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第12話 スキルの話ってのはよ……機密事項だろ?

頭を掻きながら、ハヤオが小さく息を吐いた。


「……いいか、ノリヒト」


 視線は前――動かない。


「こいつら……マジで強い」


 言葉は軽い。だが、その声はわずかに沈んでいた。


「特に虎徹。あいつとは相性が最悪だ」


「ほう」


 ノリヒトが、刀を肩に担いだまま口角を上げる。


「凄いな。お前がそこまで言うとは」


「冗談言ってる余裕ねえんだよ」


 ハヤオは肩を回す。関節が、嫌な音を立てた。


「……あいつの武器はな」



 一拍。


「俺たちのスキルを――」


「おい」


 その瞬間。


 指が、こちらをまっすぐ指した。


 虎徹だ。


「ベラベラ喋るな」


 低い声。だが、空気が一段沈む。


「スキルの話ってのはよ……機密事項だろ?」


 口角が吊り上がる。


 笑っているのに、目が笑っていない。


「まあ」


 横で、アントニオが肩を鳴らす。


「どうせ死ぬんだから、関係ねえか」


 ――ゾン、と空気が歪んだ。


「行くぜぇぇぇぇぇッ!!」


 咆哮。


 骨が軋み、筋肉が膨れ上がる。


 アントニオの身体が――変わる。


 獣化。


 膨張する筋肉、裂ける皮膚、伸びる牙。


 人の輪郭が崩れ、**“捕食者”**へと塗り替わる。


「……はっ」


 ノリヒトの目が細まる。


「面白い」


 その瞬間――


 空中に、音もなく“現れた”。


 斧。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 ――十。


「……は?」


 ハヤオの口から、乾いた声が漏れる。


 十本の斧が、静かに浮かんでいる。


 回転すらしていない。


 ただ、“そこにある”。



 ――次の瞬間。


 消えた。


 いや、


 “来た”


 カキィィィンッ!!


 火花。


 腕に、衝撃。


 骨が軋む。


「っ……!!」


 見えない。


 軌道が読めない。


 正面から防いだ――はずなのに、


 次の一撃は、背後から。


 さらに横。


 さらに死角。


「クソッ……!」


 連撃。


 防ぐだけで精一杯。


 呼吸が、乱れる。


(隠蔽しても……意味ねえ!)


 その瞬間。


 視界が、黒く染まった。


「遅ぇよ」


 目の前に、虎徹。


 拳。



 ――直撃。


 ドゴォッ!!


 肋骨が悲鳴を上げる。


 空気が、肺から強制的に押し出された。


「――ぐっ……!」


 身体が浮く。


 地面を転がり、数メートル先で止まる。


 視界が揺れる。


 呼吸が、入らない。


(……内臓、やられたか)


 血の味。


 だが、笑う。


(最高だな、おい……)


「ハヤオォォォ!!」


 ノリヒトが踏み込む。


 だが――


「よそ見してんじゃねえよぉッ!!」


 アントニオ。


 巨大な爪が、空間を裂く。


 ガキィィン!!


 刀で受ける。


 だが、重い。


 重すぎる。


 地面が砕ける。


「……ッ!!」


 押される。


 腕が、沈む。


「いいなぁ……その顔」


 アントニオが、笑う。


 牙の間から、唾液が垂れる。


「必死だなァ!!」


 さらに圧力。


 押し潰される。


 ――その瞬間。


 横から。


 風。


 いや、


 殺意。


 斧。


 ノリヒトの首を狙う。


「……チッ」


 防げば、アントニオに喰われる。


 受けなければ、首が飛ぶ。


 ――選択。


 踏み込む。


「仕方ないな」


 刀を、上段へ。


 空気が、静まる。


 アントニオの笑みが消える。


 虎徹の目が細まる。


「……おい」


 虎徹が低く言う。


「逃げろ」


「は?」


「アントニオ」


 一瞬の静寂。


「それは――」


 ノリヒトの声。


「死ぬやつだ」


 振り下ろされる。


「裂けろ」


 ――斬。


 世界が、ズレた。


 音が、遅れてくる。


 空間が、ずれる。


 アントニオのいた場所が、


 “無かったこと”になる。


 ズズズ……


 背後の木々が、岩が、


 遅れて――


 真っ二つに滑り落ちた。


「……は?」


 アントニオが、着地しながら呟く。


 数メートル離れている。


 ギリギリで、跳んだ。


「空間ごと……斬ったのかよ……」


 虎徹が、舌打ちする。


「チートかよ」



 その瞬間。


 風が鳴る。


 ハヤオ。


 消える。


 いや――


「速ぇ……!」


 虎徹が腕を上げる。


 ギィィン!!


 斬撃。


 防ぐ。


 だが、


 重い。


「……加速か」


「正解」


 背後。


 ハヤオ。


 刃が、振り抜かれる。


「取った――」


 その瞬間。


 ガキィィン!!


 斧。


 十のうちの一つ。


 勝手に動き、受け止める。


「……だよな」


 ハヤオが笑う。


「それがあるから嫌なんだよ、お前」


 虎徹も笑う。


「知ってる」


 拳。


 振り抜かれる。




 ――家の中。


「……まずいな」


 モルテリアが、ぽつりと呟いた。


 静かだ。


 だが、声がわずかに低い。


「うちの男ども……今日、死ぬかもしれん」


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