二人は新幹線の改札を抜けて、ホームに向かって走り出す。
ホームと新幹線の車内の境目が切なくて、それだけで少し目頭が熱くなる。
「佳代子ちゃんとは一度お別れだね」
「そうだね……また会えるよね?」
「会えるよ。私、絶対佳代子ちゃんに会いに行く!」
「あたしもずっと待ってるから!」
もう二人とも涙で前が互いの顔が見えないほどに目に涙が溜まっていた。
最後に佳代子ちゃんが私ぎゅっと抱きしめる。
今までで一番強くしっかりと。
すると出発の合図のアナウンスが流れた。
ホームのバリケードと新幹線のドアが閉まる。
音が遮断され、佳代子ちゃんの声は聞こえなくなった。
新幹線はゆっくり動き出した。
涙を袖で拭い、佳代子ちゃんに手を振る。
新幹線はすぐに速度を増して佳代子ちゃんの姿は一瞬で見えなくなってしまった。
ふぅ、と深呼吸して窓際の指定席に座る。
車窓からは雪の降る菜花温泉村が遠くに見えた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!




