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名もなきうた  作者: 空野 翔


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3/5

温度で覚えている

記憶には温度がある


あの夏の日のアスファルトの熱さ

冬の朝に触れた水道の冷たさ

誰かの手のあたたかさ

言葉より先に体が覚えている


悲しかった日の空気はじっとりと重くて

うれしかった日の風は軽かった

出来事は忘れても温度だけが残ることがある


なぜあの場所を懐かしく思うのか

うまく説明できないのは

それが言葉じゃなくて

温度の記憶だからだ


冬になると、あの人のことを思い出すのも

たぶんそういうことだ


寒かった日に隣にいてくれた

その温度が

体のどこかにまだ残っているから


温度は嘘をつかない

体はちゃんと覚えている


忘れたくないものは

言葉にするより

もう一度触れてみるといい


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