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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』と誕生日  作者: 橋本 直
第三十二章 『特殊な部隊』の仲間達
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第78話 正月前、現場は騒がしい

 久しぶりの隊はすっかり正月の準備ができていた。警備室の真新しい土嚢で囲まれた機関銃陣地の隣には門松が立っていた。

挿絵(By みてみん)

「サラの奴……まずは射撃場に来いって……なにすんだ?銃の話なんだろうが……見当もつかねえな。まあ射撃場だから銃に関することなんだろうけどよ……アイツはそもそも本当に戦闘のために作られた人造人間『ラスト・バタリオン』という悲劇の存在なのか?あの能天気な年中笑ってる馬鹿面のどこに悲劇性があるんだよ。詐欺じゃねえか。そもそも体力は人並み。おつむは島田とどっこい。見てくれは……まああれくらいのアイドルは山ほどいるというかアイツどう見ても白人だから東和でデビューすれば間違いなく売れるだろうけど、立ち位置は『外タレおバカキャラ』だろうな。実際、この東和の元になった『昭和・平成の日本』にはどう見ても埼玉県出身にしか見えないという伝説の外タレがいたらしいが、あいつも埼玉県とそっくりの埼王県出身だし。タレントには向いてるかもしれねえがどう考えても戦争には不向きじゃねえか。あんなもんを馬鹿高いコストをかけてゲルパルトは技術の総力を挙げて開発したのか?ただの金の無駄で技術の無駄。大金つぎ込んで『外タレおバカキャラ』しか作れないようじゃあそりゃあ戦争にも負けるわな。そいつが銃?これも繋がらねえよ。アイツの腕力じゃカウラの使ってる1911の.45ACP弾なんて2発も撃ったら手がしびれたとか大騒ぎするぞ」


 かなめは駐車場に停められたカウラの『スカイラインGTR』から降りるとそう言いながら伸びをした。


 そのまま隊舎の裏にある土嚢の山を抜けて広大な射撃場にたどり着くとすでにそこには人だかりが出来ていた。訓練をサボって首からアサルトライフルをぶら下げた技術部員が背伸びをしていた。手持ち無沙汰の整備班員はつなぎの尻をかきながら背伸びをしてレンジの中央を覗こうと飛び跳ねた。


「やってるな……それにしても匂いが気になるな……昨日は凄かったから」 


 かなめは昨日の事を思い出しながらにんまりと笑って足を速めた。その言葉で車内の妄想が一瞬よぎる誠とアメリアだったが、出来るだけ昨日のことは忘れようとサラの間抜け面を思い出して大きなため息をついて誤魔化しにかかった。それを見かけたブリッジクルーの女性隊員が人だかりの中央に向かって声をかけたようだった。


 すぐに人垣が二つに割れて中央に立つ珍妙な格好をしたピンクの長い髪の女性が誠達からも見えるようになった。


「あいつ……馬鹿だ。ここはどこだ?今はいつだ?その辺を少しは考えろよ」 


 サラの衣装を見た途端に立ち止まったかなめがつぶやいた。こればかりは誠も同感だった。


 テンガロンハット、皮のジャンバー、色あせたジーンズ。そして腰には二挺拳銃を下げる為の派手な皮製のガンベルトが光っていた。衣装だけは立派だが、その格好を馬鹿なサラがすると西部劇のヒロインガンマンと言うよりもアメリカの田舎町の祭りに引っ張り出された場違いな馬鹿のように見えた。

挿絵(By みてみん)

「ふ!」 


 わざと帽子のつばを右手で下げたかと思うとすばやく跳ね上げてサラは誠達を見つめた。隣ではそんなサラをうれしそうに写真に撮っているパーラの姿も見えた。


 いつになく元気に明るい表情で自らいろんな構図に拘ってカメラを構えるパーラを見て誠はアメリアやかなめの命令以外で自主的に前向きに行動するパーラを見るのが初めてだということに気が付いた。


「パーラ……溜まってたのね……あんなにうれしそうにサラのアホな姿を撮ってるなんて……これで今週はストレス解消法の転職情報誌を買いに行かなくて済むわね。良かったわね、パーラ」 


 さすがにあまりにも満面の笑みのサラとそれを夢中で撮影するパーラの態度にはアメリアも複雑な表情にならざるを得なかった。


「風が冷たいねえ……そういえばダコタで馬車強盗とやりあったときもこんな風が吹いていたっけ……」 


 そう言うとサラは射撃場の椅子にひらりと舞うようにして腰掛けた。手にしているのはかなめの愛用の葉巻のコイーバ・ロブストだった。タバコが吸えないサラらしく、当然火はついていないし煙も出ない。


「何がしたいんだ?お前は?ここは司法局実働部隊の本部だ。ウェスタン村じゃないぞ。そんな格好がしたかったらちゃんと下野県にそう言う施設があるから。そこに転職しろ。オメエは顔が洋風だからそのピンクの髪を金色に染めたら間違いなく即採用してくれる。今すぐ転職しろ」 


 サラに歩み寄ったかなめは馬鹿にするようにそう語りかけた。


「お嬢さん?何かお困りで?」 


 そう言うとサラは胸に着けた保安官を示すバッジを誇らしげに見せ付けた。お嬢さん呼ばわりされたかなめはただ茫然とサラを見つめた。ダウンジャケットの下はタンクトップにジーンズと言う明らかに常人なら寒そうな姿だが、それ以上にサラの雰囲気はおかしな具合だった。

挿絵(By みてみん)

「ああ、目の前におかしな格好の姉ちゃんがいるんで当惑しているな。自分が本当に自分の隊に出勤してきたのかどうかを悩んでいるところだ」 


 銃は人を殺す道具としか考えない銃に関しては完全な合理主義者のかなめは見下すような口調で雰囲気に酔っているサラに向けてそう言った。


「ふっ……おかしな格好?その野郎はどんな格好でしたか?お嬢さん」


 サラは相変わらず西部劇の保安官の役に完全にはまり込んだ口調でそう言って火のついていない葉巻を吹かした。 


「ああ、マカロニウェスタンに出てきそうなインチキ保安官スタイルの姉ちゃん。しかもコイーバはアメリカじゃあまだ買えないぞ。あそこはキューバと国交が無いし、アメリカはキューバには経済制裁を課しているからな」 


 そう言われてもサラはかなめから掠めたであろう火のついていない葉巻を咥えたままにんまりと笑って立ち上がるだけだった。


「そう言えばネバダで……」 


 たわごとをまた繰り返そうとするサラに飛び掛ったかなめがそのままサラの帽子を取り上げた。


「だめ!かなめちゃん!返してよ!」 


 いつもの馬鹿娘の素が出たサラがぴょんぴょん跳ねた。ようやく笑っていいという雰囲気になり、野次馬達も笑い始めた。


「駄目よ!かなめちゃん!返してあげなさいよ!せっかくこれからより珍妙な話題が聞けるんじゃないかなあと思ってたのに!」 


 上官と言うより保護者と言う雰囲気でアメリアはピシリとそう言った。ようやくその場の雰囲気が日常のものに帰っていくのに安心して誠達は射撃レンジに足を踏み入れた。


 サラの仮装に飽きた誠は射撃場の机の上に誠は目をやった。サラが飛び跳ねている後ろには、小火器担当の下士官が苦い表情で手にした弾の入った箱を積み上げていた。


「たくさん集めましたねえ。このサラさんが下げてる西部劇でよく出て来る銃の弾の種類ってこんなにあるんですか。そんなに需要のある銃なんですか?古そうなリボルバーなのに……こんなの今使う人なんて居ないでしょう。もう27世紀なんですよ。それにここはアメリカの西部でも無ければ地球ですらない。誰があんな銃を欲しがるんですか?というかどうやって手に入れたんです?東和じゃ銃なんて普通は買えないし、『武装警察』の武装としてはあんな古そうな銃は役に立たないでしょ?」 


 誠もその弾の種類の多さに感心した。そこには時代物を装うようなパッケージの弾の他、何種類もの弾の箱が並んでいた。技術部の銃器担当班の下士官がそれを一つ一つ取り出しては眺めていた。


「まあな。入手ルートはいつもの班長のアレだ……『訓練用の試験物資』扱いで回してもらったって奴。ゲルパルトは制限があるけど銃の所持は可能だから一度ゲルパルトの班長のバイク仲間に頼んで買ってもらって、それをいつもの『軍事物資』の名目で『ふさ』の予備部品として取り寄せたわけ。『ふさ』はゲルパルト宇宙軍の高速巡洋艦ローレライ級の二番艦だろ?その部品ということなら簡単に隊に持ち込めるわけだ。それにああ見えて結構この手の銃はどこの星系でも人気があるから種類は出てるからな。特に今、サラの銃に入っている弾は特別だぜ。おい!サラ。馬鹿やってないで、いい加減始めろよ!」 


 下士官の言葉に渋々かなめは帽子をサラに返した。笑顔に戻ったサラはリラックスしたように静かに人型のターゲットの前に立った。距離は30メートル。サラは一度両手を肩の辺りに上げて静止した。


「抜き撃ちだな。一応『ラスト・バタリオン』とは言えサラにそんなこと出来るのか?アイツの体力は一般女性並みだぞ?もしかして私達が休暇の間中ひたすらこの練習だけをしていたのか?呆れてものが言えないな。サラならやりかねないが」 


 カウラは真剣な顔でサラを見つめていた。


 次の瞬間、すばやくサラの右手がガンベルトの銃に伸びた、引き抜かれた銃に左手が飛んだ。そしてはじくようにハンマーが叩き落とされると同時に轟音が響き渡った。

挿絵(By みてみん)

「音がでけえなあ……それにしてもなんだ?この煙……臭いぞ」 


 かなめがそう言うのももっともだった。誰もが弾の命中を確認する前にサラの銃から出るまるで秋刀魚でも焼いているような煙にばかり目が行った。風下に居た整備班員は驚いた表情で咳き込んでいた。


「これは?」 


 驚いているのはカウラも同じだった。ただ一人苦笑いの下士官にそう尋ねた。


「ブラックパウダーと言って、黒色火薬の炸薬入りの弾ですよ。あの銃が一般的に使用されていた時代的にはこれが正しいカウボーイシューティングのスタイルですから。このコルト・シングルアクション・アーミーの時代はまだ無煙火薬は発明されてないですからね。まあ俺も使ってみるのは初めてだったんですが。確かにこれじゃあ銃撃戦なんてしようもんなら煙だらけで撃ち合ってる人間は咳込んで撃ち合いどころじゃなくなっちゃいますね」 


 そう言う説明を受けて納得した誠だが、撃ったのはいいが煙を顔面にもろに浴びてむせているサラに同情の視線を送った。


「でもこれじゃあ何発も撃ったら匂いが射場に染みつくぞ。それは勘弁してくれよな」


 射場の主であるかなめはそう言って苦笑いを浮かべた。 


「ああ、ちゃんと無煙火薬の弾もあるから大丈夫ですよ。ブラックパウダーはそちらの一箱だけ。あとはちゃんと普通に撃てる奴ばかりですから」 


 火器担当下士官の言葉を聞いて煙に驚いていた誠はこれでようやくひと安心した。だが、弾丸はどれもむき出しの鉛が目立つ巨大な姿をしている。警察組織扱いになっている司法局実働部隊だから使えると言うような鉛むき出しのホローポイント弾に誠は苦笑いを浮かべた。


「サラ!例の奴やって!撃つだけじゃなくて回す方!」 


 ここしばらく無茶を押し付けてくるアメリアがしばらくいなかったせいでいつになくハイテンションなパーラがカメラを構えながら叫んだ。それに応えるように親指で帽子の縁をはじいたサラが手にした銃を軽く胸の前にかざした。


「行くよ!見ててね!」 


 手にした銃を構えつつサラが急に振り向く。思わず撃たれるのではないかと思い誠はのけぞった。

 

 周りの視線を感じてそう叫ぶとサラは銃を振り上げた。鉄紺色の銃身の短いリボルバーは人差し指を軸に、くるくると彼女の手の中で回転していた。思わず拍手をする整備員達の様子を知るとさらにその回転は加速していった。


「ほう……見事にやるもんだ。練習したんだな。ご苦労なこった」 


 感心しているのか呆れているのか。カウラはまったくどちらとも付かない表情を浮かべていた。サラはそれを見るとすばやく右腰にあるホルスターに銃を叩き込んだ。技術部員や運行部の女性士官もそれには一斉に感心したと言うような拍手を送った。


「なんだ?サラは本気でうちを辞めてウェスタン公園にでも就職するのかよ。それも良いかもな。オメエの管制はいまいちあてになんねえんだ。丁度いいタイミングだ。一応考えとけよ、その進路も。オメエのバタ臭い顔なら和風顔の遼州人のスタッフを押しのけて一気にスター街道まっしぐらだ」 


 一方かなめは明らかに呆れていた。それを見るとアメリアはつかつかとサラの横まで歩いていった。


「ちょっと見せて!私も実際にこの銃を手の取るのは初めてだから」 


 好奇心旺盛なアメリアの弾んだ口調の言葉にうなずいたサラが銃を手渡した。先日見た青みを帯びた黒い銃が冬の日差しに輝いて見えた。しばらく手にとって眺めた後、アメリアは銃器担当の下士官に振り返った。


「これ全部ブラックパウダー弾?」 


 先ほどの煙の上がり具合が気に入ったのか、アメリアは嬉しそうに銃器担当の下士官に尋ねた。


「違いますよ。あんなのさっきのでおしまいですから。あれはあれで結構いい値段するんで」 


 銃器担当の下士官にそう言われるとしばらくシリンダーを見つめていたアメリアが大きくため息をついた。彼女の手は普通のリボルバーのようにシリンダーを引き抜こうとするがまったく動く様子が無かった。


「これって……どうやって弾を装填するの?と言うか撃った薬莢を取り出そうって言ったってどうやって出すのよ。まさか全部手で取りだすの?火傷しちゃうじゃないの」 


 全弾撃ちつくしているらしくアメリアはしばらくじっと短い銃を眺めていた。それを見たサラが満面の笑みを浮かべていた。


「ああ、ちょっと貸してね……、これ借りてもいい?」 


 サラはそう言うとテーブルの上にあったドライバーを手にして銃の劇鉄を少し押し下げた。そのままシリンダーの後ろのブロックが開いた。そしてそこに開いている穴にドライバーを突き刺して薬莢を取り出した。


「面倒だな。一々一発一発薬莢を棒で押し出す訳か……昔の人は苦労してたんだな」 


 カウラはしみじみと一発一発撃ち終わった薬莢を取り出す動作を続けるサラを見ながらそう言った。


「こんなもん実戦じゃあ使い物にならねえじゃねえか。六発で仕留められればいいが仕留められなきゃ逆にこっちがやられるぞ」 


 カウラとかなめの意見ももっともだった。サラはようやく二発の薬莢を取り出すことに成功して次の薬莢を取り出すべくドライバーを持ち直した。


「そりゃあ映画の西部劇みたいに銃の装弾数なんて台本の都合でいくらでもとは行かないですから。だから六発以上撃ちまくるわけには行かないですからね、現実問題。それに当時にしたって安全装置なんてものはついてないわけですから、一発分は弾は装弾しないのが一般的だったんですよ。だから実質は五発でケリをつけなきゃいけない。当時のアメリカ西部の戦いはシビアと言えばシビアですね。西園寺さんがいつもやってるように11発撃ってはマガジンチェンジをして次ってわけにはいかなかったんですよ、昔のカウボーイ達は」 


 火器担当の下士官の一言にサラはムッとしたように顔を上げた。不器用にドライバーで自分の銃と格闘しているサラを見ながら火器担当の下士官は必死になって笑いをこらえていた。


「一挺当たりの弾が少ないし、リロードも今のサラを見て居ればわかるように銃撃戦の最中にはほぼ不可能。だから当時のガンマンは二挺拳銃なんですよ。二挺あれば計最高十二発。下手なオートピストルより弾は多いって訳です」 


 火器担当の下士官はそう言って得意げに自分の知識を披露した。


「そりゃわかってるんだけどさあ。今は27世紀じゃん。相手も当然大容量のダブルカーラムマガジンの大型拳銃でバカスカ撃ってくる。今は西部劇の時代じゃねえんだ。実際に使うとなると相手とのハンデがデカすぎるぞ。そんな時はどうするんだよ」 


 かなめの問いに下士官は意味がわからないと言うように首をひねった。だが、すぐにかなめは彼の考えを理解して下士官の肩に手を乗せた。


「そうだな。サラの拳銃はただの(おもり)だからな。ベレッタM9なんて気取った銃は必要ねえか。アメリアじゃねえがサラが銃を撃つようになったらうちは終わりだ」


 納得がいったと言うようにかなめはそう言ってうなずいた。 


「ひどいんだ!かなめちゃん。そんなこと言うともう撃たせてあげないぞ!」 


 ムキになったサラはそう言って怒りをあらわにした。


「銃はおもちゃじゃねえんだ!仕事の道具だ!そんな使い物にならねえおもちゃなんて誰が触るか!」 


 かなめはそう言ってへそを曲げるが、サラの隣に立っているアメリアは前に置かれた弾薬の箱に手を伸ばしていた。


「これってここに弾を入れればいいの?」 


 アメリアはうれしそうにサラから渡されたリボルバーピストル、コルト・シングルアクション・アーミーを手に弾をこめようとした。


「うん、そこから一発一発ハンマーをハーフコックにしてシリンダーを回しながら入れるんだよ」 


 サラの言葉を聞くとアメリアは45口径の弾丸を一発づつシリンダーに差し込んでいった。その表情は楽しいともめんどくさいとも取れる複雑なものだった。


「明らかに私の使用する45ACP弾よりも薬莢が長いということは結構炸薬の量が多いんだな。しかも弾は私の1911と同じ45口径……フレームの強度は大丈夫なのか?どう見ても強度不足のように見えるのだが……」 


 カウラは心配そうにサラ達を見つめた。その手には箱から取り出した一発の弾丸が握られていた。


「ああ、大丈夫ですよ。確かにコイツの45ロングコルト弾は薬莢は大きいですが、それはエネルギーの小さい黒色火薬用に大きく設計されただけで普通の炸薬を使うんなら減装しますよ。それに元々こいつはアメリカとかの時代祭りの為に有るような銃ですから。そもそも炸薬の量を減らした威力はかなり抑えた弾しか手に入りません。まあ無理して手作業で炸薬を増やせば威力は上がりますけど……どうせサラが使うんでしょ?意味ないですよ」 


 そう説明している間にアメリアは弾をこめ終わるとそのままターゲットを狙った。


「親指でハンマー起こせよ!その銃は同じリボルバーでも茜のS&WすみすあんどうぇっそんM327とは違ってシングルアクションオンリーだからな!」 


 かなめはそう言って狙いをつけようとするアメリアを冷やかした。


「わかってるわよ!」 


 かなめに野次られてアメリアは叫ぶように言い返した。そしてそのまま右手の親指でゆっくりハンマーを起こすとすばやく引き金を引いた。


 一瞬置いて轟音が響く。


 アメリアの手の中で滑ったように銃がはねて銃口が天井を向いているのが見えた。反動がコントロール不能でもアメリアの銃口は常にレンジ方向に意地になって手首をひねるのは戦闘用人造人間の意地が垣間見えた。


 それを見てかなめは大笑いした。しばらく何が起きたかわからないと言うようにアメリアは立ち尽くしていた。


「ああ、慣れない人があの銃を撃つとああなるのは仕方ないんですよ。グリップがなで肩ですし、元々グリップがシェリブスタイプのシングルアクションアーミーは特に引っ掛かりが少ない上にグリップが丸くて握りづらいですから。どうしてもオートに慣れた人が初めて撃つと反動が上に逃げて銃口が天井向くんです」 


 下士官の言葉に思うところがあったのか、カウラが立ち上がるとアメリアの後ろに立った。


「次は私にも撃たせろ。今日は私のお祝いなんだろ?」 


 カウラのその言葉にしばらくアメリアは目が点になっていた。隣で笑っていたサラの表情も驚いたように変わった。


「ええ、別にいいけど……」 


 そう言ってアメリアはカウラに銃を手渡した。そしてそのままカウラは受け取った銃で30メートル先の標的に狙いをつけた。


「馬鹿やるなよ!」 


 そう言うかなめはいつの間にかタバコを吸い始めていた。野次馬達も展開がどうなるのか楽しみで仕方がないと言うようにカウラを見つめていた。カウラは静かにハンマーを起こす。その様子に場はあっという間に静まり返っていた。冬の北風だけが枯れ草を揺らして音を立てていた。


 カウラが引き金を引いた。そしてハンマーが落ちた。そして火薬の点火による轟音が響いた。最新式の炸薬とは言え、短い銃身では燃焼し切れなかった炸薬が銃口の先に炎の球を作って見せた。

挿絵(By みてみん)

「派手だねえ……こりゃ。火薬が無駄に燃えてやがる」 


 タバコを咥えているかなめの一言。誠が銃口の先を見ればマンターゲットの頭に大穴が開いていた。


「結構当たるもんだな」 


 そう言うとカウラは満足したように銃をサラに返した。


「まあコイツは安物のレプリカですからバレルの精度なんかは最新のレベルですよ。それにしてもさすがですね、反動をほとんど殺していたじゃないですか。見事なもんだ」 


 火器担当の下士官に褒められてカウラは少し満足げに微笑んでいた。次は私だと言うようにかなめが跳ね上がるように立ち上がった。


「なあに、貴様説明とアメリアの撃ち方から多少の工夫をしただけだ。大したことはしていない」


 さらりとそう言うとカウラはそのまま銃を射場のテーブルの上に静かに置いた。



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